第二章第六話 大きな小鳥さん?
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第二章第六話 大きな小鳥さん?
ようやくのことで拠点に辿り着いた俺達一行は、愕然としていた。あれだけの苦労をして築いた我らのお家がぺしゃんこに潰れていたのだ。
いくら俺達でもここまでぺしゃんこに潰された拠点を想像もしていなかった。呆然としてしまっていたとしても仕方がないだろう。それほどの衝撃を俺達は受けていたのだ。
一番に回復したのはやはりアンジュだ。元の姿も作るための苦労も知らず、話だけだったから衝撃の度合いもそれに比べて小さくてすんだのだろう。
「ど、どうして潰れてるのでしょう。物の見事にぺしゃんこですね。なんか土台を失敗したのでしょうか」
「・・・土台に問題はないと思う。土台が崩れたのなら上から潰されてないなら屋根の三角形は残っていると思う。でも屋根も潰れているから上から潰されたんだと思うわ」
アンジュの疑問にヤルルーシカが的確に状況を見て取って答える。
「長老に注意されたこの大森林で気をつけなきゃいけない魔獣は二つ。一つは既に撃破したグレーハウンドウルフ、そしてもう一つはバイカルベアだ」
「じゃあ、バイカルベアが僕たちがいない間に襲撃して来てお家を潰しちゃったの?」
「・・・いや、バイカルベアも大きい事は大きいはずだけど、家をここまでぺしゃんこに潰せるほど大きくなかったはずだ」
「そうね、これどう見ても何回も踏んづけて平らに潰したって言うより、一撃でぺしゃって言う感じに見えるわね」
ミヤの疑問にヤルルーシカ、マイヤともに否定的な意見だ。
「あ、お風呂残ってる。どういうことかな?」
そう、隣接している家はぺしゃんこなのにお風呂はそっくりそのまま形が残っていたのだ。
「もう少し接近して、詳しく見てみましょう。アンジュ、ミヤ警戒を最大限、お願い」
「うん。もうしてるけど、近づいてみる?」
全員が頷く。慎重に歩を進め拠点の残骸に一歩一歩近づいて行く。全員が武器を構え油断なく周囲を警戒しながら近づいてみると惨状はなお明らかになって行く。
中央部分の屋根を中心に一気に押し潰した様な感じで潰されており、左右の外壁はその梁にかかった荷重で潰されているようだった。
そして一枚の羽毛が残されていたのだ。とてつもなく大きな羽毛が。
「これ・・・とり? 羽毛なのにサラ位有るよ」
「これではっきりしたな。拠点を潰した未知の魔獣がまだいる。それもバイカルベアより恐ろしい魔獣だ。今の私たちならバイカルベアでも撃退できると思う。けどこの羽毛の持ち主はどうだろう」
「少なくてもあたしの弓じゃ、斃せそうにないわね~」
リュディーが悔しそうにつぶやく。
「サラの石弾でもあっさり羽毛に受け止められてしまうかもしれん」
「誰かこんな羽毛を持った魔獣に心当たりは有りませんか?」
ヤルルーシカが皆に問いかける。もちろん俺に心当たりなんかない。
「・・・白竜。ホワイトドラゴンは全身をやわらかな羽毛で覆われていると聞いたことがあります。他は思いつきません」
「りゅ、竜~!? 伝説じゃないの! 竜ってホントに居るの?」
「分かりませんね。ここ数百年竜の目撃例はありません。しかし大森林はB級の冒険者が全滅している実績があります」
「「「・・・」」」
リュディーの驚きの疑問にヤルルーシカが鑑定の知識を総動員して応える。
「たは! とんでもない領地貰っちゃったな。さすがに竜がいるとなるとSSS級くらいの冒険者じゃないと対処できないでしょ」
「まだホワイトドラゴンと決まった訳じゃない。ロック鳥も羽毛は持ってるはずだ。どっちにしろロック鳥でも対処不能であることに変わりがないが。ロック鳥ならA級ぐらいでなんとかなるかもしれん」
どうやら周囲にはなにも居ない様なのが判明したので、拠点脇で野営することになった。野営の準備を進めながら話題はドラゴンの事である。
ドラゴン発見の報告だけでも莫大な報奨金が得られるとしてもっぱらお金の話になってる。ぽつりと言う感じでリュディーが自分の腕の匂いを嗅いで聞いて来る。
「今日はお風呂どうする。やっぱ裸でドラゴンに襲われるのは不味いから暫く様子見かな?」
「・・・既に二日入っていないわね。拠点でお風呂に入れるから我慢して来たけど限界です」
「僕も同意見だね。裸でやってやろうじゃないの!」
「・・・そう。じゃあ俺が警戒に当たるからみんなは入りなよ。俺はまだ我慢できるから」
「サラは我慢できても私達がサラの匂いに我慢できません。あきらめなさい」
「・・・さいですか。じゃあお風呂作るよ」
火球水球包みの魔法でお湯玉を作って、湯船に溜めていく。上の湯船には熱めのお湯を入れておいて冷めたら足し湯だ。
水を入れるだけより大分魔力を消耗するがまあ、何とかなった。暗いから見えないとはいえアンジュももう羞恥心は捨てた様だ。だが俺はまだ保持している。
・・・剛力とか怪力とか卑怯じゃないかな。抵抗できないよ。と言うことで皆仲良くお風呂タイムだ。お風呂は良い、寝転がれるからね。
温かいから捉まることもほとんどないし。一人でゆっくりだ。相変わらず湯船の縁に立ったまま全開で森に向かって叫んでるミヤとリュディー。
「ふわぁ~。これですか~。確かに寝転がれると違いますね~。お湯玉とは違う~。で、ミヤとリュディーはいつもああなのですか?」
「うん。何か気持ちいいんだって。解放感があるとか何とか。一応みんな試してみたけど、解放感は確かに味わえるよ」
「ふむふむ。どれ、では私も確かめてみます。・・・・ワォ~ン」
何かアンジュのスイッチが入っちゃったよ。狼系の魔獣が寄ってきそうだから止めてほしい。とりあえず入浴中の襲撃はなかった。
そうだ。今回は資金に余裕があったので石鹸を買って来た。前世の記憶に有る様なふわふわの泡が出来る様な良い石鹸ではないけど久しぶりの石鹸だった。
・・・まあ石鹸の話とかその内するとして夕食より先にお風呂にしてしまったのでお風呂上がりの一杯はちゃっちゃと済ませる。
夕食はまた変わり映えのしないメニューだ。しかたない俺のレパートリーがほとんどないんだから。ん?
よく考えたら俺以外はスープしか作ってない気がする。・・・その内披露してくれるのを待とう。夕食での会話はもちろん今後の事だ。
「明日以降どうするつもりだ。サラ」
「うん。まずは拠点のお家を作り直さないといけないね。申し訳ないけどそれはまたリュディーとマイヤにお願いしようと思う。ミヤとアンジュには周囲の偵察をお願いしたいんだ。それで俺とヤルルーシカは畑!」
「畑~! まだ諦めてなかったのですか?」
呆れた様にヤルルーシカが声を上げる。
「そりゃそうだよ。畑が出来ないと常に父様の所に戻らないと食べるものがなくなっちゃうんだよ。戻ってる内にまたお家が潰れたりしてたら最初からやり直しになっちゃうしここで暮らす事が出来ないじゃん」
「確かにそうですが、獲物を狩ってその交易で暮らすと言うのも手ではないですか? 農耕民族ではなく狩猟民族になるのです」
「・・・なるほど。アンジュが言う事も出来そうだけど、狩猟では養える人間に限りがあるし、経済封鎖をされたらあっという間に飢えて死んじゃうよ。最低限の畑はどうしても居るんだよ」
「ここの領主様も大変ですね」
小さくため息をついてアンジュが人ごとみたいに言う。
「なにを人ごとみたいに言ってるの! 皆もここの従士なんだから。一蓮托生だよ!」
「分かったわよ。明日から畑を手伝えばいいのでしょう」
「イエッス! 皆も初日はそれで良い?」
「「「うん」」」
お風呂は偉大だった。皆がそれぞれ別々に寝だしたんだ。うん。温かいからね。久しぶりに伸び伸びと寝れる様だ。
・・・でも既にお風呂で屈辱的に服を剥ぎ取られてる気もするが、二兎を追う者は一兎も得ずと言う。まずは寝方の改善を優先しよう。
明日の目覚めは爽やかになるだろうことを夢見ながら眠りに就くことにする。
ちゅんちゅん。ちゅんちゅん。小鳥のさえずりが聞こえる。すっごく爽やか。ああ、これだったんだな。俺が求めていたのは! ちゅんちゅん。ちゅんちゅん。
・・・正直になろう。小鳥うるさい。朝からちゅんちゅんちゅんちゅん。何をそんなに騒ぐ必要があるのか!
ガバッと起きて辺りを見回す。世界樹の梢に居る小鳥がさえずっていたようだ。ふん。忌々しい。せっかくの一人寝を邪魔された気分だ。滅多にないんだぞ。一人で寝られるのは!
と思って小鳥を眺めていると違和感に襲われる。なんだ? なにがおかしい?
小鳥が世界樹から飛び立ってこちらに向かってくる。ゴーとか聞こえてきそうな勢いだった。世界樹が大きいから錯覚していたがでかい!
お家くらいの大きさの小鳥だ。いやいや、慌てるな俺。小鳥じゃない大鳥だ。
「敵襲~!!! みんな起きろ!」
さすがはB級冒険者。敵襲と知ると行動が早い。防具を装着する余裕はない。おっとり刀で陣形を整える。状況把握より先に体が動いた感じだ。
「なに? なに? どこどこ?」
「上! 空からだ!」
「ヘ、ヘビースパロウか?」
ブファッとか聞こえてきそうな感じでヘビースパロウが空き地に着地する。そのまま地面をつつきながら餌を探しているようだ。
その動きは雀そのままだ。サイズだけ大幅にアップしているだけだ。
「ヘビースパロウは問題ない。人を襲ったりしない魔獣だ。確か主食は穀物とか木の実とかのはずだ。ビックリさせるな」
マイヤがそう言って構えを解く。
「あれは旨いのか? 狩ることは可能かな?」
「ん? そこそこ旨いはずだ。あれを狩るって? どうやって? 普通は、何十人もで罠を仕掛けてから狩るはずだ。飛ばれたらどうしようもないから地上に繋ぎ止めておかなければ狩れないはずだ」
「・・・あれは害獣、いや害魔獣だ。あれが居たら作物を育てられない。一瞬で食われて終わりな気がする」
「「「・・・」」」
「でもどうやって狩るの? 空飛ぶ上にあの大きさじゃちょっとやそっとじゃどうにもならないよ」
俺の呟きに一瞬皆が沈黙する。ヤルルーシカが慌てて疑問を呈して来た。
「今日の予定は全てキャンセルです。これよりヘビースパロウ撲滅作戦の会議を行います」
俺はそう宣言した。
ヘビースパロウを横目に朝食の準備にとりかかる。野菜スープにパンに焼き肉いつも通り。そろそろ魚を取りに行こう。
「では、これより第一回ヘビースパロウ対策朝食会議を始めます。意見のある方は挙手をして発言して下さい。まず現状を確認したいと思います。では、アンジュさんお願いします」
「現在確認出来ているヘビースパロウは一匹です。体長12m、翼長20m、推定体重2tと思われます。ヘビースパロウには敵意がなく拠点周辺での餌の探索に精を出しています。性格は温厚、こちらから攻撃したとしても逃げるだけと思われます。なお、お家を破壊したのはヘビースパロウと断定されました。羽毛が一致したためです。何気に乗っかったら潰れたと言うのがその真相です。今後の動向ですが、恐らく周りで餌を探索するぐらいで脅威足り得ないものと思われますが、作物を育て出したらその限りではありません。恐らく食べられてしまうものと思われます」
「ありがとう。アンジュさん。では諸君。以上を踏まえて活発な意見を求める」
ミヤが手を上げる。
「はい、ミヤさん」
「え~と。ヘビースパロウはほっとくのが良いかなと思います。特に被害は有りませんので」
「却下です。はい、ヤルルーシカさん」
「で、では、天敵となる魔獣を放ちましょう。スカイスネークなどは如何でしょうか」
「却下です。我々が捕食されてしまいます。はい、リュディーさん」
「じゃあさ、追い払おうよ。あたしが弓でびゅんてすれば逃げるよきっと」
「・・・他に意見がなければリュディーさんの意見を採用したいと思います。全会一致で可決となります。リュディーさん頑張って下さい。残りの者は、お家を再建しながら待っています」
まずは瓦礫の撤去だ。剛力持ちが次々と運び出す。使える材木と使えない材木に仕分けるのは怪力持ち達が行っている。
俺は使えない材木を薪にするために斧を振るっている。あらかたの材木を撤去し終え、前回に残していた物の残骸も廃棄する。
ほぼ何も残らなかった。鉄製品は変形してしまっているので、再加工に回す事にする。
小一時間ほどして晴れ晴れとした笑顔でリュディーが戻って来た。ヘビースパロウの追い払いに成功した模様だ。さらに小一時間ほどして俺の前には地面を啄ばむヘビースパロウがいる。
「・・・」
「てへ」
「第二回ヘビースパロウ対策昼食会議を始めます。リュディーさん結果報告をお願い致します」
「あの、その、あたし弓でヘビースパロウを追い掛け回して追っ払ったと思ったんだけど、気にしてなかったみたい」
「・・・残念な結果に終わりましたが、ご苦労様です」
「へへ」
「では次の対策を求めます。意見のある方は挙手してから発言をお願い致します。はい、マイアさん」
「あ~! もう。その鬱陶しい平板な声は止めろ! サラ! もう残りは討伐するしかないだろう」
「その言葉を待っていました! では、どのように?」
「罠で捕えるしかあるまい。幸い世界樹に巻きついている蔦なら丈夫なはずだ。そいつを利用すればいい。直接引っ掛けるかまたは餌でおびき寄せるかだろう」
「・・・他に意見がないようでしたら、マイアさんの意見を採用したいと思います。全会一致で討伐を可決します。皆さん頑張りましょう」
こうしてヘビースパロウ討伐戦が開始されることになった。




