第二章第十二話 作物作りは土造り
第二章第十二話 作物作りは土造り
俺が転移魔法を習得してから四日後、とうとう野菜が花をつけ始めた。蕾がある事は分かっていたのでそろそろだろうとは思っていたが、予想以上に早い。
因みに小麦はまだ出穂していない。一本一本が太く親指くらいに成長して背丈も俺の身長を越えた。おいおい、どこまで大きくなるんだ。
トウモロコシ、ジャガイモ、大蒜、大豆も既に通常の大きさではない。スイカに至っては、試験農園の区画からはみ出し始め、畝を作っていない30m先から折り返し折り返し全面に広がっている。
「うむ、大豆は枝豆の状態でも収穫してみたいな。ふふ、転移を覚えたのでその内酒類も持ってこよう。枝豆を塩茹でしてエールで風呂上がりに一杯とかしてみたい」
「おいおい、お前にはまだ早いだろう。ワインを薄めたやつにしておけ。レモンを絞るとジュース感覚でうまいぞ」
俺がエールの話をしたらマイヤに茶化された。実はまだエールは呑んだ事がない。前世の記憶でビールと枝豆があるから言っただけだ。
貴族のお坊ちゃまで成人したばかりの俺はエールなんて飲む機会がなかったのだ。
「へへへ、あたしもワインで良いや」
リュディーはあっさりエールを諦めた。多分苦いのが苦手なんだろう。
「いやいや、枝豆には冷えたエールでしょ。せっかく火魔法で氷魔法も覚えたんだからキンキンに冷やしてさ。僕は一気に行きたいよ」
意外にもミヤはエール派だったようだ。ジョッキでエールを飲む真似までしてプハァ~とかやってる。
「ああ、キンキンに冷やすと苦みがあんまり感じないんだよな。そう言えばモヤシは作らなかったな。今度やってみよう」
ん? よく考えたらモヤシって大豆一粒で一本だから全然増えないで消費しちゃうから生産性が良くない気がするな。モヤシで食べちゃうとその内大豆がなくなってしまうんじゃないだろうか?
まあそんなことはどうでもいいか。モヤシ用に大豆を作っているだろうから、なくならないよね。
でもモヤシで食べないで大豆まで育てれば何十倍もの収穫が上がるんじゃないだろうかとは思ったよ。
試験農園を後にして外壁製作と領地確保を目的とした伐採を続行する。外壁はびっしりと丸太を並べた高さ4m位のものが間もなく完成だ。
外壁に使う丸太を伐採したので外周ぐるりと10m位の空き地が生じている。これは魔獣避けのための空間でもある。
午前中でこの作業が終了して、外壁の完成だ。で、午後にはいよいよ世界樹の圏外に領主の私有農園を製作しようと思う。
「よし。これで外壁は完成だね。東西南北の門も出来たし、これはなかなか立派なのが出来たんじゃないかな。みんな御苦労さま。いつかはここに立派な領主館を作るつもりだよ。――うーん、どうしようかな」
「ん? なにをどうしようかななのでしょう。この後はまとめての農地を作るのでしょう?」
俺が悩んだ事に疑問を感じたヤルルーシカが話しかけてきた。
「ああ、どこにしようかと思ってね。領主ともなるとそれなりにお金が掛るし、騎士団やら帝国への税金、家臣団への給金や装備に軍馬、貴族同士の付き合い、考えると面倒臭いけど俺も貧乏貴族はもう嫌だし、みんなも薄給の従士は嫌だろう?」
「え~。もちろん僕は嫌だよ。そうじゃなきゃ冒険者なんてやってないよ」
ミヤが一攫千金を狙った冒険者をやってるのはお金のためであることを暴露した。基本的にこの大森林や西の山とかは、全て俺の物なのだ。
この領地を領民たちに分け村を興す。そこからの税収で領地経営や俺の給料やらを捻出する訳だが、今のところ税収どころかその目処も立っていない。
まあ、村を興すのが領地経営の一環なのだが、それとは別に食うか食わずの生活をしている様な貴族になるために苦労している訳じゃなく、それなりに裕福に暮らすには、別に私有農園やら牧場、鉱山などの収入源を確保しないといけない。
どうやらお嫁さんは皇族もしくはそれに類する家格の家から来るらしいのできっとお金はかかるだろう。
贅沢が染みついたお姫様なんて薄い塩味のスープとか黒パンは食べたことないだろうし、よしんばそれでも良いとかなっても耐えられないだろうしな。
この異様な成長を支えてるのは森だろうから、全部更地にするって訳にもいかないよな。したくても出来ないけどね。
ドライアドさんが怒ると思うし。となると森を残しつつ、村を点在させると。やっぱり村の安全面を考えると父様の領地に逃げ込めるように北側に村を点在させるのが良い。
となると領主の農地は必然的に南側か~。
「ふ~。俺達は世界樹を基準にして南側を占有しよう。海辺まで行けたら、また漁村なり塩村なんかも作らないといけないけどそれは後の事だ。あ、ここが領主館だからここに領都を作らないといけないのか」
「なにやら、色々考えてるようですが、いきなり大きな街が出来る訳ではありませんよ。まずは開拓村を作って徐々に広がっていくのです。広げた分を領民に分けそれ以外は全て自分のものです。大きくなったら移住してもらってだんだん大きくなりますから今はあまり気にせず、今必要な物から作りましょう」
ヤルルーシカの助言に従い、徐々に広げていく方策を採用しよう。世界樹の周りに農地を作って俺の私有農園をまず作らねば。みんなが食べるものくらいはここで収穫しよう。
「そうだな。南は危険地帯だから俺達が切り開こう。10アールくらい(およそ1反)の農地を転々と森の中に作ろう。休耕地も作らないといけないからな」
主食は小麦、前世の記憶で1反、約10アールの農地から収穫できる作物で一年間4~6人が食っていけるとか聞いた事があるな。米ならもっと効率がいいらしいけど、無いもんな~。
これのうち半分くらいは税金も含んでるから結構取れるのかな。前世での記憶なので収穫量にもよるから試験農園の結果次第だが、なんか凄い採れそうだ。
そうすると六人で食べて行くには・・・ダメか子供の事も考えないと。
「ねえ。みんなは子供は何人欲しい?」
「な、なに、何を言いだしてるの!? い、いきなり子供なんて! まだなにも、し、してごにょごにょ・・・」
農地の広さを考えるのに人数を決定したかったのでそばに居たヤルルーシカに訪ねただけなのだが、何やら真赤になってごにょごにょ言い出してしまった。どうしたんだろう?
「どうして、そういう発想になったのかなサラ? お姉さんとそう言うことしたいのかな? ひひひ。なら今度、僕がきっちり教えてあげようかな」
「いえ、ミヤ、身も心もささげると誓ったのは私だけです。まずは私が教えましょう。正直、私も経験がありませんから教えられるか甚だ疑問ですが、冒険者仲間から色々聞き及んでいます。大丈夫でしょう。あの下種野郎の娼館武勇伝なんかも聞いておりますから、ええ、大丈夫でしょう。では、早速、今夜あたりから始めましょう。サラもそれで良いですか?」
これに喰いついて来たのはミヤとアンジュだ。な、何を教えてくれると言うのだ! 人数を知りたいだけだと言うのに。
「い、いやいや。なんでそうなるのかなアンジュ。ダメに決まってるでしょ。ただほら、農地を開墾するのに食い扶持分以上は広げないといけないから人数を把握したかっただけで、あ、あの、その、まだ早いっていうか。嫌な訳じゃないよ! じゃないから勘違いしないでね。そ、そのなんか恥ずかしいと言うか、そのなんというか。ごにょごにょ」
「なんだサラ、まだ覚悟を決めてなかったのか。せっかくみんなでアプローチしてるんだぞ。気付いていなかったのか?」
「え、ま、マイヤ。な、なになに? アプローチしてた!? ご、ごめ、め、ごめん。分かって無かったよ」
「ははは、何だやっぱり気付いていなかったか。こんなにアプローチしてなかったら裸で一緒にお風呂に入ったり寝たりしないだろう。いつでもオーケイですよって言う私たちなりのアプローチだったんだぞ。サラももう成人してるしさかりの付く年頃だろに」
「え、え、み、み、みんなそんなつもりでしたの? わ、わたしはま、まだその、えとあの」
「ヤルルーシカのツンデレも始まっちゃったしこの話はその内と言うことで子供の分は出来てから増やせばいいだろう。この人数の2倍位は余裕を持って、冬越し出来るだけの蓄えが得られる位でどうだ」
「うん。じゃあ、12人分プラスアルファ位で考えるね。俺達は税金を考えなくて良いし他の野菜も作るとして200アールくらいかな。およそ20反だね。森を間に挟んで10アールの農地を20個だね」
剛力やら怪力の重機部隊がいるから、たぶんあっという間だろうな。マッドゴーレムも出して整地も一緒にすすめる。地面も深めに掘り返して放置しておこう。
はあ、俺も早く怪力欲しいな。南門から出て直ぐのところ、西側をマイヤ、東側をミヤの剛力コンビが伐採、二人はマッドゴーレムを出して整地および丸太や根っこの処理までを行う。
残りの四人で土を掘り返してふかふかの農地を作る。もちろんマッドゴーレムを出して岩や石ころの除去をさせる。同時進行で南門から真っすぐ南下する道も作る。
これは農地に行く為の道だけど将来的には海に続く道になるから太くしておこう。この程度の作業なら今日中に終わるな。みんな慣れてるからね。
でも俺だけでやろうと思ったら、どん位かかったんだろう。10アールの農地が40個出来た。あれ? 400アール出来てる! ミヤとマイヤがそれぞれ20アールづつ作っちゃったのか。
失敗した。ちゃんと伝えてなかった。まあ、多い分には困らないからいいや。各農地の間には幅10mほどの森を挟んでそれぞれを小道で繋いでおく。
「じゃあ、今日はこの辺にしとこうか。後は自然に任せとこう。と言ってもまたドライアドさんが張り切ってくれちゃうんでしょ?」
「ううん、ノームさんだね。ほら、そこら中にグノームさんもいる」
俺が適当に言った精霊さんをリュディーが訂正して来る。土の精霊はノームさん、女性型はグノームさんと。覚えておこう。
「そっか。土だからドライアドさんじゃないんだ。やっぱり世界樹があるからいろんな精霊さんが活発なんだ」
戻ろう。後は精霊さんに任せれば良いだろう。この分なら三日もすれば、良い土に変わってるだろうからね。今日は、お魚さんでスープを作った。
獣や魔獣の脂身で作ったラードでフリッターとかフライも作った。朝作ったパンの残りに挟んで、世界樹から取ってきた何の卵か分からない物でマヨネーズを作り、刻んだ卵とお新香、少量のハーブを和えてタルタルソースも作った。
当然肉も焼いたし揚げた。明日の朝食の分。最近スープは、常に煮込むようにしているので出汁がたくさん取れている。問答無用で風呂に拉致されて、キレイキレイにされる。
体くらい自分で洗うと言ったんだけど貴族になったんだからその内メイドさんに洗われる様になるから練習とか言われた。
確かに大貴族や皇族なんかは、メイドが洗うらしいけど貧乏貴族はそもそも風呂に入らない。うん、逆らっても勝てないからされるがままだけどね。
前に逆らったら四人に手足を押さえられて磔みたいになりながら洗われた事があるよ。黒歴史だ。なんか女子が固まって何やら話してるな。ほっといてくれるなら良いか。
◇ ◇ ◇
「・・・みんな今日は練習します」
「昼の件だな。アンジュ順番だぞ。全員で補助だ。どうだ?」
「なかなか、補助がいると恥ずかしいですが現状一部屋しかないですからしかたありません。一番槍はどなたで行きますか?」
皆の視線が私に向きます。言いだしっぺは私ですが、一番槍はなかなか根性が要りますね。どうしましょう。
「ど、どなたか経験者はいませんか? お、お手本があると助かります」
「「「・・・」」」
「まさか、マイヤあなたでも未経験ですか?」
「な、なんだ! そのまさかとは!? これでも身持ちは硬いぞ。それにお前たちと知り合った時は私だって小娘だったろうが! あれから女だけでやって来たんだから、経験してる訳ないだろう!」
「声が大きいですわ、マイヤ。確かにそうでわね。リュディー、あなたもですの?」
「えへへ。人間だともういい年だろうけど、エルフではあたしはまだ幼子扱いなんだよ。それにエルフ達は淡白だからね。そういうヤルルーシカは貴族だったんだから房中術? 習ってないの?」
「習ってはおりますわよ。初歩だけですけど」
「ねえ、ねえ。なんで僕には聞かないの?」
「「「ええ~!」」」
「みんなシ~。サラに気付かれますわ。その、ミヤはもう経験者だったの? いくらなんでもそれはないでしょ?」
ヤルルーシカが皆を嗜めながらミヤに確認をする。
「うん。ないよ。でも仲間はずれは嫌だな」
紛らわしい事をミヤが言い出しましたが、案の定未経験者でした。
「・・・ここは言いだしっぺのアンジュが行くしかないだろう? ほら娼婦のアンナ姉さんが色々教えてくれたじゃないか」
「くっ。仕方有りませんね。それで練習はどこまで? アンナ姉さんは凄いことまで教えてくれていましたが」
「「「・・・」」」
全員が黙りこむので、仕方がないです。アンナ姉さんが教えてくれた初級編を想定しておきましょう。
「分かりました。さ、触る程度に抑えておきましょう。でもアンナ姉さんからは男の子は途中で止まらないと聞いています。さ、サラには満足できるとこまでやっちゃいましょう。いかがでしょう?」
「ま、待て! さ、サラとて初めてのはずだ。あまりトラウマになる様なことは不味いぞ」
「ええ、分かっています。ちゃ、ちゃんと雰囲気も作りも大事だとアンナ姉さんが言っていましたし、お、お姉さんですからね。ちなみにみんなに聞きますが、フィニッシュは口だと思いますか?」
「きゃー。アンジュったら。僕もうドキドキしちゃうよ。アンナ姉さんは胸とか両方も使うとか何とか言ってたよね」
この耳年増のミヤは、ちゃっかりアンナ姉さんの話を聞いていたようです。
「ぼ、房中術では、その、お、お股で挟んでなんていうのもありです?」
「え、エルフはそんなことしないよ! ええ~、あたしは最後にしてよ。勉強してからにするよ。」
むっつりのヤルルーシカが爆弾を投げ込みました。普段ぽや~っとしている割に食い付きが良いですねこの娘は。
「ま、まあ、それはどこを使うかは任せるが、たぶん若いから一回じゃ収まらないだろうから徐々にランクアップしていけばいいだろう。その前にきっと女の体に興味があると思うぞ」
「くっ。レベルが高いですね。どこまで見せればいいのですか! まさか、触らせるのですか!?」
「なに言ってるんだよ。もちろんだよ。舐めても良いんだから! アンナ姉さんは言ってたもん」
「「「・・・」」」
予想外でした。思った以上にアンナ姉さんの仕込みが良かったのかミヤが私以上に聞き込んでます。
なんだかんだ湯船での女子トークが盛り上がったので、そのまま全員のぼせたのはここだけの話です。いつ決行するかは、そ、そのうちですね。




