第6話
余命一ヶ月の私にとってこの一ヶ月はあっという間だった。毎日毎日同じ事の繰り返しだったから当たり前かもしれないけれど…。
ツーツーと言う心拍音が聞こえてくる。今の私はいつ死ぬのか分からない状況らしい。でも、きっと明日には死ぬんだとなんとなく予想した。なぜなら今日、久しぶりに悪魔がいるからだ。
「もう体が弱って話せないだろ」
うっすら目を開けている私は確かに話す事はもうできない。意識だって少しふわふわとして曖昧だ。
「この前言ってた事の答え、教えに来たんだ。今の状況、わかるかい?」
分かるも何も話せない。仕方なく首をふると悪魔はニヤリと笑った。それはまるで悪巧みを企む子供の笑顔と似ている。
「君は盲目の少女だよ。いつ終わるかも分からない相手との関係を望んだんだ。
”たった一つしかない願い事”を」
それでもどの道この悪魔のモノになるのだからその願い事だっていいじゃないか。ほっといてよ。反論したい気持ちをぐっと抑えて私は呼吸器の中で唇を噛み
締めるしかなかった。
「だから笑ったんだよ。君が三谷と付き合いたいって言った時に。ホント、若いっていいよね。恋すると周りが見えなくなるんだから」
もうやめて欲しかった。こうなったのは私の不注意だったのに、そう言われると悠と付き合った事が間違いのように感じて来る。
「泣いてるかい?でも言ったはずだよ。それは君が望んだ事なんだよ。まぁ…でも三谷の性格からしてアタシが魔法を使わなくても告白はオッケーしてもらえたと思うけどね」
悪魔の意外な言葉に思わず目を見開いた。その反応が面白かったのか悪魔はケラケラと笑っている。何それ…じゃぁ願い事なんて意味ないじゃない。私が勇気を出せたらそんな事しなくても事は終わってたんだ。おまじないなんかに頼るんじゃなかった。自分でやればもっと結果は変わってたのに…。彩香の頭の中は後悔の堂々巡りが続いた。その間も悪魔は彼女の近くで責め立てるような言葉を言い続けるのであった。
「ははっ、所詮人間は目先の欲にしかとらわれない可哀想な生き物なんだよ。ねぇ彩香、君は明日死ぬんだ。後悔しながらね」
悪魔はそういうと姿を消した。彩香はどうにもできない怒りと後悔に頭を悩ませながら、結局一睡もできずに彼女は自分の命日を迎えた。
「彩香…っ、死なないで。お母さんを置いていかないで」
「彩香っ!」
母に掴まれた腕が痛かった。父の声が頭に響いた。だけど、私は返事する事もできず、ただ一人これからの死についての恐怖で体が震えた。
目を凝らせば悪魔が部屋の隅に立っているのが見えた。隣には大きな鎌を持った男の人が見える。あれが以前悪魔が言っていた死神ってやつなんだろう。
「ごめん…なさい…」
許される事ではないと彩香は知っているけれど、怖くなった彼女はそう呟くしかなかった。
「実に滑稽な姿だね」
死神にそう笑いかける悪魔は君もそう思うだろと話している。滑稽か。確かに悪魔からすれば私は絶好のカモだったんだろうな。
「君の望む願いは叶えた。そろそろ来てもらうよ、哀れな盲目少女」
悪魔は止めを刺すようにそういうと、死神にアイコンタクトをした。死神はそれを合図に私の首に鎌を持って来る。目の前の鎌の刃は私にとって恐怖でしかなかった。
「最後に思い残す事は?………まぁ、話せないんだったら意味ないんだけどね」
目を開けたままの状態で彩香は死神によって切られた。それは小さいながらにも恐怖と戦う彩香の姿勢だった。
「さて、そろそろ行こう。死神君」
悪魔は腕時計を見て時刻を確認すると歩き出した。そしてチラリと彼女の方を見て言った。
「勇気も恋も自分でやらなきゃ意味がないんだよ、彩香」
短いお話でしたがお付き合いありがとうございました。
小説家になろうを使ったのはこれが初めてで色々と間違ったりもしましたが、最後まで書く事ができて楽しかったです。
アクア




