手にした世界(3)
「なあ、キリト」
スイは少し目をそらして言葉を一つ一つ噛み締めるように続けた。
「今まで生まれてきたことに感謝して生きてきた。大変なことも多いが、素晴らしい人たちに囲まれて刺激的な毎日を送っている。充実した幸せな毎日だ」
キリトは目を細めながらスイの話を聞いていた。
「だが、こんな毎日は生まれてきてもあのカプセルの中では絶対に得られたないものだ。生まれてもあのカプセルに閉じ込められたままだったら、きっと私はただの〈器〉として、物としてこの世界から消えていくしかなかったんだろう。多くの人の力を借りて私は今ここに人として生きている」
スイは顔を上げた。
「私は私が人として生きるために力になってくれた人たちに感謝している。だから、私も力になりたい」
キリトは強く頷いた。
「お前の力になるよ。これからもずっと」
「ありがとう」
スイに言われて口元がほころぶ。どれだけのことができるか分からないが、ずっと支えていたい。その気持ちは今も変わらない。
「次の休みに両親に会いに行こうと思っているんだ」
「セイラム様とクレア様にも話すのか?」
「いや、実は」
スイは里に連れ出される前に忍びの者がセイラムたちにそのことを話していたのだと説明した。
「だから、今の気持ちをきっちり伝えておきたい。これからもセイラムとクレアの子どもとして、リザレス人として生きるために」
「そうだな。それがいい」
キリトが相槌を打つ。
「それともう一つしたいことがあって」
スイは横に置いていた剣を手に取った。鞘から抜いた途端、キリトはその見たことのない美しい輝きに感嘆の声を上げた。
「これは?」
「魔珠を含む合金で作られているらしい。魔力を吸収したり放出したりできる特殊な剣だと聞いた」
スイは長老から剣を託された経緯を話した。
「確かに。お前が考えたように一流の魔術師であるマーラル王と直接対決するなら、この剣の存在は大きい」
「だから、父に相談しながら研究してみようと思う。今まで使ったことのないもので、勝手がまるで分からない」




