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第三章第十話 ご挨拶にいかんと。

第三章第十話 ご挨拶にいかんと。



 野菜パーティーは上々だった。特にエルフ系の人達は大喜びだったよ。菜食が基本なんだってさ。美味しいお野菜をありがとうとか言われちゃった。


 へへへ。うちのお野菜を褒められるとうれしいな。野菜ピッツァはベーコンが足りなかった。そうすれば完璧だったのに。今度作ろう。ドレッシング系も増やせばいろいろ楽しめると思う。


 胡麻とか紫蘇で和風のドレッシングもいけるかな。ソースも作らなきゃいけないし、やること多いな。自分たちの食生活を充実させるのは吝かではないのでがんばる。


 開墾よりやる気出るかも。最近食事がおいしいよ。料理人とかも雇いたいな。ああ、夢が広がるけど魔獣がな~。


 そうそう野菜ジュースも好評だった。甘くする人としょっぱいままで好みは分かれたけど概ね受け入れられたよ。青臭さがないのが家の野菜たちの凄い所だよ。


 冷茶はやっぱりお風呂で飲んだんだ。凄く甘いんだ。俺も初めて氷り出し緑茶飲んだけど美味しかった。これ全国に広めていいと思う。あ、いけね前世の記憶だった。


 もう後は寝るだけ。寝室に入るとしばらくごそごそ隣でやってたけど今日も装いも新たに入ってきた人影が三人。


「サラ~。今日は僕だよ~。一緒に寝ようね」


 今夜は昨日のような切羽詰まった様な雰囲気がない、気楽だ。普通のミヤが入ってきた。まあ、装いは変わってるんだけど、それにしてもどこでいつ買ってきたんだか。


「うん。ベッドが広いから寝るの気持ちいよ」


 気が付いたら両側に人の気配。ビクッっとしたら姐さん達だった。高速移動したのか! 瞬歩! 瞬歩か?


「サラやん。うちらもおるよ~。ギュッてしたるさかいおいで~」


「・・・うちもおるんよ? ほらまずは挨拶からやね~」


「姐さん! いきなり瞬歩とかズルいじゃないか。事前に言ってよ!」


 ふふふ。今日はみんなリラックスしてるな。大丈夫そうだ。何となくねっとりしている気もするけど。大丈夫だろう。


「まずはルルを起こしてくれてありがとう。うちほんまうれしかったわ」


「・・・ありがとう」やや語尾が上がる感じの言い回しだ。


「うん。俺だけの手柄じゃないけど起きれて良かったね。ルル姐さん」


「・・・ルルでええよ。ご領主様なんやし」


「ならうちのこともメルでええよ。これから長い付き合いになるんやしサラやんも直ぐに大きゅうなるさかいその内違和感もなくなるよ」


「そ、そう? そうだね」


「うちらサラやんの事まだよう知らんさかいお話しよ。シュナイダー領はここなんよね? どこの生まれなん?」


 俺の事を話す事にした。俺は大シュナイダー領の五男坊で、この南部大森林の隣が実家。俺の領地を父様の領地と区別するために小シュナイダー領と呼んでる。


 俺の領民は今のところみんなだけ。嫁候補だから正確には領民じゃなくて領主一家なのかもしれない。大シュナイダー領は常に魔獣の危険に晒されていて発展を阻害されて来た。


 だから貧乏騎士爵だったのがつい数ヶ月前の事。上の兄様達の世話で手いっぱいで俺まで回ってこなかったんだ。ある程度予想はしてたからコツコツ路銀を貯めてた。


 成人してとうとう一人立ちしなきゃならなくなって、自分の土地を切り開くか何か就職するかの選択を迫られたんだ。


 手に職もないし一応の軍事訓練は受けてたから冒険者くらいにしかなれなかったんだけどね。


「大変やったんやね~」ちょいちょいメル姐さんが合いの手を入れて来る。絶妙なタイミングだ。


 俺はそんなに強くない自覚があったから、開墾を選んだんだ。だけど冒険者資格を持っていても損はないからまず冒険者ギルドを目指した。


「・・・さっき行ったとこやね。だから受付のお譲さんと知り合いやったんや」


「うん。あのお姉さんが薬師のスキルを薦めてくれたんだ。生活出来るようになるって」


 帰郷の最中にマイヤ達と会ったんだ。俺も仲間の勧誘がうまくいってないし初級魔獣でも四苦八苦してたからね。


 それで大森林に向かうことにしたんだけど、その頃の俺は甘やかされてたから南部大森林がそこまでの危険地帯だって知らなかったんだよ。


 父様達が隠してたんだと思う。でも父様も気軽に開墾薦めてた様な・・・あっさり諦めると思ってたんだな。


 だもんだからいきなり奥に踏み行っちゃった。で、見つけたのが世界樹があるここ。もうそこからはあれよあれよという感じでこうなった。


「こんな感じかな」


「ついこないだまでは平々凡々やッたのにいきなりの変転やな~。まあ人生そんなもんやろな」


「・・・サラやん、喉渇かへん? お茶入れてこよか?」ルル姐さんは静かに聞いていた。話し終わったところでこの気遣い。いいね。


「うん。結構喋ったから欲しいかも」


 ルル姐さんが扉の方に移動して、ちょっと扉を開けて何事か依頼して戻ってきた。


「・・・アイダが淹れてくれはるって」


 ミヤは俺の上に乗っかてニコニコと話を聞いていた。ミヤにとっては今さらな話ばかりだ。もっと詳しく知ってるもんね。


「へへへ。サラが最初に危機に陥ったのはブラックスネークだったよね。アイツいきなりサラにがぶって喰らいついて来たんだ。僕は急いで上に登って尻尾を切り離してやったよ」


「うん。すんごく肩が痛かったから助かった」


「へ~。あんたらやったらブラックスネーク程度なら問題ないやろ?」


「へへ、それがその時は騒いじゃってて接近を許しちゃったんだよ。失敗失敗」


「・・・油断しよったわねミヤ~」


「へへっへ~、しちゃったね。でもそれってほとんどサラのせいなんだよ?」


「まあ、うちらかてハイスピードビートルには油断してたわ」


「「「・・・」」」


「サラやん。うちらもおとうはんとおかあはんに挨拶行かないかんやろ。どう思う?」


「え、え~とどうだろう? お野菜持って行ってみる?」


「わ~、ええの。うれしいわ~。そならいつ行こうか? 姫さん達も何やら実家に挨拶するゆうてたし、直ぐいこか」


「僕も久しぶりだよ。まだお父さんお母さんって呼ぶような間柄じゃなかったから。緊張するね」


 ミヤまで何かお父さんとかお母さんとか言い出したよ。


「うちはそんなに格式ばってないから大丈夫だと思うよ。村の子とかも遊びに来てたし」


 アイダが淹れてくれたお茶を飲んでから寝ることにした。結構夜更かししちゃったな。


「サラやん。寝る前にチュッてしてええ? ごあいさつやもん」


「ふふふ。ご挨拶、チュ」


「・・・うちかてご挨拶、チュ」


「ミヤも、チュ」


(よっしゃ~、第四段階クリアや~。一気に来たで~。この路線やな。エロは控えめなんがコツや。でもさりげなくふよふよしておくと。うちの胸部装甲がんばりや~)


 ああ~、両脇に金髪美人。上にはロリ巨乳。至福だ~。ちょいちょい胸部装甲が当たるけど柔らかいな~、気付いてないのかな~。黙ってよっと。


 ガバッて来るのもドキドキするけどこのちょいちょい当たるのも堪らんな~。なんて事を考えながらいつしか意識がなくなった。


 翌朝は、やっぱり女子に埋もれて目覚めた。意外だったのは姐さん達も寝相が悪い。ミヤも俺の顔の上で寝てたし、ルル姐さんは腹の上で横になって仰向けになってた。


 メル姐さん・・・俺の脚にかじりついてたよ。顔の上のミヤをどけて横に寝かせる。腹筋を使って上半身を起こしルル姐さんも横に寝かせる。


 メル姐さん・・・思わず目から汗が出てきそう。ちゃんと元に戻して川の字で寝かせる。これだけやっても誰も起きないとこを見るとまだまだ起きないだろう。


 ベッドの上で胡坐をかいて暫くボーっとしてた。ちょっと早過ぎたな、もう一回寝ようかな。ルル姐さんの横に潜りこんでミヤと背中合わせで寝なおす。


 ミヤは既にメル姐さんに掴まってる。俺はもぐりこむと同時にルル姐さんに掴まったけど寝なおすつもりだから気にしない。


 ルル姐さんの胸部装甲でうつらうつらしてるといつの間にか二度寝してたみたい。ふと起きるとみんな起きてた。


 カアイイな~。まだまだ子供やね~。ルルに抱きついとるよとか聞こえて来た。何か釈然としない気がするが俺も起きる。


「おはよう」


「おはようさん」


「おは~」


「・・・おはよ」


「一応言っておくけど俺は二度寝だからね。みんなを川の字に並べたのも俺だからね」


「ふふふ。さよか~。うんうん。そうやな~。ありがとうな~」


 物凄い不本意だ。絶対信じてない。あの寝相を写真に撮っておきたかった。まあいい。男は些細なことは気にしないものだ。・・・なんか悔しい。


 みんなが起きたところでコンコン。お茶のワゴンを押しながらアイダが入ってくる。またこれやるのか。お茶の準備をして出て行く。


「お茶にしようか。次は洗顔と歯磨きに着替えがくるからね」


「昨日もこうやったん?」


「うん。お茶を飲み終わったらちょうどいいタイミングで来るから見てて」


 コンコン。まさにドンピシャ。桶と水瓶を持って入ってくる。後ろに居るのは、おお、マイヤとヤルルに、リュディーか。


 桶に水を張って洗顔、歯磨きをして顔を拭いてもらうと服を剥ぎ取って行く。そして濡れタオルで体を清めたら着替えると。うん。昨日と同じだ。


「食事はみんなと一緒に食べたほうが良いよね?」


「そやな~。なんかいたたまれへんな~。みんなとがつがつ食べよか~」


 やっぱりダイニングに向かう事にする。


「おはよう。食事はみんなでしよう」


 どうやらそうなる事を見越していたようでダイニングテーブルには既に食事の準備がされていた。ぬう~。アイダに抜かりなし。


 昨日と同じ轍は踏まないのか。きっとあのまま待っててもここの食事を持って来たんだろうな。一流の侍女教育を受けてるだけあって隙がないな~。


 今日は目玉焼きがある。半熟トロトロ。サラダには昨日作ろうと思ってたドレッシングまでかかってる。


「今日は姐さん達が俺の実家行ってみたいって言うから、そろそろ貯まった魔獣素材を納めて来ようと思うけどどう? あと、おみやげに朝採れ野菜の詰め合わせとか」


「いいんじゃないか。昨日の高速戦闘訓練で体がガタガタだから休憩したいしな」


「じゃあ、手分けして色々集めちゃおうか。貯蔵庫から出す人、魚は投網で獲って来てね。卵と葉っぱもお願い。残りは野菜の収穫」


 ちゃっちゃと済ませて転移する。大シュナイダー領の領主館前だ。


「ただいま~。おっちゃーん、カラナムのおっちゃーん。また素材持って来たから捌いてよ~」


「おお、サラ坊っちゃん。お帰りなさい。へい。お任せくだせえ。やっときますよ」


「あれ、みんないるの? 兄様達全員? 父様は不在なんだ」


「サラお帰り。母様は奥に居るよ。人手不足でね。みんな呼び戻したんだ」


「マルス長兄様、ただ今戻りました。ミランダ義姉様今日もおきれいですね」


「あら、サラちゃんお世辞も上手になりましたね。ふふ。お帰りなさい」


「これ朝獲れ野菜の詰め合わせ。凄く美味しいよ。おみやげです」


「相変わらず大きいな。良いのか? 出荷しなくても」


「うん。長兄様。これは家庭菜園程度しかまだ作ってないんだ」


「お、サラ。戻って来やがったな。帝都に来た時は寄れって言ったのに結局一度も来なかったな」


「あ、ガイウス兄様。お戻りになられたのですね」


「じゃあ、ちょっと母様に挨拶してきます。みんな行こう」


ぞろぞろと皆を従えるように奥に入って行く。リビングのソファーに腰掛けてお茶をしている母様がいた。


「母様、戻りました」


「あらあら、まあまあ。サラちゃんお帰りなさい」むぎゅっとハグして来る。


 後ろに居る面々に緊張が走る。特に姐さん達。どうしたんだろう?



(ルル、あのお人出来るで)(・・・うん。この気配覚えがあるやん。どこやった!)


(思い出せんよ。どこやったかな~)(・・・ドレイク討伐の時!)


「あ、笑うキリングドールや」


「あらら。まあまあ。サラちゃんこの人はお嫁さん候補? 何か勘違いしてるのかしら」


 きらりと一瞬光る眼。


「い、いややわ~。おかあはん。うち緊張して勘違いしてもうたんよ。堪忍してや~」


「まあ、きょうらん・・・」


「「おかあはん!!」」


「そうね。勘違いね。お互いにそうだわね。ほーほほほー」


「「うふふふ」」


 何やら不穏な空気が流れたが、異様な笑い声にかき消された。


「え~と。なんかよく分からなかったけど、紹介しても良い?」


「そうね。サラちゃん。初めて(・・・)お会いするんだから紹介してもらわなくっちゃね」


(どこぞに嫁に行ったとは聞いてたけど、こんな所におったんか)(・・・歴代最高峰のキリングドールがまさか騎士爵家に嫁いでいるとは気がつかんやん)(せや。こいつ務めてたんもかなり短かってんな)(・・・うん。マイヤ達も知らんと思う)


「初めまして。おかあはん。メルディリリシアーナ・ソウルフル言います」


「・・・初めまして。おかあはん。妹のルルジットゥリアーナ・ソウルフル言います」


「わ、わたしは、アン・ドゥエインです」


「・・・わたしは、ライラ・エミューです」


「「「お母様、こんにちは」」」既に面識がある魔女の饗宴が一斉に挨拶をする。


「まあまあ、初めまして。私がサラの母のマリアンヌ・シュナイダーよ」


「マリアンヌ男爵夫人、お久しゅう。先日はお騒がせしたのじゃ。今は仲睦まじゅうしておる。安心召されよ」


「姫様にはご機嫌麗しゅうございます。先日は十分なご挨拶も出来ませず申し訳ありません。何分サラは若年の身、何かとご不自由をおかけ致しているかと思いますが、よしなに思し召し下さい」


「十分な歓待を受けているのじゃ。生涯でこんなに楽しい一時は初めてじゃ。こちらこそよしなにお願い致すのじゃ。これからは義母様(ははさま)とお呼びしてもよろしいか? わらわの事はティアとお呼び下され」


「まあ、勿体ないお言葉。有り難く存じます。私ごときでも母とお呼び頂けますか。ティア」


「はい。母様」


「では、私の事もグリンダとお呼び下さい。母様」


「まあ、はい。グリンダ」


「私はアイダと」


「はい。アイダ」


「まあ、サラちゃんお母さん本当に困っちゃうわ。こうも身分が違うと恐ろしくて」


(何が恐ろしいや。皇帝の妃にとか噂もあったやんか)(・・・せやせや。あれ全部蹴ってここに嫁いだんかな?)(うわ。こっち見取るで黙っとこ)


「そうそう、ティア、グリンダ、アイダ。なんか気後れしてしまいそうね。お供の方達がお着きになっていますよ」


「あ、忘れておったのじゃ」


「なんか家の領民より多い位のお供の方々が東の方に村を作ってますのよ。どうしましょう?」


「・・・。困ったのじゃ。大森林には連れて行けないしのう。しばらく預かって頂けませぬか? 母様。ご迷惑はおかけせぬよう言い含めますので。その内魔獣も落ち着くかもしれぬのじゃ」


「私のところもお預かり下さい」「お願いしますであります」


 頬に手を当てながらまあ、どうしましょう。なんて困り顔だが、ここで待機してもらうより他に道がない。


「あのさ、ちなみにどの位いるの?」


「わらわのところは侍女が80人位に護衛の帝国騎士が20人、侍従が10人じゃ。あとは戦闘メイドが20人じゃな」


「私のところは侍女が50人に神殿騎士が20人、女神官と巫女が合わせて40人と戦闘メイドが10人よぉ~」


「自分のところは侍女が40人に護衛の騎士が40人、高位騎士が10人、戦闘メイドが20人であります」


「・・・」


 ここにも問題が山済みなことが発覚した瞬間だった。

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