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第三章第九話 野菜パーティーやん。

第三章第九話 野菜パーティーやん。



 何事もなくグリンダと色々な野菜を収穫して戻ると死屍累々。高速戦闘訓練の結果だろう。疲れ果てて動けない様子だ。いつの間に現れたのかグリンダをガシッっと掴む姐さん達。


「後はお前だけや。まっとったで~」


「え? え? 私はサラの護衛じゃないのぉ~」


「早く帰ってきたんや、自分もやっとった方がええ。ほな行くで」


 二人掛りの高速戦闘。あっという間にボールになる。右に左にすっ飛んで行くグリンダ。グリンダを打ち合う姐さん達。


「グリンダ! ちーとは避けんかい。めった打ち訓練やないで」


「よ、避けてますわよぉ~。回り込んで打ち込んで来てるんでしょうがぁ~」


 ・・・見なかった事にしよう。屋外キッチンに野菜たちを置いて、たらいに水を汲んで野菜を洗っておく。サラダとか温野菜とか肉詰めとか肉巻きとかいろいろできそうだ。


 ロールキャベツとかも良いかもしれない。そんな事を考えながら野菜を洗って行く。そうだ。食べ残した半端な野菜たちは絶品スープに入れて煮込んじゃおう。


 ブイヨンがさらに足されて美味しくなるよ。長ネギを刻んで薬味としてパラパラっと入れればさらに良いな。あとでみんなにも聞いてみよう。今はどんどん野菜を入れて煮込む。


 さて下準備はこれくらいで良いか。うーん。俺も訓練しておいた方が良いかな。素振りぐらいしておくか。


 突きが主体の攻撃になるのは長刀村雨が俺には重いからなんだ。怪力が生えれば軽く感じるとか言う言葉を真に受けて生えない内は重い事を失念していた。


 いち、にー、さん、しー、ごー、長刀村雨を振って行く。さんじゅうご、さんじゅうろく・・・もうきつくなって来た。ごじゅうっと。もう無理。


 早いって? ここはマンガの様に1000とか言いたいけど、そんなの無理に決まってんじゃん。鉄の塊だよ。木刀だって無理だよ。


「おお、素振りか。ええこやな~。言われんでも訓練してるんはええことや。それに引き換えお前ら、逃げるだけやないか」


「あんなの逃げるに決まってるよ。逃げ切れないけどさ。鬼や鬼やないかあんた~。と僕は思うな」


「じゃかーしいんじゃ、ボケー。ちょっと見いひん間になまっとるな。逃げ脚だけは早ようなりよって」


 姐さんうまいこと言うな。体がなまってると言葉がなまってるのをかけたのかな? ぷふ。とか笑って言ったらちゃいまんがなたまたまや~だって。


「そりゃ、命かかれば早くなりますよ。マイヤさん達が加わってから更にスパルタになってるから私らしんどいですよ」


 アンがここぞとばかりに愚痴る。世話好きのスパルタって聞くからに恐ろしい。


「相変わらず強いな姐さん。それでまだC級だって言うから驚くよ」


 マイヤが自分達のことを棚に上げて言いだした。


「あ、そうだ絶対違うって。マイヤ達と一緒でギルドランク上げてないからだって。絶対A級だよ。下手したS級かもしれないよ。ちょうど時間があるから転移で行ってこようよ」


「そやな。いってみよか~。ポーション詰めるだけ詰めてちょっと行って来るわ」


 姐さん達のパーティーを連れて、近場の冒険者ギルド、最初に行った子爵領に転移する。そう言えばここはなに子爵の領地だっけかな?


「や、受付のお姉さん久しぶり」


「おー、ノービス君頑張ってるかな。お姉さん心配してたよ。あれから音沙汰なくなっちゃったからもうこの世にはいないんじゃないかと」


「縁起でもない。ちゃんとランクも上がってますよ」


「どれどれ。へーもうD級になってる。凄い、凄い。初心者卒業してるじゃない。この間仲間が集まらなくて泣いてたのに」


「泣いてないやい。今日はこちらのパーティーのランク上げに付き添って来たんだよ」


「あ、あ、狂乱の双生児! なんでこんなところに!」


「誰が狂乱やねん。変なこと言わんといて」


「・・・狂乱か。なんか納得できるな」


「お姉さん、ポ-ションの納品バンバンするから姐さん達のギルドランク上げてやってよ」


「はい。受け付けますですから暴れないで下さい」


「・・・うちらそないなことになとるん? 数回しか暴れた事ないやん」


「・・・あるんだ。それも迷宮都市で。狂乱だね」


 結果だけ言うとB級までしか上がらなかった。ポーションの納品じゃあギルドランクがCまでしか上がらなかったんだった。


 忘れてたよ。因みにアンとライラはC級になった。やっぱり。スキル持ってるもんね。


「ねえねえ。お姉さん。ギルドランクを手っ取り早く上げるには何が良いかな?」


「C級以上はもう討伐しかないよ。大物を仕留めればそれだけ早く上がるよ。上級魔獣とか巨人系も上がるかな~。トロルとかサイクロプスとか。ワイバーンも良いかもね」


「! じゃあ、これはどう?」


「!!! ハイスピードビートル!」


 冒険者ギルドの中がざわざわしだした。


「君! これ斃したの? どこに居たのこいつ。まずい警報出さなきゃ。緊急事態発生だよ」


「南部大森林だよ。すっごい早いの。でも姐さん達がガシガシやって抑えつけたところを俺が止め刺したんだよ。へへへ」


「・・・狂乱の双生児と君達で? 大森林? あそこ入ったの? 生きて戻れたんだ。狂乱がいれば・・・うん戻れるかもしれないね。もう一回冒険者カ-ド出してくれる? そっちもお願い」


 再度検定して姐さん達はSクラス認定を受けた。当然ギルドランクもA級まで上がった。アン達は変わらず、戦闘記録がないから傍に居ただけという扱いだね。


 俺はと言うとどちらもC級に上がりました。戦闘記録ではやられてるだけだけど、一応一撃入れてるからだね。


「ノービス君いやいやもうノービスじゃないんだよね。サラちゃんスキルなしでC級ってすごい事だよ。寄生してるだけじゃ絶対上がらないんだ。戦闘記録が残る様になってるからね。他にもいろいろ戦ってるでしょ。記録はあるけど証拠、討伐部位がないから認定してあげられないけど」


「まあね。そうか困ったな。大森林の魔獣素材はシュナイダー領で売らないといけないからあまり持ってこられないんだ。この間は黒毛のグレイハウンドウルフとかも討伐したよ。素材は領主様が陛下に献上しちゃったけど」


「!!! あれ狩ったの君~~~」


「いや、僕がいるパーティーが狩ったけど黒毛はアンジュが狩ったんだよ」


「一度連れておいで、あれなら戦闘記録見て献上した事になってるからちゃんと認定できるよ」


「そうなんだ。言っておくよ。その内連れて来るね。姐さんの弟子だから強いとは思ってたんだ」


「狂乱の弟子!? まさか女のパーティーじゃないよね?」


「俺が入るまでは女だけだって言ってたよ」


「魔女の饗宴が、近くに居る・・・」


「やだなーそんな大層な二つ名ついてないよ」


「いや、ついとるで。殲滅姫が暴れたゴブリンの大襲撃のときに反対側で大暴れしよったから」


「え!? ・・・そうなんだ。そんとき狂乱さんはどうしてたの?」


 姐さん達は俺の『狂乱』と言う語句で嫌そうな顔をしたけどスルーしたまま答えて来る。


「うちらはゴブリン程度じゃ動かへんよ。マイヤ達に任せてお茶しとったんや」


「あ~~、どうやらうちのパーティらしいです」


「・・・。きみ大丈夫。死んじゃうよ。普通が一番だよ」


 魔女の饗宴と狂乱の双生児、更に剣姫や聖女、殲滅姫まで居る事が分かったら大騒ぎになる事、確実だよね。黙っていよう。


「ははは。南部大森林だからそれくらいじゃなきゃもっと死んじゃうよ」


 二つ名持ちばかりが周りに居る事に気づいた俺だった。二つ名ってそんな簡単に付かないよね? みんなを見る目が変わりそう。


「じゃ、じゃあ。お姉さん、ありがとう。またお願いします」


 何か目がもう来るなって言ってる気がするけど来るよ! 絶対来るからね! 俺も目に力を入れて訴えておく。


 可哀想なくらいガックリしてるけど、ここはしょうがない行きつけのギルドになってもらおう。


 ギルド内が騒がしくなってきたからそそくさと転移して戻ってきた。マイヤ達が何か料理してたから一声かけた。


「やあ、魔女の饗宴の皆さん」


 みんなが嫌そうな顔をした。やっぱり自分達の二つ名知ってたんだな。知ってて黙ってたんだ。ずっこいぞ~。


「な、なんのことかな~。僕は知らないよ。姫さん達の事?」


「はっはっは。そんな訳ないさミヤ。姫さん達はもう二つ名持ってるからね。君達だよ君達。俺を除く狂乱の女弟子って言ったら一発だったよ」


「チッ。やっぱり姐さん達か。姐さん達と一緒に居ると碌でもない噂ばっかり流れるんだから」


 思わずと言う感じでマイヤがぼやいちゃったよ。舌うちまでして。


「なにゆうてん。その二つ名はうちら関係あらへんやんか。面倒だからお前ら行って来いゆうただけや」


「姐さん達がいないから私らが踏ん張らなきゃならなかったんだよ。反対側からすごい勢いでゴブリンどもが逃げてくるから」


「あ~~。すまん。それは私であります。私もその時、不本意な二つ名を頂いてしまいました」


「やっぱりアイダか。二つ名聞いたときにそうじゃないかと疑ってたんだよ。物凄い怯えながら逃げて来たもん」


 リュディーがお玉を振りかざし腰に手を当てて、そのままアイダを指す。まあ料理中だったから分かるけどお玉とその怒り方がまたミスマッチでなんともかわいいな。


 夕食は採れたて新鮮野菜がたくさんあるから夏野菜パスタとピッツァにしました。色とりどりの野菜を乗せて焼いたのさ。


 きゅうりは軽く塩揉みして浅漬けー。トマトはざく切りにして他の野菜も混ぜてお酢と塩にオリーブ油も混ぜてっと胡椒パラパラ、サイコロコーンもパラパラ。サラダマリネー。


 そして絶品スープは、ネギとたまねぎをみじん切りにして沸騰寸前のスープに玉ねぎを入れて長ネギは薬味にして添えとく。


 はい、出来上がり。アスパラの肉巻きも出来てる。ベーコンがまだ作れてないからな~。ん~。肉が足りないかな。


 ならば、ブロック肉に切れ目を入れて大蒜の薄切りと紫蘇を挟み込んで衣を着けてから油で揚げる。スタミナ紫蘇とんかつー。ワイルドボアの肉だからとんかつで良いよね?


  これはカモかな? お腹に各種ハーブを詰め込んで周りは塩と胡椒で下味つけてから直火にかけておく。マッドゴーレムにぐるぐる回させながら焼きあげて行こう。


 食事してる間に焼き上がるでしょ。トマトやらキュウリやら野菜をすりつぶして、お塩に胡椒も一摘み。布で濾してからレモングラスの汁を少々。


 野菜ジュースは氷魔法で冷やしておくと。あとは緑茶を氷で出す冷茶も作っておこう。お風呂上がりでも良いからね。


 んふふー。家庭菜園程度でも十分だな。って領主が満足しちゃだめでしょ。ごはん、ごはんー。出来上がりー。


 ん? みんなが集まってボソボソやってるな。また女子会かな? しょうがないちょっと待つか。



     ◇     ◇     ◇



「報告を要求するのじゃ」


「「「・・・」」」


「どうしたのぉ~。さっさと報告しなさいなぁ~」


「あ~、え~とまだ何もしてない」


 しぶしぶマイヤが答えた。


「どういう事よ? あれだけ入念に準備しておいて」


 さらに詰問口調のグリンダ姫が突っ込む。


「まあ、次の手順が恋人繋ぎだと言うことらしい」


「「「・・・」」」


「なんでやねん。ほぼ裸のおなごおったら飛びつく年頃やろ? どっかおかしいのんか?」


「どっかおかしいのかという質問は否定しきれないが、どうやら幻想を持っている可能性が高い。やる気はありそうなので身体的不具ではないと思う。ちょいちょい偶然を装って触るくらいの事はして来るからな」


 ものすごくばれてるらしいよサラ。うんうん。しょうがないねその内ガッツリ触らしてやろうかな。ミヤが心の中でそう決心したのでした。


「こっちで話を進めちゃうとトラウマになっちゃうかもしれません。女性嫌いとか」


 アンジュが一応言い訳をして来る。


「・・・それはまずいのじゃ。最も忌避せねばならん。その次が女性好きじゃが」


「故に手順を踏むのが最良、一度一線を越えればもう心配はいらないと愚考します。そこが問題なのですが」


「初手が愛の告白、次手が手を繋ぐ、第三手がハグ。第四手がキッス(ソフト)、そして恋人繋ぎ。ここまで手順が判明しております」


「我々は第四段階までクリアしてる」魔女の饗宴の皆さんが申告した。


「私もであります」アイダが便乗してさらっと申告する。


「な! アイダいつの間に!!」もちろんティア殿下がそんな事を聞き逃すはずもなく。


「ふふふ。お子様には分からないのであります。既にチェックメイトかと思っておりましたが、まだ序盤戦でした」


「ん~、私は第二段階ですねぇ~。」顎に手を当てて小首をかしげながらグリンダも申告して来る。


「お前もか! グリンダ!!」


「・・・面倒やな~。なら今夜はうちらが行かしてもらうで。一気に第四段階まで進めちゃる。伊達に女200年もやってへん」


 とうとうメル姐さんが参戦を表明しだしたよ。僕の番はいつかな~。


「じゃあ、僕も今夜行くよ。どうやって段階をクリアしようかな~。ベッドで恋人繋ぎしたらクリアできるかな~。きっとお外じゃなきゃだめだよね。難しいな~」


「ちょっと気になってるんだけど、姐さん達も参加することにしたの?」


 アンが急に参戦を表明した姐さんに問いかける。置いてきぼりを喰らった子供みたいな様子だ。


「あ。そう言えばそうやな。なんや話的に行かないかん気になっとったわ。ルルどないする?」


「・・・もちろん行くに決まってるやん。お気に入りやもん。メルは止めはってもええよ」


「そうやんな。なんやかや言って気に入ってるな~。なんでやろ? 一目惚れッちゅう奴かな~? なんやちゃう気はするけど行く気はあるな」


「あたしらはもう少し様子見ます。嫌いじゃないけど会ったばかりだし。ね、ライラ?」


「・・・う、うん。あたしも行っていい気はするけど直ぐじゃなくても良い」


「やる訳じゃないのならわらわ達も良いってことじゃな?」


「ん~、どうかな? この年頃の子は勢いでやっちゃうかもしれんから不味いんじゃないか?」


「我々の場合は、段階を進めつつ婚礼の準備に入らなければなりません。ふふふ、第四段階の私は侍女隊を除隊して皇族に復帰しなければなりませんね。そうだ。婚礼衣装も用意せねば! ふふふ~ん♪」


「ぐぬぬぬ。調子に乗りおって! そうは言っても成人するまでは婚礼には持って行けん。どうする。どうすのじゃ」


「もう。おバカですかぁ~。アイダもからかわないで下さい~。私達の場合は、陛下のご許可を頂いて婚約からですよぉ~」


「おお、そうじゃった。降嫁しなければならんから父陛下のご機嫌伺いに行かねばならん。くっくっく。陛下も良い婿がねを用意してくれたものじゃ。毎日が楽しゅうていかん」


「どうせアイダもぉ~除隊したらぁ~皇族の降嫁条件に引っかかりますからぁ~陛下のご許可が要りますぅ~ので同じ事ですぅ~」


「同じではありません。自分は成人しているのでそのまま嫁ぐ事が出来ます。よってやっちゃう事も可能です」


「グリンダ~、あんなこと言ってるのじゃ~」


「ふふふ。大丈夫ですよぉ~。ここで家柄の力を使うのですぅ~。するとアイダの婚姻は私達の兼ね合いによって止まるのですぅ~」


「流石はグリンダ読まれてましたか。ならば軍部から・・・」


「アイダ~。抜け駆けすると泥沼にはまりますよぉ~。教会の恐ろしさは知っていますよねぇ~」


「くっ。ならば権力基盤の強化からですか。巻き返せるでしょうか?」


「なんか凄いこと言ってる気がするんはうちだけ? これがシュナイダー家を取り巻いてる現状なん?」


「どうやらそうらしいがあっちは正室の座を争ってるからこっちとは別次元だ。あ、そうそう言って置くぞ。単独行動で街とかもう行かないでくれ。攫われて拷問されて秘密を吐かされた上に殺されて闇に葬られる可能性が非常~に高い。気をつける様に」


 マイヤが新参組にくぎを刺す。


「「「・・・」」」


「その内、義父様と義母様にも挨拶に行かねばならんな。こんなにのんびりしてられるのも今のうちだけかもしれんな」



     ◇     ◇     ◇



「おーい。そろそろご飯にしない? 俺もうお腹ペコペコなんだけど」


 我慢しきれずにとうとう俺が声を張り上げるのであった。


 こうして女子会が閉幕した。

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