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契約した盲目少女と悪魔  作者: アクア
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第1話

ツーツーと鳴る機械の音と彩香を涙目で呼ぶ人の声。

うっすらと開いた瞼から見えるのは彩香の家族と専属の医師と看護師。

そして、にっこりと笑う悪魔がいて隣には大きな鎌を持った死神。

彩香は周りの人間の話しに耳を傾ける事はできなかった。それどころではなかったのだ。

彩香は震える唇を一生懸命に動かして悪魔に言った。


「ごめん…なさい…」


震えた声はすぐに機械の音でもみ消される。だが悪魔達には聞こえていたようでそんな彩香の姿見て


「実に滑稽な姿ね」


そう笑顔で言うと隣にいる死神に話しかけた。会話が聞こえない彩香はいつ自分が殺されるのか不安で仕方なく、涙が止まらない。悪魔達の事を知らない家族は涙目で震える彩香の手を必死に握り、話しかける。


「彩香っ、彩香っ、行かないで……!」


握る手には家族の涙がかかり、必死に名前を呼ぶその姿は周りの医師や看護師から見るととても悲しい様子だった。しかし、医師や看護師は先ほどから彩香が家族の事を見ずに病室の端ばかりを見ている事に疑問を持った。なぜあれほど必死に呼ばれているのにこの子は見向きもしないのだろう?と。


ツーツーツ―――――


鳴り響く心拍停止の音。蘇生作業にかかる医師。しかし心拍は戻らない。

家族は涙声を上げながらなんども彩香の手を、肩を握った。


「先生っ、彩香は死んでませんよ!だってほら、見てください。目を開けています」


この状況で混乱した母親が医師にすがりつくようにして叫んだ。

医師は困ったような表情をしつつ、目に光を当ててみたがやはり彩香は死んでいた。

事故の時はまだしも、病室で死ぬのになぜ目を開けたままなのかは医師には理解できなかったが

彼女が死んでいるという事だけは明確な事実だった。



*****



学校で、私は好きな人がいた。だけど私はその人に話しかける勇気もなくて、彼を視界の端に入れるだけで精一杯だった。いつかは挨拶をしたい。いつかは話しをしたい。願望はいくらでもあったのに前に進めない。

そんな私はちょっとした好奇心も含めネットで『恋愛のおまじない』というものをしてみる事にした。

大抵、こんなものは意味がない事もわかっているけれど、ちょっとでも自分に自信をつけるために、と

私は【絶対に恋が叶う方法】と書かれたなんとも胡散臭いサイトをクリックしてしまったのだ。



「へぇ…なるほど」



簡単なおまじないは家にあるものでできるようなものだった。よし、これをしてみよう。

キッチンや倉庫から材料を集めてサイトに書かれた通りの手順で進めていく。


「えーっと…これで…完成?」


できた魔法陣とその周りに置いた食材。これで完成というのはなんだかうまくいった気分になれない。

はぁ…。やっぱりおまじないに頼ったって意味ないかぁ…。夜も遅かったため私はもう寝る事にした。

食材とかは明日早起きして片付ければいいだろう。



翌日



朝、二度寝したい衝動を抑えて起きると部屋に誰か知らない人がいた。おかげで二度寝したいという気持ちはなくなり、パッチリと目が開いた。誰?もしかして…空き巣?それとも泥棒?怖くなって布団をかぶろうとした瞬間、ガタっとめ目覚まし時計が落ちてしまった。

しまった…!思わず目をつぶり、身を小さくした。



「名前は?」



いきなりの質問に思わず固まった。何?名前?名前なんて聞いてどうするの?まさか誘拐?

思考をぐるぐるとさせつつその誰かを見ると、その人はいつの間にかベッドに座っていて顔を覗き込んでいた。


「ひぃっ!」


驚いて悲鳴をあげてしまった。どうしよう、殺される!?



「そんなに怯えないでくれるかな?名前を聞いてるんだよ」


「いや…えっと…。あ、貴方はどなたですか?」


とりあえず見ず知らずの人には名前を教えたくなかったため聞いてみる事にはしたが

これでもし、空き巣や泥棒なんて返答が来たら私はどうすればいいんだろう。


「いや、昨日私の事呼んだの貴方でしょ?」


昨日?呆れたその人を見ても何も思い出せない。それに呼ぶって…貴方の事なんて私は全く知らないのに…。


「えと…人違いでは?」


「いや、そこに魔法陣があるでしょ」


キレのいいツッコミを入れられ、私は唖然とした。

これは…おまじないの魔法陣じゃなかったの…?


「まぁ、間違いにしたって呼んだ時点で契約成立だから」


「はい!?け、契約って…なんの…?」



怖くなってその人にすがりつくとその人はニヤリと口角を上げていった。



「貴方の願い事一つだけ叶えてあげる。でもその代わり、死んだら私のモノよ」



何言ってるんだろう、この人。それが一番に思い浮かんだ。



「あ、ちなみに願い事を増やすって願い事はダメだからね」


「いえ…あの、意味がわからないです」


「だから、さっきも説明したけど…」



いや、そういう意味じゃなくて。そんな事は今はどうだっていいの。



「貴方は一体誰なんですか、人の部屋入っておいて…。警察呼びますよ」



近くにあった携帯を持って、脅すつもりでそう言うとその人は吹き出すように笑いだした。

どうしよう、どう接していいのかわからない。



「本当にわかってないみたいだね。じゃぁ自己紹介するよ。私は悪魔。貴方と契約を結んだ悪魔よ」


「…いえ、あの…そういうのはいいんで…。ちゃんと自己紹介してくれませんか」


「したじゃない。まさか信じてないの?」



また笑い出すその人は本当に悪魔なのかはわからない。

っていうか、悪魔ならしっぽとか角とか生えてるんじゃないの?この人…生えてないよね?

それに明らか人間って感じだし…。


「じゃぁ願い事を行ってごらんよ。叶えてあげる」


願い事…。あるといえばある。好きな人に話しかける勇気が欲しい。でも…たった一つだけって言うのなら…

もう少し欲を出したくなる。例えこれが嘘だとしてもいいから。昨日のおまじないで出てきたってこの悪魔は言ってるんだ。じゃぁ形は少し変わってしまうけど、自分に自信をつけるためにいいかもしれない。



「じゃぁ…。み、三谷君…。三谷 悠君と付き合いたいっ!」


「へぇ、恋愛かぁ。いいね、青春してるねぇ。見たところ君中学生だよね?」


悪魔は私をからかうように笑った。おかげで恥ずかしくなり、見ず知らずの悪魔に自分の恋愛事情を言った事を後悔した。


「そういえば君の名前を聞いてなかったね。君はなんて言うの?」


「園宮 彩香」


「へぇ、彩香ね。了解、じゃぁ今日から彩香は三谷 悠の彼女だ」



やけにテンションの高い悪魔はそれだけをいうとベッドから降りて「じゃぁっ!また後で」とだけ言うと魔法陣の上に乗って消えてしまった。…本物だったんだ。消えてしまったところを見て私は驚きつつも理解した。

ていう事は…まさか本当に三谷君と…!?いやいや、そんな訳ないよね。そんな訳ないもの。だって私は三谷君と話した事もないのに…そんな事あるわけがない。今日から君は彼女だって言ってたけど、たった一日で変わってしまうのならば、今までうじうじとしていた私はなんだったんだと思う。



「彩香、遅刻するわよ?」



ドア越しに聞こえる母親の声でハッと我に返った。そうだ、学校!今何時!?時計を見れば7時30分をさしていた。ぞっとした。このままだと遅刻だ。



「今行く!!」


焦った私は急いで身支度をして出ていこうとした。だけど、ドアを開ける前にどうしても魔法陣が気になってしまった。もし私がこのまま学校に行ってお母さんにバレたら怒られるし片付けられると思う。なら…どこかに隠しておかないと…。どこ?どこに隠す?あぁもう!なんでこんなに大きく魔法陣書いたんだろう。



「彩香?本当に遅刻するわよ?」



まずい、足音が近づいてる。隠さないと…そうだ!ベッドの下!いや、それだったらあの悪魔が出てきた時にベッドに頭をぶつける。じゃぁベッドの上に置いてシーツで隠そう。



「彩香?」



ガチャリとドアを開けて顔を覗かせるお母さん。よかった。なんとか間に合った。



「い、今から行こうとしてたの!」


「そう?じゃぁ下で待ってるから早く降りてきなさいね。お弁当はもうできてるからね」


「うん」



再び閉まるドア。よかった。バレずに済んだ。あ、そうだ時間!もう一度時計を見ると時間はこういう時に限って早く進むもので、10分も経過していた。ヤバイ。本当に遅刻する!




*******


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