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第2条:理解が追いつく暇もなし。

 このまま目が覚めないのかと思った時、俺は飛び起きた。


「…まさか、二度目の転生なんてことは…」


 全身を弄ってみれば見覚えのある裸た…


ゐゐゐゐゐ!?」


 何故か全裸、そして全身には禍々しいってレベルじゃねえあのドラゴン様を

そっくりそのままプリントしたかのようなデザインの召喚紋。

ついでにオマケに手枷足枷。


「何ィィィィィィィィーッ!?」


 ついでにオマケにここはどう見ても牢獄。


ゑゑゑゑ!?」


 牢獄の壁という壁には封印の術式がゴッチャゴチャと描かれている。

良く見れば枷にも鉄格子にもビッチビチと隙間無く描かれている。ちょ…!?

これ、確か重犯罪者とか災害級の魔物を拘束するときに使うヤツだった筈じゃ?!


「………でも、俺、生きてる…?」


 どこから突っ込んで良いかわからなかったので、とりあえず俺は

自分がまだ生きてることを喜んでみた。全裸だけど。


「……これ、確か触れたら最後死ぬまで自力じゃ動けないって教本に…」


 ところが俺は普通に立って歩けるしベタベタ触っても何とも無い。

だから何だって話だが。全裸だし。


「何がどうなって…」


 考えなくてもわかりそうな気がしないでもないが、

俺は一番それっぽい答えから逃げる。


「……王国記第13章4節…」


 脳みそを絞って事前学習を思い出す。


 それはサザンクロイツ王朝が成立する少し前、旧・後カーゴ王朝の頃だったか?

最古の英雄の血族にして今現在における史上最悪の魔王となった

ネロシュヴェルガ・グラムドルフ・クルドガルフ三世…

彼もまた俺同様、その時からあった召喚試験で地獄の軍勢を統べる

大魔将グロスデモンと契約し、全世界を恐怖のどん底へ叩き落した。

(中略)

後に救国の英雄達との死闘の末、彼は幾重にも封印を施されたという。

そして八代くらい前の国王とその一派に漸く衰弱死する様を見届けられた…とか。


 んな馬鹿な。


「だがしかし…どう見たってこれは…」


 そのパターンが一番しっくり来る。


 何だこれ。


「………おいおい…」


 エリートコースが露と消えたってレベルじゃねえ。未来もヘッタクレもねえ。


「…家族は…」


 一族郎党極刑……ありうる。実際関係ないじゃん家族は…。


「最悪だ…」


 あまりにも突発過ぎて涙も出ない。死に物狂いで頑張った末路がこれかよ。


糞がシャイセ…」


 力なく壁を殴る。


―メメタァ…!


「のわっ!?」


 俺の拳が泥に突っ込んだが如く壁に嵌った。


「…マジで?」


 チート来た? こんな形で?


「…ていっ」


―パリン。


 ちょっと引っ張っただけで手枷も足枷もポテチみたいに壊れた。


「………じゃあ」


―ぐにゃり。


 はい、鉄格子も溶けた飴みたいに曲がりました。


「………服とか…」


 あるわけが無い。しかし全裸は心にダメージを与え続ける。

俺は牢屋から出て、やっぱり術式まみれな床をペタペタ踏みながら

かなり長い廊下の先にあるデザインこそ簡素だが銀行とかにありがちな

七面倒くさいことしないと開かなそうな丸くて分厚い金属の扉を


 ペコッと外してその先へ歩を進めた。


「ぶえっくしょい!!」


 扉の先は相変わらず拘束術式まみれだったが、牢獄とは比べ物にならない寒さ。


「真面目に服が欲しい…!!」


 俺がそう呟いたとき、前方の暗がりで何かが動いた。


「?! 誰かいるのか!?」

「ウォォォォォン…!」

「げ!?」


 俺の前には…どう見てもキマイラとしか思えない生き物がいた。

それもなんかゾンビっぽい。


「ウォロロロロロオオオオン…!」

「ひぃぇぇ!?」


 思わず俺は後ろに放置してた丸扉をブン投げる。


―ヒュパッ! ドベチャア!!


 ちゃんと避けようとしたキマイラゾンビ(仮)だったが、

どうにも俺の投げたデカい丸扉は半端ない速度だったようで、

キマイラゾンビ(仮)は扉と一緒に壁にめり込んだっきり動かなくなった。

いや、だってほら、ぺちゃんこだし? これで動いたら最恐でしょ?


「誰に言い訳してんだ俺ェ…」


 深く考えるのをやめた俺はペチャンコになったキマイラゾンビ(仮)を尻目に

一箇所だけあった新しい扉を、やっぱりペコッと外して先に進んだ。


……。


 次の部屋は何か鎌を持った襤褸切れ着たスケルトンみたいなのが一杯いた。


 俺は外した扉を盾、あるいは殴打武器としてスケルトンを全部砕いた。

最後のスケルトンを砕いたら扉は何故かいきなり腐りきって

使い物にならなくなったので今度はスケルトンが落とした鎌を振るって

新しい扉をゾリュッと切り裂いて先に進む。

 ちなみにスケルトンの襤褸切れは何か嫌だったので装備してない。


 今度は何かのゲームで見たようなマシンゴーレムみたいなのがいた。

こいつは凄く綺麗なマントをしてたのでとりあえずゴーレムは

丁寧に細切れにしてそのマントを頂く。


「…ローマ人っぽい格好になったな。下は全裸だけど」


 大きいマントだったので適当に巻いたらそれっぽくなったのを良しとして、

俺は次の扉を外して先に進んだ。


……。


 それからは虫みたいなヤツ、人形みたいなヤツ、ナベリウスっぽいヤツ、

ともかくいろんな凶悪そうなモンスターをぶっ殺しては先に進んだ。

不思議と疲れないのに疑問を覚えたが、面倒だったので考えない。


「………次で終わってくれ…」


 しかし精神的にはかなり疲れたので、そろそろ終わりになって欲しかった。


「……お?」


 終われと思って通った先は部屋ではなかった。まっすぐ続く廊下。

その先には今までとは明らかに毛色が違う豪奢な扉。


「ちょっと休むか…」


 俺はその扉の前で一休みする。っていうか横になった。

眠いわけじゃないが、何となくそうしたかった。

睡眠欲ってのは体だけが求めるもんじゃないんだなぁ…とか言って

そのまま眠りそうになったんだが…


―…っと! イーグ! 開かないわ!!

―当たり前ですぞ姫様…第一級封印術式を解除してませぬ。

―ならば早く開きなさいな!! ほら! お前達の出番ですわよ!!

―少々お待ちください…!


「うるせぇ…」


 何でこう人が気持ちよく寝れるんじゃないかってタイミングで

あーだこーだと人間の声がすr………るぃう!?


「『人間の声!?』」


―ひぇ!? ひひひ姫様ぁ!?

―何ですのよ!?

―と、とびらの向こうから何かの声が…!!

―落ち着けい。この向こうは災害級や神話級のバケモノどもが犇く地。

ワシらの気配を感じていきり立っておるのも当然じゃろうが。

―あら、そうでしたわね? じゃあホラ、さっさと解除なさいな。

イーグ? 準備はよろしくて?

―問題ございませぬ姫様。開け放つと同時に一閃をめましょうぞ。

―よろしいですわ。さあ、解除は終わりまして?


 間違いなかった。人間の声だ。妙に懐かしい気がする南方交易語だ。

俺は飛び起きて矢鱈豪奢な扉をバキョッと外す。


「「にょわああああ!?」」

「どうしたんですの!?」

「とととっと扉が勝手に外れたぁ!!!」

「姫様!! お下がりください!!」


 外した扉の向こうには…人間…。間違いなく王国人がそこにいた!

話し声の通り老騎士が一人に魔術騎士が数人に………金髪幼女?


「牢屋番…とは思えねぇな」

「「「きぇぇぇぇあああしゃべったぁぁぁああああ!!」」」

「な、何じゃ…お前は…!?」

「人間ですの…? というか…その頬の召喚紋…ふえぇ…!!」


「………」


 今までの魔物どもに比べると…何か蟻んこみたいな魔力だな。

…そういえば先に進めば進むほど魔物の魔力も微妙に小さくなってった気が…。


「………」

「う、動くな!! そこで止まれ! 止まるのじゃ!!」

「……あ、はいはい」


 話しかけてきたのでついつい俺はその通りに止まる。

持ってた扉も邪魔にならないところに放り投げた。


―ドズゥゥゥゥン…!


「…厚さ60セティメルにして7000キグラの魔導金属扉を…

こうも易々と…!!」

「え、そんなに重かったのかアレ…?」


 どうも俺の腕力チートはクソぱないレベルのようだった。

何しろ俺が今まで持てた最重量は14キグラの長戦戟ハルベルトである。

正直重さなんて感じなかったから…とすると、今までの扉も…?


「まぁいいか」

「何というヤツじゃ…!」


 老騎士様は汗を描いている。多分普通の反応なんだろうが、

今はかなりどうでもよかった。


「ひとつ聞いていいか?」

「………な、何じゃ…?」

「ここ、何処?」

「は?」


 はい、何かもう面倒。


「ああ、もういいです。ところでそこ退いてくれません?

俺は外に出たいんで」

「ま、待てい!!」


 …この爺さんは彼我の戦力差を理解してんだろうか?

理解したうえで俺を止めようとしてんのかな?


「やっぱりあんたもここの牢屋を守ってる人?」

「……それは…」

「違いますわ!! むしろ盗掘目的でしたの!!」


 気が付けば幼女が俺の前に立ってた。


「ひ、姫様ぁ!?」

「「「お下がりください姫様ぁあああ!!」」」


 姫様…ねぇ…あーなるほど。確かに見た感じは…そんな姫っぽくないな。

話しぶりからして大貴族のお嬢様って感じの格好だな。


「盗掘て…あんたそれでも貴族の娘なのか」

「なりふり構ってられない理由がありますの!!」


 尚も何かを言おうとした姫さんを老騎士様が遮った。


「おぬし…何をしでかして第一級封印牢に入れられておったのじゃ」

「言わなきゃ駄目か?」


 俺はスケルトンの鎌の柄で肩をトントン叩きながら返す。


「…おい…あの鎌って…」

「伝承が確かならば…あれは…神橋破壊鎌ディスボーゲンハーケン…!?」

「ってことは…このバケモ…人は…嘘だろ!?」


 何、この鎌って結構なレア武器なのか?

…そういや予備に二本持ってるがここまで一回も壊れる気配が無かったな。

後さりげなく化け物って言いかけたよね? まぁそれが普通なんだろうが。


白銀猛虎セレブリャティグル帝国の連中も恐れる暗黒万魔屍徒アポステルデュンケルハイトの呪具を…事も無げに…!?」

「あのスケルトンなかなかカッケー名前だったのね」

「す、スケルトン…?!」


 老騎士様は口を金魚みたいに動かしている。ふーん…?

どうも俺は寝てる間にかなりのチートを授かったっぽいぞ。

まぁ、契約相手はあのドラゴン様だし当然か? 耐えれて良かった良かった…。


「…んで、まだ何か俺に用があるの? 盗掘とかそこの姫さんぶっちゃけてたし、

奥はまぁ死骸しかないけど必要な何かがあるなら行けば良いんじゃないすか?」

「死骸しか…?!」


 いちいちメンドくせぇ…。


「ねぇ、もし!? そこの貴方!」

「……まだ何か御用で?」

「貴方…差し支えなければ私に名を教えなさいな!」


 貴族とはいえこの姫さん達は盗掘者を自称してんだよな…けどなぁ…

顔だって見られてるし…どうすっかな…弱そうだし…殺すか?


「「「「「ッ!?」」」」」


 俺がそう思った途端、姫さん達は固まった。


「…あ、ごめんごめんついつい魔力を練ってたわ」

「殺すなら…殺すならワシだけにせい! 姫様は…! 姫様は…!」

「あー、うん。うっかりだからさ。何もしないよ、こっちからは」


 真面目に考えると姫さん達も悪党に類するわけなので、

今後を考えると消したほうがいい気がするが…やっぱ殺人はなぁ…。


「おk! お互い何も見てない! 出会ってもいない! これで良いだろ?」


 姫さん達が動き出す前に俺は彼女らの後ろにある普通の扉を目指す。


「もし! お待ちになって!!」


 どうして幼女なんだろうか。いや、どうして可愛い女の子なんだろうか。

今まで女の子に呼び止められたことなんて無かったから、

ついつい俺は足を止めてしまった。


「エーレドネィ! エーレドネィ・ラクサニア・ヴェストリッターケーニッヒ!

私の名ですの!! 他言無用を約束しますから! 貴方のお名前を!!」

「姫様!?」


 普通に考えたら名乗る意味なんて全く無いのだが…無いのだが…

向こうから先に名乗ったし…女の子に名乗らせておいて無視とか…

状況が状況だけど…! でも俺は素敵な思い出が欲しい!!


「…俺、平民だけど…良いのか?」

「瑣末ですわ!」


 何か格好いいな。そして…きっと後数年で超絶美人になるであろう

大貴族のお嬢様の記憶に…残りたい!! そしてあわよくば…!

いや、そこまでは贅沢だ。名乗りとチートパワーゲットで納得せねば。


「……イスターク。イアルマス・イスターク。多分もう存在しないが、

三回はサザンクロイツ王家にマントを卸したイスターク服飾店の三男坊だ」

「!?」

「にゃ!? にゃんじゃとぉ!?」


 うわっちゃあ…! 名前だけでいいじゃんなにこの蛇足!?

老騎士様の反応からして何やら居た堪れないのでさっさと外へ向か―


「見つけましたわあああああああああああああ!!!」

「うべし!?」


 腰にズドンと来たが、そこはチートな俺。ビクともしねぇぜ。

そして良い匂いがします。女の子の匂いです。ずっと嗅いでいたい。


「やっとお会いできましたわね! 私の龍卿様マインドラッヘンリッター!」


 最初から最後までどうなってんだ?

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