256 なるほど、犬だ。
着替え終わった私は、遅めの朝ごはんを食べている。
かなり疲れていたのか、結構寝ていたらしい。
…いや、ルアの抱き心地がよかったのかもしれない。
言われてみれば、全身モチモチだったような気がする。
そして、そのルアはというと。
「ごめんって…」
「…絶対に許さない」
なかなか許してくれない。
とはいえフィリアいわく、本当に嫌いなわけではなく、照れくさくてツンツンしているだけらしい。
フィリアも最初にルアと会った時はかなりツンツンされていたそうだが、知らないうちにベタベタひっつくようになっていたんだとさ。
つまり人見知りだ。
「まぁ私も悪いけど、ことの発端はルアが夜中に忍び込んでくるからじゃん」
「そっ、それはっ! どう考えても普通じゃあり得ない魔力で…つい気になって……」
どうやら、ルアは人の魔力量がある程度わかるらしい。
それに私単体でさえ尋常じゃない魔力量なのに、あろうことか私の魔力に加えてテアの魔力まで感知してしまったらしい。
私は結構魔力抑えてるつもりだったけど、どうやらルアには隠しきれなかった様だ。
「ルアは昔から強い人に目がないのよ」
なるほど。母親公認の脳筋……っと。
「そっ、そんなことはないです!」
「それで、魔力に釣られてリンちゃんのところに行ったんでしょう?」
「うっ…それはだって…いきなりあんな魔力がうちにあったら…誰だって気になって…お母様がそんな怪しい人間を見逃すはずもないですし…我が家にいる以上は安全は保障されているわけで…それならちょっとぐらい近づいてって……それで……」
カレナさんの言ったことが図星だったのか、もじもじしながらぶつぶつと1人で言い訳をし始めた。
ルアが私たちの魔力をどれほど感じられているかはわからないけど、ルアからすれば私の魔力量はかなりの驚異に見えたはずだ。
そんな相手のベッドに潜り込んでくるくらいだから、よほどカレナさんの目を信頼しているのだろう。
私とフィリアへの対応もそうだったけど、カレナさんはよっぽど目が鋭いみたいだ。
カレナさんには何をやっても見透かされるような気がする。
…変な嘘つくのやめよ。
「あっ、せや」
そんな中、フィリアが声を発した。
「リンちゃんにあとで手合わせしてもらったらええやん」
「えっと、フィリア?」
「リンちゃんも戦うの好きやろ?」
「あの、フィリア?」
フィリアがとんでもないことを言い始めた。
料理人(建前)と国を代表する魔法師を戦わせる?
もはや私の身分は隠さなくてもいいってか?
「あ、料理対決ね?」
「え? そんなわけないやん」
そんな冗談を言いながら、横目でルアの様子を見てみる。
……なんかめっちゃ嬉しそう。
ルアが犬なら、尻尾をフリフリしながら嬉ションしているに違いない。
「いつもはウチが遊び半分で戦うんやけど、今回はリンちゃんが戦うってことで。カレナ様、どうですか?」
「ええ、問題ないわよ」
「あの、そんなことより鉱山の調査は?」
「それが終わってからにしましょうか」
「えっ…」と、ルアがシュンってなっている。
「犬やん」
思わず声に出てしまう私。
「可愛いやろ?」
「うん、なんか可愛く見えてきた」
フィリアは、ルアのこの犬っぽいところが好きらしい。
確かに段々と愛着が湧いてきた。
「けど母様、鉱山って…?」
「あぁ、それね。リンちゃん達が今の鉱山の様子を見てみたいと言ってね」
「き、危険では…」
「もちろんそんな危ないことはしないわよ。ね、リンちゃん?」
「あ、あっ、あぁっはい」
カレナさんのとんでも目力に圧倒される私。
「もし何かあったら危険だから、ルアにもついてきてほしいの」
「それは別に構いませんが…」
そう言いながら私とフィリアをチラチラ見る。
まるで「必要なさそうですけど」と言いたげな顔で。
「必要なさそうですけど」
ほらね。それは言わないお約束だよ。
「ウチら土地勘ないしさ。ルアがついてきてくれるなら、ウチらも安心して過ごせるなぁ」
びくんっ。
ルアの体が震えている。
うん。間違いない。喜んでやがる。
「な? リンちゃん?」
「そうだねっ! ルアがいればどんな魔物がきても、どんな怖い人に絡まれても安心だしっ!」
ふっ。最近の私、空気が読めちゃう。
「……がえ…」
んっ? ルアがまたなんかぶつぶつ言っている。
「………きがえ」
そう言いながらスッと席を立ち、1人でどこかに行ってしまった。……お腹の少し下の辺りを押さえながら。
…まっ、まさかね。
フィリアがコソッと耳打ちしてきた。
「犬みたいで可愛いやろ」
いや、ほんまに嬉ションするんかい。
久しぶりに11時以外に投稿したような気がします。週一投稿くらいできないでどうする!と誰かに言われたような気がして、、、、




