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拾った黒猫を溺愛していたら、いつの間にか大魔導士に溺愛されていました〜魔導士は猫になりたい  作者: 紙絵。


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魔法使いの弟子

 学園祭の花火が上がる少し前、エマヘ伝言を伝えたリンと黒猫姿のレイは教会の前に佇んでいた。

「リン、私は少し用があるから行くね。また家でゆっくり話そう」

「うん。またあとでね」

 レイはそう言うと、足早にどこかへ去って行った。リンもみんなの打ち上げに戻ろうと腰を浮かせる。すると、姫の衣装から着替えたライラが立っていることに気付いた。

「ライラ、もう衣装脱いじゃったの? 勿体無い……!」

「……まぁね。私の劇は今日で終わりだから」

 どこか悲しげに笑うライラ、リンは首を傾げる。

「リン、一緒に来てほしい所があるの」

 いつもより少し低く、よく通る声。そのただならぬ緊張感にリンは無言で頷いた。

 

 二人は学園を抜け出した。日が落ちた夜空には大輪の花火が打ち上がり、みんな空を見上げている。二人に気付く者はいなかった。


 ◇

 

「ライラ、ここから行っていいの?」

「うん。いいの」

 二人は、以前ドラゴンが破壊し、まだ修復中の城壁から王都の外へと出た。城壁の外は薄暗い森だ。なぜか常時警備しているはずの騎士団達の姿が見えない。

「騎士団の人達、なんでいないのかな?」

 リンがライラへ話しかける。

「……悪い魔法使いが城のそばに出たって情報があったから」

「え?」

「皆んなそっちに行ってるんだよ」

 前を向いたまま淡々と話すライラ。

「なんで、ライラがそんなこと知ってるの?」

「……」

 無言で森へと入る二人。ライラが不意に立ち止まり、振り返って真っ直ぐにリンを見つめた。


「リンがあの魔導士と繋がっていたなんてね」

 

 ライラは少し悔しそうな顔で見つめる。リンは静かに目を閉じると、意を決してライラを見返した。

 

「ライラが、魔法使いの弟子だったんだね」

 

「うん。……気付いてた?」

 自嘲気味に口元を歪めるライラ。

「……可能性はあると思ってた。でも、情報では性別は男だって聞いてたから」

「……合ってるよ、その情報」

 ライラは自身の長い金髪を無造作に掴むと、引っ張った。

「え……!」

 美しい金髪がバサリと地面に滑り落ちる。

「カツラだよ。魔法で変えると魔力量も変わるからね」

 そこに立っていたのは、黒髪で短髪の少年だった。

「顔は元々こんな感じだから……。リンに『人形みたい』って言われた時は、寒気がしたけどね」

 

 そういえば、初対面でそんな事を言った気がする。


「知ってる? 髪の色で魔力量がわかるんだよ。黒髪が一番強い、その次が金髪。他の色があって一番弱いのが銀髪。リン、君だよ」

 少年はリンを指差した。

「だから警戒しなかったんだ。あの魔術士が、魔力量が少ない者を使うなんて思わなかったから。だから、リンだけは最初から除外してた」


 ライラは短く呪文を唱えて、リンの手首を魔法の縄で縛った。縄の端を握ると、森の奥へと歩き出す。

「ついて来られる? 君には悪いと思うけど、僕も後には引けないんだ」

 悲痛な少年の背中を静かに見つめるリン。


 その時、上空から旋回してきた一羽のカラスが、リンのすぐそばの枝に止まった。一声カァと鳴き、言葉を発する。

 

『——リン保護したよ』

 

 カラスから響いたのは、レイの声だった。

「なんだ!?」

 少年が慌ててカラスを探すが、すでに夜空へ飛び去った後だった。

「……間に合った。ライラ、もう大丈夫だよ」

「は? 大丈夫って……」

「お母さんと弟さんを保護したの」

「え!」

 驚愕で固まる少年に、リンは静かに告げた。

「実はライラの事、少し違和感があって調べてもらってたんだ」


 ぶつかった時、女の子にしては体格がしっかりしすぎていた事。小火の騒ぎの時も現場にいた事。天体観測で急にいなくなった事。そして……デリウトでの火事の翌日に、学校を休んでいた事


 リンはマドカに頼み、ライラの身辺調査を進めていたのだ。

「あの魔法使いに脅されてたんでしょ? 人質は保護したから、もう従う事はないの」

「そ、そんなの、どうやって……」

 その直後、上空から大きな炎の玉が飛んできた。ライラは咄嗟に防御魔法を使い、間一髪で炎を弾き飛ばす。

「ライアン遅えぞ! その女早くこっちに渡せ」

 上空に浮かぶ魔法使いが声を張り上げた。

「魔法使い様、どうしてここに……」

 戸惑うライラ。


 アイツが! 私の居場所を奪った、あの男だ。


 今の炎は、ライラごとリンを焼き尽くそうとしていた。リンは空を飛ぶ男を激しく睨みつける。

「お前がチンタラしてる間に、俺の隠れ家が一つ見つかったんだ! 魔導士が来る前に、その女人質にして逃げるぞ!」

「隠れ家が……僕の母様と弟は!」

「知るか! あんな足手まとい、もう殺されてるかもしれねえな」

 息をのむライラ。その顔から一瞬で血の気が引いていく。

「ライラ、大丈夫! レイ達は絶対そんなことしない。安全な場所に匿われてるはずだよ!」

「リン……」

 今にも泣き出しそうなライラには、もう戦闘の意思は見えない。

「ライアン早くしろ!」

 魔法使いが怒鳴る。

「ライラは、アンタなんかにもう従わない!」

 リンはライラの前に堂々と立つ。

「お前……あの村にいた奴だな? あの時も歯向かってきた」

「リン! 下がって、危ない」

「ライラ、私は大丈夫」

「何が大丈夫なんだ? 何もできない銀髪の分際で!」

 魔法使いは再び手に凶悪な炎を宿す。そして、それはどんどん大きくなっていく。

「また炎? 同じ事を何度も何度も」

 リンは冷たい瞳で魔法使いを睨む。

「何とでも言え、全てを焼かれて骨も残らないようにしてやるよ!」

「リン!」

 ライラが悲鳴のような声を上げる。

 だが、リンはライラを振り返り——不敵に微笑んだ。

「大丈夫。……変装してたのはライラだけじゃない」

「え……?」

「死ねぇ!」

 魔法使いが、特大の炎を上空からリンへ向かって容赦なく投げつけた。

読んでいただき、ありがとうございます。

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