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Spica  作者: 国見炯
7/8

おまけ・カナル視点



 副題・勘違いをし続ける男。




 結局、カレンには会えなかった。

 次の日には婚約を破棄され、かろうじて勘当はされなかったが、リハヤと通じてカレンをふった俺に、婚約話が持ち込まれる事はなかった。

 カレンが学園を去ってから3ヶ月。俺はリハヤに、共になろうと再度告白をした。それに涙を流して喜ぶリハヤ。

 俺にはもうリハヤしかいなかった。リハヤは魔力が高く、子の為には絶好の結婚相手だ。それで両親を説き伏せようと思っていたら、思いも寄らない所から援護が入っていた。

 カレンが俺の両親に、リハヤと幸せになって下さい、と。私は気にしていないから、勘当は止めて下さいと、態々……態々情けをかけて言ってくれたのが大きいのだろう。

 何だその上から目線は。カレンの分際で。何様のつもりだ。

 そしてリハヤと再び付き合い出してから、カレンが次期国王の妃になると父親から聞いた。政略結婚ではなく、恋愛結婚で、殿下から愛されて幸せに過ごしていると。

 何だそれ。何なんだよ。カレンの分際で。カレンの癖に。カレンは俺に尽くして当たり前なのに、幸福? そんなの間違ってる。俺に尽くせないなら、カレンは幸せになるべきじゃないんだよ。カレンだから、それが当たり前だろ。

 それなのに幸せって、そんな現実が間違ってる。

 カレンの癖にカレンの癖にカレンの癖に!!!



「カナル……大丈夫?」


 顔色の悪い俺を心配そうに覗き込むリハヤ。


「あぁ。大丈夫だ」


 俺にはもうリハヤしかいなかった。たった1度の過ちで、俺はカレンを失った。

 リハヤの所為で。カレンと結婚していたら、俺の将来は約束されていたのに。そのただ1度の過ちで俺を捨て、学園を去ったカレン。

 俺に尽くす事が至上の喜びであるはずのカレンが、俺の元から去った。あの時、雰囲気は変わったが、カレンを呼び出した召喚獣が、カレンの元に行ってやろうとする俺の前に現れた。

 宙に浮かびながら俺を見る。


「アンタって本当に自分勝手だな」


 突然そんな事を言ってくる。

 俺を愛して尽くしているのを喜んでいるカレンを、態々俺が選んでやっているんだから、何が自分勝手なのか意味がわからない。

 カレンにとってみたら、涙を流して喜ぶ事だろ。


「それが自分勝手なんだろ。まぁ、言っても無駄なんだろうな。

 とりあえずカレンは家に戻した。もう会う事はないから諦めとけよ。

 俺の言いたい事はそれだけだ。じゃーな」


 自分の言いたい事だけ言って、そこから消える召喚獣。召喚獣の癖に生意気な。誰に口を聞いたと思ってるんだよ。

 あぁ。気分が悪い。


 ギリ、と歯を食いしばる。あんな奴等、不幸になればいいのに。

 俺に尽くせないカレンなんて、生きている価値なんてない。

 死ねば良いのに。生きている価値がないんだから。

 けれど死ぬどころか、カレンはどんどんと美しくなっているらしい。俺は何故かタイミングが合わなくてあえないが、他の奴等が言うのを聞いているとそうらしい。

 そして学園を辞めたわけではなく、もっと上のランクの学園に転入したという事を聞いた。

 気に食わない。あぁ、気に食わない。何もかも。





「リハヤの存在を両親に認められて嬉しかったんだ。

 これで堂々と、リハヤと一緒にいられる」


「手紙の内容……それだったの?」


「あぁ」


「──ッ。嬉しい。カナル大好き」


 感極まって泣き出すリハヤ。面倒なんだよな。泣いている女を慰めるのって。

 けれど、俺が勘当されずに結婚出来るのはリハヤだけ。

 それ以外だったら、俺は勘当されて不安定な職について、苦労するだけだ。ここで妥協するしかない。

 少なくとも、俺の周りにリハヤ以上の女はいないんだからな。

 家柄はつり合わないし、俺より見劣りするし。足りなさ過ぎるが仕方ない。魔力が強ければ、魔力の高い子が生まれる。そうすれば、子供が出世する可能性が高くなる。だから、リハヤで妥協するしかない。

 納得は一生出来ないだろうけどな。

 そう思いながら、俺はリハヤを抱きしめながら背中を優しく撫でてやる。

 リハヤはこうすると、俺の体温で気持ちが安らぐのか、うっとりとした表情を浮かべて俺に身体を預けてくる。

 俺はそんなリハヤをベッドの上に抱き上げてつれていくと、リハヤが両手で顔を覆った。何回もしたけど、まだ恥ずかしいという感情が勝るらしい。俺からみれば既に慣れた行為だが、女はよくわからないな。

 

 今はリハヤしかいないから、優しくしてやる。

 その恩を忘れず、俺に尽くせよ。そうしたらこうして愛してやるから。

 勘違いして図に乗ったカレンとは違って、お前の欲しいものはくれてやるよ。

 リハヤだけだからな。

 今の所は。


 けれど、俺に相応しい人間は他にいるはず。

 俺が愛するに相応しい女はまだ、現れていないだけだ。



「リハヤ」



 そいつが現れるまで、優しくしてやるよ。








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