245 誰が大人? 誰が正しい?
「ワルフ国王様から預かったお手紙には、出来るだけ安全な道を選ぶようにと…」
「いや、なるべく早く到着できるルートで」
「リンちゃん? そんな無茶を言うもんやあれへん」
「けど、むっちゃ遠いか、とんでもない山道なんですよね?」
「魔物は少ないのですが、やはり少し遠回りをしなければ道が危なっかしいもので…」
ワルフ王国に行くに当たって、今私たちの前には、3つのルートが与えられている。
そもそも論として、山を越えなければいけないというのは大前提として話を進めよう。
まずひとつ目は、そこそこ近道だけども大変な山道になっており、魔物云々よりも道に問題アリだ。
床が抜けたり。足場が崩れたり、橋が壊れたりと、わりかし大変な目に遭うらしい。
そしてふたつ目は、山を迂回してかなり遠回りして行くルートだ。
定番ルートってやつらしい。
魔物も比較的少なく、道もある程度舗装されている。
そしてどうやら、これが8日もかかる原因らしい。
そして最後、これが私イチ推しのルートだ。
その名も、魔物うじゃうじゃ洞窟ルート。
そもそも山を越えなければならないのだから、登って下るよりも、迂回するよりも、洞窟を通って一直線に抜けた方が早いに決まっている。
それに、私とフィリアがいるならばこれ以上に安全なルートはない。
魔物が出てくるよりも、足場が崩れる方がよっぽど怖いし危険だ。
「まぁリンちゃんの言うことも一理あるんやけどなぁ…」
「一理しかないっ!」
「い、いくらフィリア様とはいえ、お嬢様をお1人でお守りするには…」
「んー、あぁ…うーん…」
馬車のお爺さんからすれば、最悪自分の命はどうでもいいから私を守ってあげて、と言う感じらしい。
私からすれば、私とフィリア、それに場合によればテアも一緒に、お爺さんと馬を守りながら移動する、てな感じだ。
まぁそんなことはお爺さんにはわからないだろうから、いくら考えたって仕方のないことだ。
あくまで私は料理人(?)らしい。
フィリアはもちろん、そういった建前込みで考えた上で、遠回りルートにしようとの提案をしている。
一方私としては、いくら正体を隠したとて、そのうちバレる気がするから、最初から多少の荒技は許容していこうよ、の精神だ。
もっと気をつけて生きなさい!と上司からお叱りを受けたような気がする。
ふっ。人生楽しんだもん勝ちだよ。
「ちなみに洞窟から行けば何日で着くんですか?」
「2日かからんぐらいですかな…」
「おーっ。けど日を跨ぐということは、洞窟の中で寝泊まりする必要があるってことですよね」
「長時間の睡眠は少し無理がありますが、少しくらいの休息も必要でしょうな」
「なるほど…」
とりあえず魔力探知を使って、洞窟の中を確認してみよう。
………うん。
人間の姿は、もちろんながら見当たらない。
その代わりと言っちゃなんだが、とんでもない魔物の数だ。
レベルはピンキリ。
見慣れたゴブリンやウルフの魔力も確認できれば、なんじゃこりゃという見たことないサイズ感のやつまでいる。
「な? 無理そうやろ?」
どうやらフィリアが私のしていたことを察していたのか、勝ち誇った顔で覗き込んできた。
ぐっ……悔しい……
「冷静に考えれば、魔除けの魔道具なんて便利なものがあるくらいなんだから、それを使ってないということは、もう手に負えないレベルになってたってことか」
魔除けの魔道具が効かないようなやつらも一部いるらしいけど、どちらにせよこの量は諦めるレベルだ。
「けどさ、もしワルフ王国と今より国交を持つとするなら、この洞窟は必須じゃない?」
「まぁそりゃな。あった方がええに決まってる。今もそこまで交流がないのは、やっぱり道が危険なのと時間がかかりすぎるからという問題が大きいんや」
「ふーん…」
人がいないことは確認済みだから、一気に魔法で畳みかけるか。
雷だと少し焦げ臭くなってしまいそうだから、やっぱり炎で消し炭にしてやるのが1番かな?
洞窟内がマグマだらけになるのも困るから、やはり適温は600℃くらいかな?
「リンちゃん? 早まらんといてや?」
「バレた?」
「バレバレや。ただ、やりたいことは分からんでもない」
「じゃあ帰りにするかぁ」
「お? リンちゃんが珍しく折れてくれた」
「珍しくって何よ」
まぁさすがに今回はやめておこう。
国に迷惑がかかっちゃって、結局国民が迷惑被るなんてのは嫌だからね。
まぁ、本音は魔物退治して迷惑がかかる可能性なんて考えたくもないんだけど。
念には念をってやつだ。
「じゃあフィリアとの旅を楽しむとしま─────ひゃっ!?」
いきなりフィリアが抱きついてきた。
「リンちゃんっ…! はぁんっ…!」
「やめなさい」
─────ペシっ。
「いてっ」
「人目を気にしなさい」
「つ、つい…」
「あはは、すみませんね」とおじいさんに謝罪をしておくも、おじいさんの頭には数多のハテナマークが浮かんでいる。
まずはフィリア、宮廷魔術師団長の頼りなさ感。
そしてその団長ともあろう人物の頭に、1発お見舞いする、自称料理人の女。
道が、魔物が、云々の前に、ここからすでにおかしいと気付くべきだったよ。
結局、1番遠回りのルートでワルフ王国を目指すことになったが、途中で少し近道もあるらしい。
今回の護衛レベルから考えて、その程度の危険ならばということでおじいさんもその道を許可してくれたため、6日程度で着くそうだ。
「リンちゃんからエネルギーを吸収っ!」
「ばっ…どさくさに紛れてどこ触ってんの!?」
「愛の爆炎弾!!」
─────ドゥンッ!!!!
「ギィィィィィッ!」
愛の爆炎弾により、なんか見たことないデカい魔物がくたばった。
馬車のおじいさんも、最初はあまりものデカさに怯えてしまうレベルだったけど、フィリアの緊張感のなさに逆に安心したのか、かなり落ち着いている。
─────ペシッ
「いてっ」
「ワケの分からない炎を作るんじゃありませんっ!」
フィリアが放った愛の爆炎弾は、名前の通りハート型になっていた。
それ、魔物に求婚してるように見えるから。
「ワケ分からんことないやん!」
「この調子で、イオから変な魔法教わってないよね」
「だっ、大丈夫やからっ!」
一瞬言葉が詰まったのを、私は見逃さなかったよ。




