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魔珠  作者: 千月志保
第6章 疑惑
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マーラルの辿る道(1)

 来客があると伝えられたのは午前十時を少し回ったくらいだった。キリトは眉をひそめたが、すぐに読書をしていた書斎に通すように使用人に言った。

「どうかしたのか? せっかくの休日なんだから、ゆっくり休んでいればいいのに」

 本を閉じて机に置き、キリトは立ち上がった。

「とはいえ、この時間にここにいるということは目的は無事達成できたと考えて良さそうだな。お疲れ」

 キリトは疲れた顔をスイの手を取ると、ぎゅっと握って祝福した。スイは弱々しい笑顔を返した。

「それで?」

「薬を調合してもらいたいんだ」

 さらりとスイは答えた。キリトは顔が青ざめる。

「薬って……まさか再発したのか?」

「もう大丈夫だと思っていたんだが」

 スイは苦笑した。

「分かった。とにかく薬を作ろう。お前も来るだろ?」

 この部屋に残って一人で休んでいてもらってもよかったが、誰かといたり何かをしたりして気を紛らされているときの方が、呪術の引き金となる記憶を呼び起こしにくいということは経験的に分かっている。いちばん危ないのは、マーラルに関する事柄に接しているとき、そして眠っているとき。マーラルから帰ってきて何ヶ月かはよく呪術を刻み込まれたときのことを夢に見てうなされていた。

 キリトの後をついて階段を下りていく。

「そこにでも座って待っていてくれ」

 あまり広くない調合室に入るなり、部屋のいちばん奥にある椅子をスイに勧める。スイは静かに腰かけて、手際よく棚から青バラの花びらとユキヒイラギの実と魔法水の瓶を取り出すキリトを見ていた。

 材料を瓶に入れてふわっと魔力を込める。その光を見ているだけでも心地よいとスイは感じた。キリトの魔力はヌビスの呪術の力を抑える力が強い。側にいるだけでも体が楽になる気がする。

 瓶の中の液体にぶくぶくと気泡ができて消えた。花びらも実も液体に溶けてなくなっていた。

「じゃあ話を聞こうかな。明日でもいいけど」

「いや。聞いてくれ」

 遮るようにスイは言った。キリトは瓶の蓋を閉めた。スイは話を切り出した。

「予定どおり、暗くなってから城の敷地内に入った。魔術研究所の様子を見て回っていたとき、忍びの者がいるのに気がついて情報交換をした」

 キリトはてきぱきと後片づけをしながら苦笑した。魔珠の里の忍びの者をめざとく見つけるなんて。相変わらず鋭い。

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