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第三章第十二話 姫様のご帰省。

第三章第十二話 姫様のご帰省。



「うん。まあ10000人居ると、それで?」


「お給金や配置などの人事を刷新するのがよろしいかと思います」


「どうやって? またなんで?」


「はい。巡察を致し、配下を良く見てご判断なされるのが良いでしょう。刷新するのは領主が交代した事を知らしめることと配下がよりご領主の関心を得ようとがんばります。またこの時に不要な者などを解雇したりと膿もお出しになる事が多ございます」


「だから巡察しろと?」


「ご賢察恐れ入りましてございます」


「なんか俺を領地に行かせようとしてる?」


「はい。我らが暮らす領もご覧になって頂きたく思います」


「・・・蔑ろにされたくないと?」


「ご明察にございます」


「いずれ行く事になるでしょう。その時は姫さん達も伴う事になるので、確認してからですね。よって人事は一時現状のままとします」


「ではそのように。次に男爵領の方針ですが・・・」


「まだあるのですか」


「はい。内政方針、外交方針、軍務方針、領民指針をお決めください。代官を配置してもどの方向に進んでよいのか分からなければ何も出来ません」


「内政方針は、どんなのがあるの?」


「はい。農業振興、商業奨励、工業発展、貿易推奨などです。どこに力を入れて領地を運営するかを決めます。外交方針は帝室、他の貴族家、また諸外国とどのようなお付き合いをするかです。軍務方針は拡大か縮小か、魔法強化か物理強化か、積極攻勢か専守防衛かなどです。領民指針はどのように暮らしてほしいかを分かりやすくお伝え下さい。これによって領民は今度の領主が良い領主か悪い領主か判断してくれます」


「・・・領民指針だけ笑って暮らせと。その他はお時間を下さい」


「承知致しました。良いご領主におなり下さいませ」


「はい」


こうしてやっと侍従長から解放された。全て棚上げにしたような気もするが、どうしろってのよ! 姫さん達遅いな。聞かないと分かんないよ。笑って暮らせとか言っちゃったけど大丈夫か? それからさらに一刻以上が過ぎてから姫さん達が帰ってきた。


「ほんに、困ったものじゃ。今まであんなにやっておったかのう? 時間がかかる事かかる事、湯水の如しじゃ」


「して旦那様よ、げんなりして居るが如何致したのじゃ」


「うん。なんか領地の統合とかしなきゃいけないんだって。既に決定事項らしいよ。結婚すると姫様達は伯爵位を継ぐんだって、それから配下が10000人いて、人事の刷新とか巡察とか方針とか決めるんだって」


「そうじゃった。それはすまなんだ。では今までの領地経営をすり合わせるかグリンダ、アイダ」


「構いませんが、旦那様はお疲れのご様子ですよぉ~」


「しょうがないです。この道は避けて通れないのであります」


「うん。ご飯までにやっとこう」


「まずは統合する事に決めました。しないと不利益が大きいから。そんで代官が戻っちゃうから現地の侍従から代官を選ぶ事にした」


「待て。侍従から選ぶのは得策ではない。どうせ侍従長が言って来たのであろうが不味いのじゃ」


「そうですわねぇ~。これはいけません」


「では誰か心当たりはある? うちの兄様達を派遣とか考えたけど、子供の事を考えると領地は多い方がいいって言われた」


「ん。何も問題ない。義兄様に頼ろう。代官は3年ごとで交代じゃ。義兄様達に順繰りに回って頂いて治めてもらおう。なに領地は別途固定して与えておけば問題は起こらんのじゃ」


「そうそう。最初から子爵領全部もらえるとか思うから問題になるのであって自分の領地とその他を治める事にしておけば問題なしですぅ~」


「代官の相場と言う物があります。領地の収入と代官の給金があれば下手な騎士爵より儲かりますし爵位もあげられます」


「そうだったんだ。じゃあ、どのくらいの領地をあげるの?」


「ここに居れば村一つ位じゃろうから、一郡も出せばよいのではないか。準男爵位の領地じゃ。それに給金もはずめばよい。今の大シュナイダー領よりも収入があろう」


「へー。ちなみに子爵領ってどのくらいの広さ?」


「そうですわねぇ~。大森林の半分位でしょうか~。一郡は、その1/50位ですねぇ~」


「ちょっと待って、そこそこ大きいよね? いいの?」


「うん? なにがじゃ?」


「領地かなり減るよ?」


「ふふふ。だって伯爵位貰うんだもの倍位になるのよぉ~。一郡位どってことないでしょうぉ~?」


「下級騎士で2石(約一反の収穫量、騎士なら1割が税金、14人位食える)、普通の騎士で4石、上級騎士で10石、村の領主も10石、街で100石、一郡ですと1万石くらいであります」


「貴族の領地の概略は騎士爵で5千石位が普通じゃ。準男爵は1万石、男爵でやっと10万石、子爵で50万石、伯爵になると100万石、侯爵で200万石、辺境伯で500万石、公爵は1000万石が平均的な領地じゃ。帝室は5千万石以上じゃな。帝国は大きいからの」


「例外も多いゆえ目安じゃな。それ義父殿もお前様も例外じゃ。未開地じゃが伯爵領位あるじゃろう?」


 帝室の領地だけで日本の5倍の広さだ。おっと前世の記憶か。一郡て小さいのか?


「なんか父様と俺の領地がいかに無駄が多いか分かったよ」


「そうじゃな」「そうですねぇ~」


「帝国では領民は土地を持っておりません。領主から借りて耕します。その半分とかが税金です。逆に領主が人を雇って耕すと全て領主の物になります。その代わり給金を払います」


「帝国では貴族も帝国に税金を納めます。およそ1割です。1公3貴6民ですね。こうやって聞くと皇帝陛下は莫大な資金を得ている様に聞こえますが、貴族は大抵役職を頂いているので役職給金が貰えます。これには税金がかかりません。宰相や元帥なら大金貨100枚を毎月頂けます」


「だいぶ話がそれたの。じゃから義兄様に代官になってもらうのが吉じゃ。でも義父様の領地もあるからどうじゃろ?」


「子爵領はもう発展してるんだよね? 既に税収が上がる領地を優先してもらうよ。父様のところは従士を代官にしても良いしね」


「ふむ。ならそれぞれの飛び地を3郡くらいづつも渡して置くかの? 無理を言って来てもらうのじゃ、少し色を付けて、結局全領地を回ってもらうのじゃからそれぞれに領地を配するのも良いじゃろ。給金は毎月金貨10枚じゃな。これで相談してみて欲しいのじゃ」


「・・・あれ~? 俺より給金多くならないかな~」


「くふふ。お前様。3子爵領からの上がりを忘れておるよ。単純に考えても全部合わせれば伯爵領の1.5倍の収入じゃ」


「あ、そうか。この間収支決算したから勘違いしたよ」


「なにを言っておるのじゃ。あれは20反かそこいらだけの収益じゃろ。上級騎士2人分の領地じゃ。それでもそこそこの金額を稼ぎだしたのじゃから大したものじゃぞ大森林は」


「さて次はなんじゃ。巡察かの?」


「うん。そう言ってた。人事の刷新のためにもだって」


「侍従どもも派閥争いがあるからぁ~。自分達に有利にしたいのねぇ~。でもいい考えよぉ~」


「巡察は行うべきであります。私達も一旦帰省する必要がありますからその帰り道にでも寄って行きましょう」


「人事はその時に刷新するのが良いじゃろ。大きく変える訳ではないんじゃろ? 爺ーどもはそろそろ引退させて新しい力を入れるのが良いな。若手の抜擢じゃ。くふふ。爺ーども驚くぞ。しまったの。わらわ達で帰省する風な事を言って置いたな。まあいい。訂正しておくのじゃ」


「うん。そうする。次は方針の決定だって。領民指針は笑って暮らせって言っちゃった」


「あははは。よいよいそれでよいぞ。いい領主じゃ。あははは」


「うふふふ。あははは。凄いこと言いますねぇ~。うふ、うふふふ」


「ぶっ。ぶふふ。笑っては、い、いけません。ふふ。良い指針です」


「・・・何か不味かったのかな?」


「ふ、普通は節約せよとか、無駄を省けとかじゃな。わらわも堅実に生きよじゃった」


「内政方針は富国でよい。軍務方針は専守防衛じゃな。外交方針はちと考えものじゃ。さてどうするかの。グリンダ、アイダ笑ってないで考えんか」


「だ、だって。領主さまが笑って暮らせって。うふふふ」


「あははは。うまいこと言いおって。あはは。わ、笑わせるでない」


「そ、そうでありますね。私は遠交近攻でしたね」


「私は~和をもって交わるべしといしていました」


「わらわは敵は討つべしじゃ」


「シュナイダー領の事を考えるとあまり結ぶのは得策ではないな。結ぶ相手は選ぶべきじゃろう。故にいまは帝室重視とでもしておけばよかろう」


「こんなもんかな。細かい事は書面で出してもらいましょう~」


「早速、義兄殿に直談判をして代官として赴任して頂きましょう。その後みんなを連れて帝都に行きましょう。義母様もお連れするのが良いかもしれません」


「そうじゃな。では行くぞ」


 そのまま領主館に行きマルス長兄様に頼んでみる。


「マルス長兄様、まず大金貨80枚。これ大シュナイダー領に投資します。増やして下さいね。それと問題が発生しました」


「・・・サラ大金貨80枚っていいのかい? それより問題って?」


「はい。姫様達の領地を統合しなければなりません。そこに代官を派遣したいのですがケイオス兄様、テリオ兄様、ガイウス兄様にお願いしたいです。報酬は、3個の飛び地にそれぞれ3郡づつと給金を毎月金貨10枚出します」


「・・・俺が行きたい位だよ。困ったなうちだって今、村の領主を任せてるんだけど報酬で全然かなわないよ。しょうがない。従士を当てる事にするから連れてって良いよ。父様、良い従士引っ張って来てくれるかな~。だれか村まで走ってケイオス達を連れて来て。カラナムとラグジュも呼んで」


「やった~。助かります」


 暫くして皆がぞろぞろ集まってきた。


「若、お呼びですかい」


「またサラが無理難題を言いだした。ケイオス、テリオ、ガイウスお前達に子爵領の代官をやってもらいたいそうだ。報酬は凄いぞ。各領地から3郡づつ計9郡の領地と毎月金貨10枚の給金だ。俺が行きたいよ」


「・・・本気で言ってるのか?」


「うむ。本気じゃケイオス義兄殿。これから帝都に帰省した後に巡察がてら回ろうと思う。その時に赴任してほしいのじゃ」


「「「・・・」」」


「ゆっくり放心してくれ。答えは決まってるだろうがな。そう言う訳だからカラナム、ラグジュ領主として各村に行ってくれ。あと1村は従士から誰か選んで連れて行け」


「若! あっしらに村やらせるんですかい?」


「お前は元々第2村を任されてたろう? そもそも今後発展したら街を任せるつもりだったんだ。問題ない」


「いきなり倍以上の知行ですぜ。いいんですかい」


「良いと言っている。そのまま1年以内に街にするから10倍の知行だ。頼むぞ。もう普通の事をしてたら追いつかん。ケイオス達なんて何倍だか数える事も出来ん。なんで俺が長男なんだろう。ほんとに俺が行きたいよ」


「マルス兄いいのか? 俺達がいなくても」


「良いも悪いもお前達が行かないとサラの首が締まる。こっちはまだ従士達がいるからどうとでもなる。行って来い」


「宜しくお願いします。直ぐ帝都に跳びますから準備して下さい。俺も準備しなくちゃ。あと母様も帝都に連れて行きますからマルス兄様良いでしょ?」


「もう好きにしてくれ。父上になんて言おう」


 だんだんマルス兄様の態度が投げやりになってくるな~。無理もないけど。こんだけ引き抜けばそうだよね。


「母様~。帝都に行きましょう。その後巡察で3か所ほど回りますから観光できますよ。お金は持ってますから心配いりません。足りなかった例の完成品売りますから大丈夫です。みんなも帝都行きだよ。ドレスとかも作ろうね」


「あらあら、まあまあ。随分急です事」


「なんだ。急転直下また帝都か? 今度はなにするんだ? 姫様達の付き添い?」


「そんな感じ。あ、来た来た。メリッシュ義姉様この度は申し訳ありません。宜しくお願いしますね」


「はい。サラちゃん。がんばりますね。ふふ。随分出世しちゃいました。従士の娘なのに」


「あははは。次は帝城ですって。お部屋用意してくれるって」


「ええ~。そ、そんな。それは困ります」


「大丈夫ですよ。兄様は今、男爵クラスですから。その貴婦人ですよ」


「あなた・・・」


「もう、俺にもなんだか分からない。サラはもっとだろうな。ハイになっちゃてるからな」


「姐さん姐さん準備はもう良いかな」


「準備かて、なんもないよ。身一つだけやもん」


「マイヤ達も良いね」


「ああ、いつもの事だ。どうせ逃げ帰ってくるんだろう?」


「ははは、そうかもね」


「僕今度は観光もしてみたいよ」


「皆準備は良い? じゃあ行こうか帝都へ」


 帝都までは転移陣を使って移動した。いきなり帝城の後宮に近い場所だ。ハイになってた俺もここにきて一気に現状を認識する。いかん。身内だけだったからハイになってた。


 これは不味いとこに来ちゃったかも。既に手遅れであることは一目瞭然だった。目の前にシュナイバッハ候が居り、幾人もの侍女が控えている。

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