後編
伯爵令嬢の婿取りのすすめのスピンオフです
「ヴィクトリア様どうかイオーネ様に優しくして差し上げて下さいませ…」
暫く後のイオーネの茶会
『お二人共わたくしのお友達ですの』
紹介された途端、挨拶も無く向かいに座る令嬢に言われた
「今までの方々は皆、彼女に辛く当たられてましたの」
今度は斜向かいの令嬢の言葉
四人の茶会らしい
隣はイオーネだ
「今までの方…とは?」
「ベンジャミン様の許嫁だった方々ですわ、お二人とも意地が悪くて…」
随分と一方的だ
「お二方ともなら…イオーネ様にも何か……その、原因が…?」
静かに返したつもりだったが睨まれた
「違いますわ、イオーネ様がお兄様に愛されておいでだから…嫉妬で」
「お止めになって……!」
焦った演技で止めるイオーネ
「でも……せっかく他家へ養女の口を探してらした矢先に…」
「良いのです……愛していても無理なの、だって……だって王家の意向なんですもの」
ハンカチを握り締め悲しげに俯向いた
そしてわたくしに視線を移す
「ヴィクトリア様…皆様はわたくしを気遣って……あぁ、どうかお気になさらないで下さいませ…」
いや…気にしろという事だろう
自分の立場を思い知れと……
この国の法は籍の上だけであろうと兄妹の婚姻は許さない
だが実妹で無いなら、再度他家の養女に移りグレイ家を離れれば婚姻は可能だ
そのつもりだった
ところが王家の意向という断れない縁談が割り込んで来た…
そう言いたいのだ
友達を頼んでこの茶番をしたかったのか…
わたくしを招いた理由は理解した
だが仰せの通り〝王家の意向〟わたくしにもどうしようもない
そしてもうひとつ理解出来た
婚約を二度破談にした原因
噂と少し違う…
兄が…というより妹が兄に固執し兄はそれに引き摺られているのではないか
固執…
ああ、イオーネは前の世界の自分に少し似ている
思考が手に取るように分かるのはそのせいだろうか
背筋が冷える気がした……
この茶会の終わり際
ベンジャミンが顔を出した
「ヴィクトリア、挨拶だけ…と思っ…」
イオーネの様子に気付き言葉を止めた
彼女は大粒の涙を幾筋も流していた
「……どうした?イオーネ」
「な、何でもありませんわ…ただ……」
涙目でわたくしをチラと見た
ベンジャミンもわたくしの方を見る
先程まで何事も無かった
わたくしは気まずくはあれど普通に会話を交わしていたのに…
ベンジャミンの来る気配と共に唐突に涙を流し始めたイオーネ
友人方は大人しく目を伏せている
訝しげに見るベンジャミンをわたくしは真っ直ぐ見返した
こういう事を繰り返し今まで二度の破談に至っていたのだな…
ベンジャミンはイオーネを信じきっているのだろうか
「……気分が優れないなら失礼させて頂きなさい」
イオーネを静かに労りこちらを向いた
「皆様、本日はありがとう。お見送り出来ないが気を付けてお帰り下さい」
紳士らしい礼を丁寧にした
やり過ごせばいい…そう思ってはいても……
妹の肩を抱いて去って行く後ろ姿を見送りながら虚しさがこみ上げて来た
───*
それから暫くの間、交流の日は街のレストランや劇場に誘われた
グレイ邸に招かれる事は無くベンジャミンはイオーネの話題さえ出さなかった
彼はわたくしがイオーネを虐げると思い込んで遠ざけているのだろうか
しかし…
婚約者としての義務は律儀に果たした
初回のような欠席も遅刻も無く、折りに触れて花や贈り物も欠かさなかった
ベンジャミンの気持ちが測れない
妹を害する者を尊重するのは王家への配慮なのだろうか
そうだとしても……
前の世界
ベンジャミンと状況が同じだった筈のフレドリクから配慮を受けた事など無い
初めての経験だ
わたくしの女としての気持ちが甘やかな気分になる事がある
愚かしい事だし危険な事だ
心を動かされる事などあってはならない…
他の女性を愛する男に囚われては前の世界を繰り返す
自分に言い聞かせる
わたくしは今もこの先も誰からも愛される事など無いのだ……と
そんなある日ベンジャミンが言った
「ヴィクトリア…うちのパーティーに出席して貰いたい」
グレイ伯爵の事業関係者を主に招いた懇親会のようなハウスパーティーらしい
「跡継ぎである私の婚約披露の側面もある…当然、君はゲストでは無くホスト側になると思うが……」
「…はい、承知致しました」
「……ありがとう…君に映えるドレスを贈るよ」
まるで愛する女性を見るかのような眼差しで柔らかく笑う
また……心が少し揺れた
───*
パーティーの当日
早めにグレイ伯爵邸に着いたわたくしは用意されていた控室に案内された
紅茶を淹れたメイドが下がったのと入れ替わるようにイオーネが顔を出した
「いらっしゃいませ、ヴィクトリア様」
「ええ…お久しぶりですわね」
探るような気持ちで挨拶をする
イオーネは紅茶の置かれた猫足のティーテーブルにチラと目をやってからわたくしを見
「まあ…お兄様ったら」
眉を寄せた
「ヴィクトリア様にわたくしと同じ色のドレスを贈るなんて……」
確かに先日ベンジャミンから贈られた青紫に金の刺繍が施されたドレスを着ていた
しかしイオーネはごく淡いペールパープルのドレスだ…
ヴァイオレット系ではあるが、断じて同じ色などではない
何が言いたいのか分からなくて言葉を返せなかった
イオーネは微笑むとゆっくりわたくしの脇のティーテーブルに手を伸ばしカップを持った
「わたくしのドレスもお兄様の見立てですのよ……」
言いながら軽く勢いをつけてカップの中身を自分に浴びせた
わたくしは一瞬ひやっとした、まだ紅茶はあまり冷めていない
しかし上手く素肌は避け胸から下のふわりとした部分を汚したようだ
彼女はそのままカップをわたくしの前に投げ捨てた
再びわたくしを見て微笑む
と、同時にノック音がしてベンジャミンが入ってきた
「きゃっ!」
イオーネは悲壮な声で叫んだ、涙をぽろぽろと零す
「イオーネ…」
一瞬立ち止まった彼だが直ぐに駆け寄った
「どうしたんだ?何が…」
彼の瞳が上がり、わたくしを見た
「違うんですの…わたくしが、わたくしが自分で零してしまいましたの…!」
イオーネは本当の事を言った……だが…
「ヴィクトリア様にお兄様に見立てて頂いたドレスだと申し上げたのです…そうしたら……」
と、自分のドレスの汚れた部分を掴んだ
「い、いえ…誤って自分で……」
もう一度言ってから手で顔を覆って泣いた
ベンジャミンは彼女とわたくしを交互に見て深く溜息をついた
「……怪我は無いんだろう…?まだパーティーまで時間がある、着替えておいで…」
そう言うとメイドを呼んで彼女を任せた
彼女を送り出し振り返った彼は物言いだけな視線を向けて来た
わたくしはただ立ち尽くしている
弁明する気も起こらない
前の記憶が教えていた
男というものは愛する女性しか見ない…
何があろうと味方をし何を言おうと庇う
「ヴィクトリア、今日はもうイオーネに近づかないでくれ…」
ほらね……
心にじわじわと黒い紙魚が広がって行くような気がした
馬鹿ね、わたくし……
あんなに自分を律したのに、やはりこの方に惹かれてしまっていたのだ……
俯向いたまま頷いた
「……かしこまりました」
この方もフレドリクと同じだ
これで、気持ちを振り切る事が出来る
丁度いいわ…
手広く事業を営む裕福な貴族家らしく伯爵邸のホールには大勢の招待客が集まっていた
グレイ伯爵夫妻は既にホールで社交に励んでいる
この後、婚約の披露となるふたりがコールされる流れだった
エントランスの大階段からベンジャミンにエスコートされての登場になる
控室から大階段に向かう二階の廊下をベンジャミンと並んで歩いた
「私のあなたへの印象は自由で華やかな方…というものでした」
我儘で気が強いと言っているのだ
まあ、そうだろう
わたくしは前も今もそういう女なのかも知れない……
大階段の手前まで来て足を止める
「……だが本当のあなたは、真摯で冷静な判断の出来る聡明な方だと思います」
そう言い、ベンジャミンが曲げた左腕をそっと差し出した
その時コールが響く
「グレイ伯爵家嫡男ベンジャミン並びに婚約者のヴィクトリア嬢をご紹介いたします!」
彼が何が言いたいのか分からない……
少し首を傾げながらその腕に軽く手を添えた
君のその冷静な判断力で……妹を虐げるのを控えろ……とでも言いたいのだろうか
考えながら階段を降りようと足を踏み出した
……え?
ドレスの裾がまるでロープのようにピンと張り踏み出しを妨げた
上半身だけが押し出され前のめりに体が傾く
目線下には長い大階段
ベンジャミンの腕に添えた手がそれに縋ろうとして本能的に躊躇った
避けられて傷付くのは嫌……
頭に浮かんだのは幼い日
王城の庭園のステップで躓き、縋ろうとした手をスッと避けたフレドリクの腕
体が宙に投げ出され思わず硬く目を閉じた
その瞬間、大きな腕がわたくしを包み込んだ
そのまま踊り場まで十数段は転がり落ちただろう…
だが……
痛みを全く感じない
え?何故……何が…
恐る恐る目を開けると…
体の下には低く呻く男の身体があった
「…ベン!」
彼はわたくしを丸ごと抱きかかえていた
転がり落ちるのを咄嗟に庇って腕に囲い、そのまま一緒に落ちてクッションとなったのだった
わたくしはベンジャミンの腕を抜け出し、座り込んだまま呆然とあたりを見回した
ホールのゲスト達は驚きに固まっている
侍従が数人階段を駆け登って来る
そして…
階段上には腰を抜かしたように這いつくばって下を覗くイオーネが居た
その目は驚きに見開かれている
***
「イオーネは誤って君のドレスの裾を踏んだと言っているそうだ…」
ベンジャミンは自室の寝台で話し始めた
医師の治療を受けながら少し侍従から話を聞いたようだ
「誤ってドレスを踏むほど近くに…いや、何故ホールでは無く二階にいたのか…」
ある程度想像が出来るイオーネの動向より聞きたい事があった
「何故…わたくしなどお救いになりましたの……?」
枕元で訴えるように聞いた
彼は身体中青痣だらけだが、頭は無事で左腕の骨折だけで済んだ
不幸中の幸いだが、それでも医師にひと月の安静を命じられた
「……何故…とは?君は私の許嫁で大切な人だからだよ」
その答えはわたくしを混乱させた
「だって…でもわたくしはあなたに…あなた達にとって邪魔で……」
ベンジャミンはわたくしを見つめ、やがて緩く眉を寄せた
「あなた達とは私と妹の事だね。君は自分が邪魔だと?」
「ええ。だってイオーネ様の、あからさまな様子と…それに……」
「……それに噂、だね?」
わたくしは言葉に詰まったが、躊躇い……そっと頷いた
「噂について話そう。そう……君にはもっと早く話した方が良かったのだろう」
彼は少し身体を起こし痛そうに顔を歪める
わたくしは急いでその背に枕とクッションを当てた
ひとつ息を吐き彼は話し出した
「……以前話した通り彼女は十二歳でうちに来た」
──イオーネが両親を亡くしグレイ家の養女になった時ベンジャミンは十七歳だった
二年近く前に婚約した許嫁が居た、彼女は名家の生まれで気位が高かった──
「その婚約者がイオーネを酷く虐めたんだ…」
──イオーネは下級貴族の生まれで立ち居振舞やマナーなども拙かった
それを茶会など社交の場であげつらい謗り馬鹿にした
そんな事が続きイオーネは萎縮して外にも出られなくなってしまった
ベンジャミンはイオーネが憐れでたまらず庇い慰めて優しく接した
すると、イオーネも彼になつき、いつも後ろで袖を引っ張るようにして付いて歩くようになってしまった
それが余計癇に障ったのか、婚約者の虐めはさらに増し、苦言を呈しても一向に改める様子が無かった
ベンジャミンはイオーネを庇う意味以上に自分に彼女を妻として愛せる自信が無くなってしまった
半年ほど後、とうとう親に相談し両家の話し合いを持ったのだ──
「その上で〝相性が良くなかった〟として婚約解消に至ったんだ……それから」
──最初の婚約解消の翌年、新たな縁談がまとまった
今度はたおやかで優しげな女性で、イオーネを蔑む事は無いだろうと思った
だが……
同じ事がまた起きた、
彼女が来るたびイオーネは涙を流して怯える様子を見せはじめる──
「私は今度も婚約者に苦言を呈した、だが彼女は認めない……イオーネが嘘をついていると言うんだ」
「ベン、それは…まさか」
ベンジャミンは頷いた
「……君の場合もそうだったんだろう…」
俯向いて力無くシーツを握った
「だから君にイオーネに近づいて欲しく無かった。嫌な予感は、あったんだ……」
『今日はもうイオーネに近づかないでくれ』
「……ではあの言葉は」
「君にでは無くイオーネに言うべきだった…」
薄く笑って続けた
「そう、今なら分かる。でも当時は以前の虐めを見ていたせいか妹を信じ……婚約者を信じられなかった」
──虐げた事を認めない姿が意固地に見えて前の人より悪いと思ってしまった
ベンジャミンは怒り、けんもほろろに婚約の解消を申し出た──
「その直後、彼女は手首を切った……自殺未遂だ…」
……そうだろう
好きな相手に、身に覚えのないことで責められる
それは、人格を否定されたも同然だ……辛かっただろう
「怪我は大した事は無かった。だが醜聞を恐れた親は婚約解消を受け入れた上で今後一切の付き合いを断る……と」
「……それが」
「ああ…二年程前になる……それから噂が徐々に広がった」
握っていたシーツを離し腕を擦りながら言う
「イオーネは…間違って学んだんだ、私のせいで……自分が惨めであれば愛してもらえると」
「あなたへの依存や執着も……」
「え…ああ、君にそう見えたならそれも私の罪だろう」
「罪、だとは……」
ベンジャミンはゆっくりわたくしを向いた
「一年後に彼女に街で偶然会ったんだ、侍女に止められていたけれど……彼女は話してくれた」
「まあ…」
少し意外に感じた、そんな因縁の相手と……
「彼女、結婚したと…」
一呼吸おく
「今はとても幸福だと……信じ合える相手なのだと……笑った」
「それは…」
「ああ、相手を信じない……男と結婚しなくて良かった、と言う意味だろう」
「……」
暫く無言が続いた……
その時
ノックの音がして侍従が知らせた
「スペンサー侯爵家からの迎えの馬車が参りました…」
今夜の事故でパーティーは中止になった
ゲストへの謝罪や後始末で浮き足立つグレイ家へ配慮して自邸へ迎えを頼んだのだった
「ヴィクトリア、話の続きはまた今度……今日は本当に申し訳無かった」
「……また…参ります。どうか、お大事に…」
その日はそれで辞去した
疲れている筈のその日だが、寝台に入ってもなかなか眠れなかった
頭に浮かぶのは…
自身を庇いスッと逃れて行ったフレドリクの腕
──植え付けられた嫌な記憶、そしてその記憶を打ち消すような…
迷いもなく身を挺し差し出されたベンジャミンの腕
ああ、もう……
惹かれて行く自分を理性が抑えきれなくなって頭を抱えた
────*
安静を慮り短い文の遣り取りで過ごした二週間後
やっとグレイ邸を訪れた…
彼は左腕を布で吊った姿でソファーに居た
「だいぶいいよ、利き腕で無くて助かった」
紅茶を含みながら少し笑った
「わたくし先日は取り乱して、助けて頂いたお礼も禄に……改めて、ありがとう存じました」
「いや…悪いのはこちらです。イオーネは……昨日、領地の館に移しました」
「え…?」
「悪意があった事を認めて悔い改めて欲しいと言ったんだ…だが」
目を伏せた
「自分は悪くないと、私……が自分の味方をしない方が間違いだ、選ばれるべきは自分だと……」
そのイオーネに前の世界の自分を見て軽い目眩を覚えた…
「苦渋の選択でした……私は真実、妹の幸福を望んでいる、彼女が愛しい…」
心が少し冷えた
「あ…やはり噂は……」
彼は首を振った
「確かに私は、噂通り妹を愛している……だがその愛が異性に寄せるものであった事はないんだ」
真剣な目を向けられた
「パーティーの時、言いそびれた……妹を責める事もせず冷静に振る舞う聡明な…君」
心臓がひとつ音を刻んだ……
「君に惹かれています…」
「……ベン」
わたくしは少し涙ぐんだ……
フレドリクに抱いた恋心とは違う
お互い激しい想いでは無いけれど……
この方となら穏やかな愛と信頼を築いて行ける気がした…
──私がイオーネを勘違いさせた。庇うばかりで、甘やかすばかりで……強い事も言って理不尽に立ち向かうよう諭すべきだった──
ベンジャミンはそう言ったが……
初めて会った時からイオーネは異性としてベンジャミンに惹かれていたのでは無いだろうか……
最初の婚約者の虐めがあった時、庇ってくれた彼に更に惹かれた
ことさら大袈裟に被害を訴えた可能性さえあるのではないか……
結果の婚約解消
イオーネは勝った、と思ったかも知れない
いずれにしろ、ベンジャミンは自分を選んでくれたと思った筈だ…
次の時も婚約解消を勝ちとった
だから…わたくしの時も……
味わった成功体験が忘れられなかったのかも知れない……
***
一年後
わたくしはベンジャミンと結婚し次期グレイ伯爵夫人となった
同じ頃イオーネもグレイ伯爵領より更に遠い土地の下級貴族に嫁いだ
ベンジャミンが面会し良い相手だと確かめた上での結婚だった
今はただ彼女の幸福を祈るのみだ……
危惧していた〝白い結婚〟も無く、夫はとても誠実で優しかった
順調に夫婦生活を過ごし結婚から二年後、わたくしは男児を出産した
夫の賛同を得て付けた名は……
──ライアン──
そっくりだったのだ…
前の世界のライアンが今の世界に生まれ変わったとしか思えなかった
違うのはただひとつ、前の世界では青だった瞳……
今のライアンはベンジャミンと同じ琥珀色の瞳をしている
前の世界と同様に可愛くて愛しくて仕方がない……だけど
今度は叱って育てよう
ちゃんと褒めて、ちゃんと叱って
ちゃんと愛するのだ
わたくしのライアン……愛しているわ
前の世界も……
今の世界も
***
穏やかな幸福を得た……
そう思える今度の人生
だが横になると、時折背中が痛む時がある……
そういう時ふと思うのだ
「あ……やっぱりまだ生きてるよ」
「……ほら見ろ、だからよく確かめろと言っただろ」
「ちっ、面倒な…」
そんな声が聞こえてきて……
目を覚ませば、あの別邸の薄汚れたシーツの上にいるのかもしれない
──これが夢なら
やり直したと思っている
この世界がもしも夢なら……




