おまけ・カナル視点
副題・勘違いをし続ける男。
結局、カレンには会えなかった。
次の日には婚約を破棄され、かろうじて勘当はされなかったが、リハヤと通じてカレンをふった俺に、婚約話が持ち込まれる事はなかった。
カレンが学園を去ってから3ヶ月。俺はリハヤに、共になろうと再度告白をした。それに涙を流して喜ぶリハヤ。
俺にはもうリハヤしかいなかった。リハヤは魔力が高く、子の為には絶好の結婚相手だ。それで両親を説き伏せようと思っていたら、思いも寄らない所から援護が入っていた。
カレンが俺の両親に、リハヤと幸せになって下さい、と。私は気にしていないから、勘当は止めて下さいと、態々……態々情けをかけて言ってくれたのが大きいのだろう。
何だその上から目線は。カレンの分際で。何様のつもりだ。
そしてリハヤと再び付き合い出してから、カレンが次期国王の妃になると父親から聞いた。政略結婚ではなく、恋愛結婚で、殿下から愛されて幸せに過ごしていると。
何だそれ。何なんだよ。カレンの分際で。カレンの癖に。カレンは俺に尽くして当たり前なのに、幸福? そんなの間違ってる。俺に尽くせないなら、カレンは幸せになるべきじゃないんだよ。カレンだから、それが当たり前だろ。
それなのに幸せって、そんな現実が間違ってる。
カレンの癖にカレンの癖にカレンの癖に!!!
「カナル……大丈夫?」
顔色の悪い俺を心配そうに覗き込むリハヤ。
「あぁ。大丈夫だ」
俺にはもうリハヤしかいなかった。たった1度の過ちで、俺はカレンを失った。
リハヤの所為で。カレンと結婚していたら、俺の将来は約束されていたのに。そのただ1度の過ちで俺を捨て、学園を去ったカレン。
俺に尽くす事が至上の喜びであるはずのカレンが、俺の元から去った。あの時、雰囲気は変わったが、カレンを呼び出した召喚獣が、カレンの元に行ってやろうとする俺の前に現れた。
宙に浮かびながら俺を見る。
「アンタって本当に自分勝手だな」
突然そんな事を言ってくる。
俺を愛して尽くしているのを喜んでいるカレンを、態々俺が選んでやっているんだから、何が自分勝手なのか意味がわからない。
カレンにとってみたら、涙を流して喜ぶ事だろ。
「それが自分勝手なんだろ。まぁ、言っても無駄なんだろうな。
とりあえずカレンは家に戻した。もう会う事はないから諦めとけよ。
俺の言いたい事はそれだけだ。じゃーな」
自分の言いたい事だけ言って、そこから消える召喚獣。召喚獣の癖に生意気な。誰に口を聞いたと思ってるんだよ。
あぁ。気分が悪い。
ギリ、と歯を食いしばる。あんな奴等、不幸になればいいのに。
俺に尽くせないカレンなんて、生きている価値なんてない。
死ねば良いのに。生きている価値がないんだから。
けれど死ぬどころか、カレンはどんどんと美しくなっているらしい。俺は何故かタイミングが合わなくてあえないが、他の奴等が言うのを聞いているとそうらしい。
そして学園を辞めたわけではなく、もっと上のランクの学園に転入したという事を聞いた。
気に食わない。あぁ、気に食わない。何もかも。
「リハヤの存在を両親に認められて嬉しかったんだ。
これで堂々と、リハヤと一緒にいられる」
「手紙の内容……それだったの?」
「あぁ」
「──ッ。嬉しい。カナル大好き」
感極まって泣き出すリハヤ。面倒なんだよな。泣いている女を慰めるのって。
けれど、俺が勘当されずに結婚出来るのはリハヤだけ。
それ以外だったら、俺は勘当されて不安定な職について、苦労するだけだ。ここで妥協するしかない。
少なくとも、俺の周りにリハヤ以上の女はいないんだからな。
家柄はつり合わないし、俺より見劣りするし。足りなさ過ぎるが仕方ない。魔力が強ければ、魔力の高い子が生まれる。そうすれば、子供が出世する可能性が高くなる。だから、リハヤで妥協するしかない。
納得は一生出来ないだろうけどな。
そう思いながら、俺はリハヤを抱きしめながら背中を優しく撫でてやる。
リハヤはこうすると、俺の体温で気持ちが安らぐのか、うっとりとした表情を浮かべて俺に身体を預けてくる。
俺はそんなリハヤをベッドの上に抱き上げてつれていくと、リハヤが両手で顔を覆った。何回もしたけど、まだ恥ずかしいという感情が勝るらしい。俺からみれば既に慣れた行為だが、女はよくわからないな。
今はリハヤしかいないから、優しくしてやる。
その恩を忘れず、俺に尽くせよ。そうしたらこうして愛してやるから。
勘違いして図に乗ったカレンとは違って、お前の欲しいものはくれてやるよ。
リハヤだけだからな。
今の所は。
けれど、俺に相応しい人間は他にいるはず。
俺が愛するに相応しい女はまだ、現れていないだけだ。
「リハヤ」
そいつが現れるまで、優しくしてやるよ。




