【誰様ヒーロー】MISSION1 スマイルフォアミー【白青】
知人からのリクエストにて書いたもの
ほんのりとですが虎×龍表現含みます。腐向け注意
こちらではLOVEですが本編はLIKEです
もう一度笑ってほしいから
俺はヒーローになるよ
超えられない壁があるから
俺はもがくんだ
「龍太郎!」
「…なんだよ虎壱」
「ゴメン、課題写させて!」
「はぁ…?百円な」
「お金取るんだ?!まあ天才のノート一冊なら安い……」
「馬鹿、一行百円」
「にゃあぁぁあぁぁぁあ!!!」
他愛も無い会話だけど龍太郎は笑う
こうなるまでは結構龍太郎は荒れていた
だから…少し思い出したんだ。あのときのお前を
いつからだっけ?
龍太郎が俺の事を虎って呼ばなくなったのは
いつからだっけ?
いつのまにか泣き虫な男の子じゃなくなったのは
いつからだっけ?
龍太郎が笑わなくなったのは………
◇
龍太郎が変わったのはあの日からだ
幼稚園の年長ぐらいの時、俺がまだ暴れん坊だった頃…その時の龍太郎は酷く泣き虫だった
「ねぇ……さん。龍太郎君…見なかったかしら?」
ある日幼稚園から龍太郎が居なくなった
先生達が慌てて探し回っていたけど見つからなかった
「何処に行ったのかしら。いつも…。あら、龍太郎君いつも誰かと一緒にいたけれど…誰だったかしら…?」
先生達が龍太郎が事件に巻き込まれたのかもしれない…と騒ぎ出した頃龍太郎はふらりと戻ってきた
……今まで見た事の無いくらい泣きじゃくりながら
「りゅうた………。………」
普段なら軽く小突いて「男なんだから泣くな!」なんて言えたけど、幼い俺はそんなこと出来なくて隣りに座るしかなかった
今の龍太郎になるにはその日からそう時間はかからなかった
小学校に上がった時にはもう笑わなくなっていたから
喧嘩はまだしなかった…けど、実際は違ったんだ
その身体の中にひっそり息を潜めていたのは…龍だったんだから
でも気付いていたのに側にいたのは…俺が守らなきゃいけないから
…誰と約束したんだっけ…?
忘れちゃいけないはずなのに思い出せない
龍太郎の中の龍が暴れ出したのは中学校になって
俺の前でいきなり現れて暴れだした
「オイお前!」
俺たちのいた中学校はお世辞にも校風が良い訳じゃなかった
だからガラの悪い不良も多い
「………」
そのうちの一人が入学式が終わった後絡んで来た
理由は…ええと確か挨拶しなかったから?
んなもの無茶苦茶すぎる
しかも何の因果か喧嘩を売ったのがたまたま龍太郎だった
「……!お前いい加減に…」
先生の制止なんか結局いらなかった
一撃。そう一撃で倒したんだから
「五月蠅いんだよ」
感情も情けも何にも無い冷めた眼で龍太郎は先輩を見る
流石に止めようとして俺は声をかけた
「おい、りゅう…た…」
「虎壱、五月蠅いんだよ」
「…………え?」
「よっわ。何?コイツ。誰?先輩?」
拒絶はされて無い…筈だ
けど何か俺の中に亀裂が入った
なんで?なんで…?
お前何時からそんなだった?
あのとき何があった?
何がお前をそうさせた?
なあ…なんであのときお前は『お兄ちゃん』なんて言って泣いてたんだ…?
俺は周りを見渡した
どうするべきだ?
顔を引きつらせて見ている方にまわるべき?そうしたら俺は最低限平穏な学校生活を送れる
だけどそんな考えは龍太郎を見てすぐに消えた
無表情で無関心で壊れそうな硝子みたいな後ろ姿を見たら…表情を見たら守らなきゃって思った
「…だよなぁ!ハハハッ先輩?弱ッ!」
笑う
嗚呼、いいさ。悪者になってやる
嫌われ者のヒーローになってやる
だから近付くな。傷付けるな
守るんだ。これからずっと…龍太郎のヒーローは俺なんだ
◇
学校生活で日が経つたびに龍太郎は更に荒んでいった
喧嘩は売りはしないけど売られたら買う
いつのまにか青龍って仇名がついていた
誰とも仲良くしたがらないし学校を脱走したり欠席も目立つ
それを見ていられなくて俺はウザがられても付き纏う事にした
◇
「おはよーっ龍太郎!」
「……………」
勝手に玄関を開けて龍太郎の家に上がり込む
そこには寝間着代わりのジャージ姿で不機嫌そうな龍太郎がいた
「……何?」
「まだジャージ?もう朝だけど。制服着替えて!あー…朝食もまだ?じゃあ作っとくからその間に身支度終わらせて!軽いので良いだろ?何か食べたいのある?」
「はぁ…?……今日は休む」
そうきたか
まあ何時もの事だ
俺はニッコリ笑う
「仕方無いなあー」
龍太郎の手首を掴んで龍太郎の部屋まで引っ張っていった
「自分で着替えられないんだね?」
少しだけ龍太郎の無表情が引きつった
ジャージの襟に手を掛ける
「はい、じゃあ脱いで」
俺はまたニッコリ笑った
◇
「………」
ムスッとした制服姿の龍太郎がモソモソと朝食を頬張る
どうやって着替えさせたか?
想像に任せるよ
龍太郎が朝食を食べ終わる。そしたら龍太郎の鞄を本人の前に突出した
「ほら行くよ。遅刻だぜ?」
「…休む。寝る」
鞄を龍太郎に押し付ける
「無理矢理連れてくから問題ない」
そうして毎日制服の裾を掴んでグイグイ引っ張りながら通学路を歩く
「おい…!はなせ…!」
「放したら逃げるだろ?」
「……。でも…」
声に段々苛つきが混じり始めたけど俺は気にせず引っ張る
ここで放したら龍太郎は絶対帰って来てくれない気がしたから俺は毎朝龍太郎を学校まで引っ張って行く
休日の夜に町を徘徊していたら連れ戻す
そんなことばかりしていた
◇
そしてそれがもう何ヵ月も続いたある日、俺は上級生から『呼び出し』を貰った
「お前さぁ、少し目障りなんだよね?」
ガラの悪い上級生が目障りな笑顔で見てくる
何人いる?
そっと拳を握った
大丈夫、大丈夫…まだ、我慢できる
「青龍とお友達になれば強くなれると思ってんの?」
…嗚呼。吐き気がする
大丈夫だから。今、堪えれば龍太郎に心配かけないから
頼むから白虎、まだ我慢してくれ…!
「…大体青龍もこんな奴みたいなのと付き合ってるとか、有り得ないよな…ハハッ友達?」
目の前が真っ白になった
ゴメン龍太郎
やっぱ無理
「いい気になって、図にの……」
「はぁ?」
そう吐き捨てたのは覚えている
あとは身体が勝手に動いた
お前らに何がわかる?
今までやってきた事の何を知ってる?!
何を知ったら全否定できる?
馬鹿にするなよ?俺は……
「虎壱!」
「ッ!……あ……」
龍太郎の声で我に返ると俺を囲んでいた上級生はもう一人二人しかいない
後は全員気絶していた
残りの奴も俺が見ると蛙みたいな声で逃げて行った
「…龍太…郎…」
俺は呆然としたまま声を絞りだす
龍太郎は突然下を向くと踵を返して走って行ってしまった
「龍太郎!」
そんな…なんで…?
俺は訳が判らないまま龍太郎の後を追った
◇
「龍太郎!」
龍太郎は学校からかなり外れた河原の橋の下にいた
誰からも丁度死角になるそこは龍太郎が一人になりたい時にいる場所だった
「龍太郎…」
「………。虎壱」
気まずいまま声を掛けると龍太郎は振り向いて俺を見る
キッと睨み付けられた
「もう一緒にいなくて良いから」
「…え?」
言葉の意味が判らなくて聞き返した
「お前、いなくて良いよ」
動けなくなった
やめろよ…聞きたくない。その先を…聞いたら駄目なんだ
「さっきの…俺のといたからだろ。…お前もあそこまでキレるんだな。知らなかった。…だから余計な迷惑かけるよりお前と縁切った方が俺はマシだ」
頭を殴られた気がした
なんだよ…なんなんだよ…お前…そんなんで…そんなんで…
「いいのかよ……」
龍太郎は感情を押さえた震える声で言った
「俺のせいで怪我されるよりマシだ。…それに迷惑をかけたくない…」
俺は我慢できなくなって叫んでいた
「…ろよ…かけろよ!迷惑かけろよ!」
「ッ…!?」
「お前のせい?嗚呼そうだよな!だってお前何にも話してくれねーもん!迷惑かけない方が迷惑なんだよ!」
俺はその勢いのまま龍太郎の所に走って行って胸倉を掴む
「お節介かけてぇんだよ俺は!ざけんな!」
そこまで叫んで肩で息をすると龍太郎が同じ様に胸倉を掴んで叫んできた
「ふざけてねぇよ…!お前も…皆忘れただろ!?忘れられたんだろ…?!アイツの事!……俺だけあの頃のままで!なんで、お前もあいつらも…皆俺を置いて行くんだよ…!」
「…忘れた………?」
「龍夜だよ!楠河龍夜!俺の兄貴だよ…!」
泣きそうな声で叫んでくる
…なにか忘れている?
俺はなにを忘れている?
約束は…約束した奴は…
「……じゃあ、君は龍ちゃんの…ヒーローだね。僕は…もう守れないから、君が守ってよ虎ちゃん」
楠河…龍夜…
そうか、約束したのは龍太郎の『お兄ちゃん』だ
なんだか胸の中に残った蟠りが解けた気がした
胸倉を掴んでいた手をゆっくりと離す
「……。俺は忘れないよ…。龍太郎」
「え…?」
なんで忘れてたんだろう
なんで忘れられたんだろう
こんな大切な事なのに
「龍太郎、俺はお前を守りたいんだよ。約束したから…俺は龍にぃと約束したから。今の龍ちゃんのヒーローは俺だよ?」
だから、迷惑かけて。君を守らせてよ
「………」
今まで無表情だった龍太郎の顔が少し歪んだ
泣きそうな弱虫龍ちゃんの顔…俺のよく知った顔だ
「虎…壱…」
「俺はお前にウザがられても付き纏う。…ってストーカーかよ。…でも俺はヒーローになりたいんだ」
「…お前うざい……」
「はにゃぁっ!!?」
はっきり言われましたー…
俺は真っ白になってペラペラの紙みたいにフラーッと後に倒れ込む
「………でも、ありがと……虎…ちゃん…」
「にゃ…?!」
気が…魂が抜けていたら上から龍太郎がギュッと抱き付いて来た
俺は直ぐに正気に戻る
「うぁ…虎ちゃああん……」
龍太郎は…いや、龍ちゃんはそのまま泣き出してしまった
「にゃあぁぁあぁぁぁあ!いやぁ!何か俺泣かす事した!?」
「…してない…けど…っ…」
泣きじゃくる龍太郎をどうしたら良いのか判らなくてとりあえず俺は龍太郎をギュッと抱きしめ返した
そのまま呟く様に言う
「どうすんの龍ちゃん。…きっと何時かは龍ちゃんだってこのままでいらんないんだよ?」
「けど…俺は…楠河龍太郎で…今は青ヶ島龍太郎で…」
涙声で龍太郎は言う
もしかしたら龍太郎はあの日から今と昔の二つの自分に挟まれて…もがいていたのかもしれない
全く…なんで頼ってくれないかなぁ?…龍ちゃん
「今の龍太郎は青ヶ島龍太郎だよ。泣き虫じゃないし、弱くないし。…でも俺んなかじゃまだ楠河龍太郎かな」
「…結局どっちだよソレ…」
拗ねた口調がちょっと可愛くてついつい苦笑いになる
「上手く言えないけど…どっちも龍太郎。だから、俺今の龍太郎…好きだよ」
「…………え」
龍太郎が目を見開いた
その顔のまま呟く
「……それは…like?それともlove…?」
「あ。…えーと…えぇぇえ…ら、ライク?」
語尾が疑問形になった
龍太郎が俺からパッと身体を離してそのまま少し身体を引く
「…お前そっち系…?」
「にゃあぁぁあぁぁぁあ違うぅええええああっ」
俺が叫ぶと龍太郎が笑った
久し振りに見る悪意の無い笑顔
俺もつられて笑う
よかった
俺は
この笑顔が見たかったんだ
◇
「あいたたたたたたた…」
「いきなりなんだよ虎壱…」
「いや、過去の余りの痛々しさに自己嫌悪中」
「何時の話?」
「え?………あ―。教えない」
笑う
大丈夫、今もまだ俺は龍太郎のヒーローでいたいから
俺はずっと好きだよ
だからそこで笑っていてよ
「…仕方無い」
龍太郎が別のノートを頭の上に乗せる
「にゃ?」
「やる。こんな事だろうと思って。暇だったから」
悪戯が成功した時の笑顔だ
嗚呼もう
やっぱり龍太郎には勝てないや




