はじまり
猫を拾った。
怪我をしている。
リンは回復魔法で猫の怪我を治した。
町からの帰宅時に見つけて、一緒に住んでいる祖母に飼う事をお願いした。
名前はクロと名付けた。
一年後。
「クロ寝るよー」
リンがクロと一緒に布団に入る。
布団の中はちょっと冷たいが、クロがいると暖かい。
クロを飼ってから毎日一緒である。
「おやすみ」
「にゃあ」
リンは平民の娘だ。
身分の差はあれど、祖母2人穏やかに暮らしている。
今日は両親の命日。
リンに両親の記憶はない。ただ祖母が毎年悲しそうにするので、リンも悲しい気持ちになる。リンがまだ赤ん坊の頃に事故で…と聞いている。
お墓に花を供え、心の中で両親に伝える。
私は元気です。もう17歳になりました。おばあちゃんもクロもいるし、寂しくないです。
家に戻る途中、ガサっと何かが動く音がした。
熊だ!
恐怖で体がすくむ。
熊がこちらに向かって来た。
その時、クロが飛び出してきて、熊の前に立ち塞がる。
クロの体が大きくなったような感覚がした。
熊は動きを止める。
熊は遅い動きで、森へ帰って行く。
リンはクロを抱きしめる。
「クロ!追い払ってくれたの!ありがとう」
「にゃあ」
「リン!早く家に戻りましょう!熊が戻ってきたら大変!」
祖母と一緒に急いで家に戻った。
祖母は半泣きである。
「無事で良かった」
「クロのおかげだよ」
リンがクロを撫でる。
「クロ、ありがとうねえ」
祖母もクロを撫でると気持ちよさそうに上を向いた。
クロは不思議な猫だ。
人の言葉が分かるのかと思う事が時々ある。
絶対「にゃあ」と返事をするし、出かける時は付いてきて、リンや祖母を守っているようだ。
猫らしくネズミや小鳥を取ってくる事はない。大抵、日向でゴロゴロしている。
リンに撫でてもらうのが好きなのか、リンが座ると膝に乗ってくるのだった。




