第三章第十三話 姫様傍若無人
第三章第十三話 姫様傍若無人
「これは何とした事であろうか?」
「おお、シュナイバッハ侯か。久しいな。わらわの凱旋じゃ。手厚くもてなすが良いぞ」
「お、お待ちを」「聖女グリンダ様。ご説明をお願いします」
「あらぁ~。今ティア殿下がご説明したとおりですわよぉ~。凱旋よぉ~。オーホホホ」
「近衛所属戦闘メイド隊アイダ。ただ今戻りました。大隊長はおわすか? どこに居りますか? アイダが除隊致すとお伝え下さい。皇族に復帰いたします」
こちらの事は構わずアイダが高らかに宣言する。3姫たちは相手の事などお構いなく自分達の用事を次々とのたまう。
凄い強気だ。何か訳でもあるのか? いくら姫さんでも宰相相手にここまで強気に出られるはずがないんだけど。
「シュナイバッハ侯、父上はいずこぞ。ご報告致さねばならん。このティア見事大殊勲をあげましたとな。あーははは」
「はっ。陛下に置かれましては、お部屋にて執務をお取りになっております。お、お待ち下さい。ティア殿下! そのままいかれては困ります」
「おお、そこの侍女殿。わらわの身内じゃ。客室の手配とあないを頼む。そうじゃな。上等な部屋を頼むぞ」
シュナイバッハ侯を完全無視して傍若無人の限りを尽くす。
「グリンダ、アイダ行くぞ。陛下もお喜びじゃろう。サラ! どこへ参るのじゃ。そなたはこっちじゃ」
「え~。俺は一応臣下だからいきなり陛下の元に行く訳にはいかないよ」
「かまわん。わらわが許す。シュナイバッハ侯、先触れに立って頂きたいのじゃが」
「陛下には何と申し上げ致せばよろしいのでしょうか?」
シュナイバッハ侯も我慢強いな。とっくに怒りだしても良い様な気がするけど。
「うむ。わらわが射とめたとお告げせよ。それで十分通じるはずじゃ」
「ならば、今少しお時間を頂きたく。これそこのお前。殿下御一行をお部屋に。お茶の用意を。しからばごめん」
シュナイバッハ侯が風の様に立ち去って行く中、我に返った侍女さんが慌てて案内に立つ。面倒な事じゃ。
そのまま行けばよいものをシュナイバッハも胆が小さいの。なんて事をのたまわってらっしゃる。
侍女の方がぴくぴく痙攣しているけど大丈夫か? 3姫以外はみな顔が青ざめている。まあ、母様は例外だけどね。
そこにカツカツと音を立てながら一際煌びやかな戦闘メイド服のお方が近付いて来る。
「アイダ! 除隊するとはどういうこと・・・だ。マリアンヌ様!!」
「あらあら、まあまあ。まだ私の事を知っている方がいるなんて。どうしましょう」
煌びやかな侍女服の女性が母様の前で片膝をつく姿勢になった。
「マリアンヌ様。私、お傍見習いをしておりましたジェシカでございます。お懐かしゅうございます」
「まあ、べそかきジェシカなの。立派になって嬉しいわ。あなたの事は心配でたまらなかったのよ」
「はい。お陰さまをもちまして。こうして大隊長の任につかせて頂いております。あの頃のご指導がなければ今の自分はいないと思っております。もう総隊長にはお会いになられましたか?」
「あらいけない。私がここに居た事は内緒にしてたのに。つい懐かしくなってしゃべっちゃったわ」
「みなさん、ミゲルには内緒よ。ただの騎士爵家の娘として嫁いだのですからね」
「りょ、了解致しました。母様」
「おお、マリアンヌ様の御子息がかのシュナイダー男爵でしたか。さもありなんとはこの事です」
「大隊長殿? 私、この度サラ・シュナイダー男爵に嫁ぐ事になりましたので除隊する事になりました」
「そうであったわね。アイダ。ならマリアンヌ様の娘になるのね。うん。あなたなら大丈夫です。自信を持って送り出せます。分かりました。そのように手配いたしましょう。マリアンヌ様、アイダは私の部下の中でもぴか一です。どうぞよろしくお願い致します」
「まあ、そうなのうれしいわ」
「こら、なにを呆けている。直ぐにお部屋の準備をしなさい。お寛ぎ頂かねばならないでしょう」
パンパン。ジェシカ大隊長が手を叩く音が響き渡る。
「素早く上品に動きなさいな。マリアンヌ様にお見苦しい所をお見せになるなんて・・・訓練を厳しくしないと」
途端に侍女たちの動きが機敏になり、皆を案内しだす。
「・・・のうお前様。義母様は戦闘メイド隊におわしたのか? それも大隊長が膝をつきおったぞ。将軍でも避けて通る御仁じゃぞ?」
「・・・俺も初耳かな」
ジェシカ大隊長自らに案内されて入った部屋は、国賓級の部屋じゃねと思わせる部屋だった。
ソファーに座っていいものやら分からず立っている面々の中、堂々とソファーに腰を降ろしてジェシカ大隊長が淹れたお茶を飲んでいる母様。もうどうしてよいやら。
「ジェシカちゃん、上手になったわ。おいしいわよ」
「お褒めに預かり光栄です。マリアンヌ様。ご滞在はどのくらいなのでしょう? お手すきならばぜひ我が隊の者に稽古を着けて頂けないでしょうか?」
「まあまあ、困ったわ。私は現役を退いてもう随分なのよ。片手じゃ無理よ」
「・・・いえ、心が折れますので両手でお願い致します」
「まあまあ、そうなの? ひょっとして温くなったのかしら?」
「い、いえ決してそのようなことはございません。あのころが異常だったのではと推察いたします」
「や~ね~。軽く撫でてあげたら皆すぐ寝た振りなんてしてた頃よ」
「気を失ったのでございます。あれを撫でててとは。吹き飛んでたと記憶しておりますが」
「そうね。みんなぴょんぴょんと良く跳ねていらしたわね。そうそうジェシカちゃんも記録作ったじゃない。一番飛んだのよ。懐かしいわね~」
「申し訳ありません。き、記憶がございません」
コンコン。扉を開けて入ってきたのはシュナイバッハ侯である。
「おお、ジェシカ殿もこちらでしたか。ティア殿下。陛下が大層お悦びでございます。執務を止めてもお会いになるそうです。ささ、参りましょう」
「うむ。ジェシカ、またあとで話を聞かせてくれ。では参ろうかの。お前さま行くぞ」
「やっぱり俺もなの? 親子水入らずとかはないのかな」
ティア、グリンダ、アイダその後ろに俺を引き連れてシュナイバッハ侯が足早に回廊を進んで行く。どうやら謁見の間ではない様だ。
そりゃそうか。娘に会うのに謁見の間はないよな。じゃあ俺はどうすればいいんだ? そんな宮廷儀礼習った事ないぞ。
俺が悶々と考えている間もどんどんと進んで行く。私的な部屋に連れられ、そのテラスのテーブルで3人の人物がお茶を楽しみながら歓談していた。俺達が入って行くと。
「「「父上!」」」
3姫が全員同じ言葉を口にした。どうやら全員義父様らしい。部屋の中ほどで片膝をつきカーペットを見つめながら待つ事にする。
そんな俺に気付かないままティアは陛下に近寄り簡単に話しかける。続くグリンダ、アイダはスカートをちょっと摘まんで軽く腰を下げながら頭を下げる。
「父上、お久しゅうございます。ティア戻りましてございます」
「おお、剣姫。早い帰郷であったな。今少し時間がかかるかと思っておったよ。何よりだ」
「うふふ。ほぼ身一つで送り出された割には大殊勲を上げたのじゃ。わらわが正妃じゃ。婚約を進めて下され。ご褒美は何が良いじゃろ?」
「おお、ティアおめでとう」「ティア殿下、おめでとうございます」
「叔父上も元帥殿もご機嫌麗しゅう。ありがとうございます」
「そうするとうちの娘はしくじったと言う事ですかな?」
ちょっとおどけた感じで大公爵殿下が聞いた。
「まあ、父上様失礼ですわぁ~。第2妃ですがゲットしましたわぁ~」
「ふむ。するとアイダは第3妃なのか?」
顎に手を当てて元帥閣下が確認を取る。
「はい。父上様。されど私の場合、婚約即婚姻でもかまいません。ふふふ」
「なる程、名を捨てて実を取った訳か」
「まあ、待て、待て。さて剣姫やどうしてそうなった?」
ここで陛下が止めに入る。詳細を聞き出そうとしているのだろう。
「あら? 言わずとも父上ならお分かりじゃろう。それこそ名を捨てて実を取ったのじゃ。諸貴族や諸外国が動き出すより早く決めねばなりませぬ。わらわ達が争っている暇はないと判断しただけじゃ」
「それとぉ~。北がキナ臭いともお聞き致しました。皇族同士での争いは避けるべきとも思いましてぇ~」
「そう言うことであります」
「はっはっは。やってくれる。身内で喧嘩してる場合じゃないと。ふむ。娘達はああ言っておるがどうする? 大公、カエザル元帥」
「致し方ありません。娘の大殊勲です。ここらで手を打ちましょう。カエザル卿もよろしいかな」
「はい。祖母様もお許し下さるでしょう」
「では手打ちだな。良かろう剣姫そなたの大殊勲だ」
「ふふふ。父上そのようなしぶしぶで良いのかのう。お前様お見せいたして下され。って何をしておるのじゃ?」
部屋の途中で片膝をつき、首を垂れたままの姿勢で待機している俺にやっと気付いたティア。だってしょうがないじゃん。
身分はいまだ唯の男爵なんだからここに居るのが場違いなの。もう分かって下さい。なんて事を心で訴えてみたが通じるはずもない。
「はっ。陛下に置かれましてはご健勝のことお喜び申し上げます。不肖の私がお目汚し致します事お詫び申し上げます」
「シュナイダー男爵、近こう」
「はっ!」
お声がかかったので腰を少し上げそのままの体勢で陛下の1m手前でまた腰を落とす。
「ここは身内だけだ婿殿。かしこまる必要はない。立ちなさい」
「さ、されど」
「陛下のお言葉だ、婿殿」
「さよう。さよう」
大公爵、元帥両名が追認して来る。
「はっ!」
恐る恐る立ち上がる。三人のやんごとなきお方たちの前で姿勢を正す。
「お初にお目に掛ります。バウム大公爵様。カエザル侯爵様。ミゲル・シュナイダーが第5子息サラ・シュナイダーにございます」
そう挨拶して胸に右手を当て直角のお辞儀をする。略礼とか立ち礼だったと思う。これで合ってますように。そんな俺の努力を粉々にしたのがティア達3姫だ。
すたすたと近寄ってきたと思ったら俺の両腕にティア、グリンダがぶら下がってグイッと前に進んで行く。
思わず腰を引きそうになった所、背後から肩に手を当てて押し出すのはアイダ。きゃー、やめてやめて。
「私的な空間では身内での礼儀は不要だ。婿殿。覚えておくと良い」なんて事をバウム大公爵が言ってるよ。
「はっ。しかし今だ婚約した訳でもないので・・・」
「はっはっはっ。両腕に我が娘と姪、背後に従姪まで従えていてそれはつれないと言うものだぞ。まさか断りに来たと言うのではないのだろう?」
笑いながら陛下がおっしゃってくる。
「けっして。そのような事は・・・」
「なら身内だ。そのうち奥にも紹介しよう」
「ほれほれ、あれをお出しすればこの様に子供扱いされん。さっさと出すのじゃ」
あれの事だろうな。マジックバッグからエリクサーと万能薬を各5本だす。目を剥いて驚く三人にシュナイバッハ侯まで驚いている。
「「婿殿!」」
「剣姫、まこと大殊勲じゃ」
「あら~、まだですわよ陛下、父上様。あなた続きも出して」
グリンダに促されて、それぞれの葉っぱ100枚に液体の入った瓶を二つ出す。
「こ・れ・が触媒よぉ~」
とうとうガタッと椅子を蹴立てて立ち上がった。3人の義父様。
「触媒も見つけたのか!?」
「ふふふ、なんでしたらレシピも公開致しましょうか。と言っても見つけたのはダークエルフの側室候補のリュディーなのでありますがねぇ~」
とうとう絶句した。暫くして椅子の上にすとんと座ってしまった。
「だから言ったじゃろう大殊勲じゃと。父上聞いておられるか?」
「う、うむ。聞いておる。アイダ、レシピも公開すると言うのは真か?」
陛下が確認して来る。アイダも強気だな~。
「ふふふ。さあ、どう致しましょうあなた?」
えぇ~。俺に振るんだ。
「ご、ご希望とあればお身内の事、否やとは申せません」
大きく頷く3姫。どうやら回答を間違わなかった様だ。
「やってくれるな婿殿。ちょうどどちらも切れたところじゃった。聖王国に打診はしたのじゃが芳しい答えを貰えなんだところだったのだ」
額に手を当てて考え込む。2人の義父殿も腕を組んで考え込む。きゃ~。なに考え込んじゃってるの。怖い怖いから止めて。
「ふふふ。父上。難しく考える必要はないのじゃ。わらわは大変父上には感謝して居る。毎日楽しく過ごさせて頂いておるのじゃ。あのような所に降嫁を決めて頂いたは感謝に堪えん。素直に喜んで納められよ。娘婿からのおみやげじゃ」
「剣姫よ。誰に似たのか。よう考えておる。借りが3つじゃな。そなたの褒美が2つか。シュナイバッハ。レシピを聞いてすぐに薬師ギルドで試せ」
「はっ!」
そそくさとレシピを聞き出し素材をかき集めて立ち去って行く宰相。
「いかんな。まあ座りなさい婿殿。だれかー茶を持て」
茶が運ばれてくるまでしばしのご歓談だ。大森林でどうしていたかとかたわいのない話のはずが陛下達には驚きだったらしい。
もちろん俺は大人しくしていたさ。ああ、喉渇いたお茶飲みたい。お茶が運ばれて来て、茶受けのお菓子もおいしいね。何だろうマフィンかな。
「さて、茶でも飲みながら話そうか。剣姫よそなた達は何を考えておるのだ」
「そこじゃな父上。どうしてほしいのじゃ? 嫁げばわらわはシュナイダーの人間じゃ。婚家を蔑ろには出来んのじゃが」
「既に私達の子爵領は、サラ殿の領地に統合致してますわぁ~。それはよいのでしょう~? 父上様」
「うむ、問題ないよ。グリンダ。ですなカエザル元帥?」
「ああ、問題ない。そうする様にも指示しておった」
「シュナイダーもそこそこの領地を得ましたが、如何せん未開地ばかり今だ帝国の運命を左右する程関与できません」
「アイダ。当面の敵はどこと見ておる?」
「はい、父上様。やはり国内では辺境伯辺りから皇族から疎遠になって居る公爵家でしょう。シュナイダーでは辺境伯ですら鎧袖一触、一敗地にまみれましょう。外国勢となるとやはり海を隔ててではございますが接している海洋国家かと」
「であろうな。ミゲルの領地では防波堤にもならんか。婚約を機にそなた達の領地を加増することはできようがミゲルのところはそうもいかん。他の反発を招く」
陛下が答える。だんだん俺も付いて行けなくなってきたかな。あれ~、村作るとかじゃないの?
「あやつも頻繁に動いておるようだが、こうも婿殿の動きが早過ぎては追いつけんか。かく言う我々ですら追いつけん」
「そこは仕方がないのじゃ。大森林が待ってくれぬ。排除しようとする力は日増しに増すばかりじゃからな」
「うふふ。先日はハイスピードビートルが出ましたわぁ~」
「なんと! 災害級の魔獣ではないか!?」元帥閣下が驚きの声を上げる。
「サラ殿はようやられておるのじゃが、内に外にこうも強敵では、対処しきれない事案も出てこよう。南部の辺境伯がいまだ動きを見せんのも不気味じゃ」
「そうそう。エルフ、ダークエルフを大森林に招聘して守りを固める所存ですのぉ~。ご了承くださいねぇ~。もちろんサラ殿の配下としてですわぁ~」
さらっとエルフ達を迎え入れる事の内諾を得るグリンダ。流石です。
「あの高慢ちきどもを下せるのか?」大公爵閣下が疑わしげに問う。
「はい。父上様。そのつもりで動きますがぁ~、帝国に不穏な動きをされると~それも崩れますぅ~。穏便に吸収したいと考えておりますがぁ~、あれらを吸収するとなるとぉ~、騒ぐ者がございましょう。謀反を疑われては立つ瀬がありませぬ~」
「いまだ多くの人を入れられぬ状況で、義父様の領地にうちから連れて来た騎士団を2~300配置するのが手いっぱいです」アイダ姫が騎士たちの配置をほのめかす。
「わらわ達の領地に各3000程がいるとしても飛び地じゃ。おいそれと移動させる訳にも行きませんじゃろ?」
「そんな事をすれば他の貴族も兵を上げる格好の口実を与えてしまうぞ」元帥閣下が腰を上げんばかりに止めに入る。
「義父殿の領地もすごいスピードで開拓が進んでいますけど、今の状況では遅すぎます。あの辺りに味方が少な過ぎるのです。皇族方が味方に付いたとはいえ、北部も何やら起きているご様子」アイダ姫も確認する。
「婚約を発表すれば多少は抑止力になりましょう。我らから人を送りますか? 陛下」元帥からの提案だ。
「それもよいのじゃが元帥閣下。シュナイダー領には先立つものがないのじゃ。体裁すら整っておらぬのじゃぞ」ティアが元帥の言葉をインターセプトして暗にお金ちょうだいと言っている。
「姫様達の領地からそこそこの上がりがありましょう? いや、あそこにもそれなりの防備は必要か」大公爵閣下がお前も財布があるだろうと牽制してきたが、無理だと自案を引っ込める。
「多少は出来るがそもそも騎士団を創設・維持するには金がかかる。安定した収入源が必要じゃ。子爵領ではせいぜい数千が良い所じゃ」
「では、加増して伯爵領にそれを統合してはいかがか? 既にその事は考えてありましょう、陛下」
元帥が元々の案を早めようとの提案らしい。
「うむ。婚姻で加増を考えておったが・・・」陛下もお悩みの様だ。帝国全体を考えて躊躇しているのだろう。
「今は北が不穏ですが、南の海洋国家がシュナイダー領とは接しております。西には小国家群とその先に聖王国。東に神王国に軍事国家が多数です。接してこそいませんが、間の子爵伯爵領を攻略されてしまえば・・・」
元帥閣下も懸念を表明している。北には軍国が控えてて揉めてるしどうするの。
「まあ、待て。西と東には辺境伯を配置して居る外国勢が出てくれば内輪揉めは沈静化しよう。まずは婚約を急いで婚姻か」
「されど皇族の婚姻1年や2年準備に掛ってもおかしくありませんぞ」元帥閣下がさらに突っ込む。
「教会側も儀式やら式典やらを少し抑えられぬか?」陛下が確認を取るが、半分位は諦めてそうだ。
「無茶をおっしゃいますな。皇族の婚約・婚姻それも3家同時となれば増える事はあっても減らす事などかないません」大公爵も苦渋の表情で言下に無理とおっしゃった。
「で、あろうな」あっさり納得する陛下。
「しかしサラ殿がそのような事をしていては、肝心要の拠点を失いかねません」アイダ姫が俺へのフォローを入れてくれる。
「う~む。今は大丈夫なのか?」大公爵も心配そうに問いかけてくるが。
「家の一つや二つは潰れているかもしれませんが、サラ殿がいれば再建できますぅ~」
「やはりサラ殿には拠点の維持拡大に尽力して頂いて、姫たちを加増することで実質サラ殿を援護致そう。ミゲルの領地には、どんどん人を送り込んで早急に伯爵となってもらう必要があるな」陛下が決断する。
「こちらの儀式やらは姫様達に踏ん張って頂くほかありませんな。ご婚約だけでも発表し、同時にエリクサーと万能薬の開発に成功したと皇家から発表致します」大公爵も同調する。
「ふむ。世界樹はまだ秘匿だな?」
「世界樹はまだ危険でしょう。北の軍国主義者どもが攻勢に出てきましょう。こちらの準備が整っていません」元帥も同意するも北との揉め事を仄めかす。
「サラ殿。エルフとダークエルフですか。懐柔して領民となさるのにどの位かかるかな?」大公爵が大森林の陣容強化を仄めかした。
「まだ話もしていませんが、一部世界樹の事を話せればすぐにでも可能です」
「漏洩には十分注意して直ぐに開始して頂こう。他に当てはあるか?」陛下も了承の言質をくれた。よし。これで心おきなく取り込める。どの辺に居留地を作ろうかな。
「亜人関連で少々。人間種ではまだ生き残れないでしょうから移民は試し試しになります。ああ、ここで農作物が全滅したのが響いてきました」
「では、その方向でどんどん試して行ってくれ。全滅とは魔獣かな?」
「いえ、陛下。病気です。今は休耕地として休ませています。別の地を開墾している所でハイスピードビートルに襲われました」
「やはり、難儀して居るようだな。苦労をかけるが頑張ってほしい」
「さて、おのおの方忙しくなるぞ。まずは婚約からだ。ティア、グリンダ、アイダ、明日晩餐会を急遽開く。その時婚約と加増をしよう」
「陛下、婿殿を矢面に立たせるにはちと荷が重いでしょう。だれか盾になるものが必要です」大公爵が直ぐに次の懸念を表明する。
「そこは心配ないようじゃ。義母様を連れて来ておる。ジェシカが片膝をついたマリアンヌと言えば父上達はご存知であろうか?」
ティアが母様の事を言うと、全員が全員ビクッとして一気に逃げ腰になる。あれ~。母様何やったの。
「あのマリアンヌか? まさかもう随分前に嫁いだと聞いておる」
首がギギギと音がしてそうな感じで俺を見る。
「息子か!? マリアンヌ・スンダの!?」
「え~と。みなさん母様の旧姓をご存知ですか? 不思議だな~」
「ミゲルめ、なぜもっと早く言わん」
「え~と。母様は隠しているご様子ですよ?」
「!!! 危うく地雷を踏むところであった。隠しておるのだな? 余は何も知らん」
「わしもだ」「私もです」
「ならば問題ない。ジェシカを付けるゆえ、明日お披露目じゃ」
とうとう婚約発表になっちゃったよ。良いんだけどさ。あ、そうそうもちろん例の産品は結構な金額になったよ。




