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魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
結界の魔封石
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王立図書館

次の日。

ティアナは朝から王立図書館に来ていた。

魔封石を視た後、リーンに頼んでロイドから許可をもらっていた。

「まずは調べものからね」

「何を調べるんだ?」

一緒に来ていたクロードが図書館の中にある本棚を見渡しながら呟いた。ここには始めてきたようで、本の数に圧倒されている。

入ってすぐの司書たちがいるカウンターの横に、図書館全体の相関図を見ることができる。細かく分類された中から目当ての種類を見つけると、カウンターを横切って奥へと進んでいく。

「魔封石に関する書物をいくつか調べようと思って。それと、200年前の魔封石士のことも知れたらいいんだけど」

結界石を作るにしても、あの魔方陣は尋常ではなかった。魔方陣の解読に、組み合わせによる魔法の発揮の仕方など、作る前に調べなければいけないことが山ほど出てきた。

それに、あのとんでもない魔封石を作った製作者に関しても知っておきたかった。それを調べることで、魔封石作りのヒントを得られる可能性もあるからだ。もしかすると、結界石の制作過程も、どこかに載っているかもしれない。ロイドが事前に調べてくれているが、魔封石士である自分の目でも調べておく必要があると思った。可能性は低くても調べる価値はあるはずだ。

「この辺ね」

ついた場所は魔封石に関する書物が並んだ一角だ。魔封石の元となる魔石や魔封石の属性、描かれる魔方陣の特性や威力など、詳しい内容が書かれた書物を探すには王立図書館は最適だ。

「とりあえず関連しそうな本はすべて談話室に移動しましょう」

図書館の奥には個室の談話室が貸し出されている。図書館は基本私語厳禁なので、数人で会話をしながら調べものをするときに使われることが多い。そこの予約はしてあったので、必要な本を選んで運び、その部屋で目を通すつもりでいた。

魔方陣に関する本を中心にティアナが選んでいき、その本をクロードが運んでいくという作業がしばらく続く。

20冊ほど選んだところで談話室に移動しようとすると、本を抱えた人が歩いてくるのが見えた。

10冊ほど重ねた状態で崩れないように慎重に歩いているが、本を積みすぎて前が見えていない状態だった。それでも周りの景色を頼りに通路を器用に歩いてきていた。

「お手伝いしましょうか?」

クロードは本を持って談話室に行ってしまったので、近くにはティアナしかいなかった。どこかで躓きでもしたら大変だと思い声をかけると、体の向きを変えて相手がこちらを見た。

「大丈夫です。これくらいいつものことなので、慣れています。あっ、フロース伯爵令嬢様」

「あら、エルヴィンだったの」

本に隠れて顔が見えなかったが、そこにいたのは7賢者ロイド=リックスの弟子のエルヴィン=ホールだった。まだ10代だが、豊富な知識量を持っていて、ロイドに見いだされた少年だ。

「ちょうどよかったです。頼まれていた資料を集めたので、持っていこうと思っていたところなんです」

図書館で調べものをするためにロイドに許可を取っていたが、集めてほしい資料も頼んでいた。それはすべて弟子のエルヴィンが探してくれていたようだ。

「ありがとう。今から談話室に移動するつもりだったの。一緒に行きましょう」

そう言って、ティアナはエルヴィンが持っている本を数冊奪った。両手が塞がっている彼は何の抵抗もできない。

「じ、自分が持ちます」

「気にしないで。私が頼んだ資料だもの。それに、私も7賢者の候補生よ。7賢者の弟子と同じ立場だから、名前でいいわ」

師となる7賢者がいる場合は弟子となるが、ティアナのように師となる7賢者がいない場合は候補生と呼ばれている。どちらも立場は一緒なので年齢は違うが堅苦しい呼び名はしたくなかった。

「ですが、身分が違いますし」

彼は庶民出身でロイドに引き抜かれたと聞いていた。貴族出身のティアナには気が引けているようだ。

「大丈夫よ。ここで身分は気にする必要はないわ。私の護衛役も庶民出身だけど、区別を付けずに接してくれているもの」

魔封石士となってフォーンに移り住んだ時に、庶民として生活していくことを決めていた。町の人たちはティアナが貴族であることを知らないから、普通に接してくれている。所作で育ちがわかってしまう部分はあるらしいが、それでもどこかいいところのお嬢さんくらいにしか思っていないはずだ。

クロードは最初からティアナが貴族であることは知っていたが、魔封石を作りたいと迫ったことで、2人の距離は微妙になっていた。魔封石を作る許可が出てからはその距離感は少しずつ解消されていったが、庶民と貴族としての対応を2人ともしてこなかった。

「たとえ周りが何か言ったとしても、私たちは今同じ立場にいるんだから、気にする必要がないわ。むしろ、弟子としての経験が長いのはエルヴィンのほうよ」

7賢者の候補生となってまだ半年だ。目の前の少年は確か2年くらい前に弟子になったはず。エルヴィンの方が先輩になるのだ。

「でしたら、ティアナさんと呼ばせてもらいます」

少し考えてからエルヴィンが答えを出した。いろいろと妥協した部分がありそうな言い方だったが、それを無視してティアナは笑顔で頷いた。

「まだ、必要になりそうな資料がいくつかあるので、談話室に置いたら取りに戻ります」

「それならクロードにも手伝ってもらうといいわ。こっちの資料集めは一区切りついたから」

「クロード?」

「私の護衛よ」

そんな話をしていると、本を運んでいたクロードが戻って来た。

「まだ運ぶものがあったのか?」

「こっちは魔封石士の資料なの。エルヴィンが集めてくれていたから、一緒に持ってきたのよ」

ちょうど2人が会ったので、ティアナはお互いを紹介してやった。

「魔法騎士のクロード=アイリッシュ・・・もしかして、破壊騎士の」

クロードを紹介すると、エルヴィンが引きつった顔をした。実際に会ったことはなかったが、破壊騎士という噂は聞いたことがあったらしい。明らかに落ち着きがなくなった少年は不安そうにティアナを見てきた。

「彼が護衛なんですか?」

「そうよ。今は魔法もちゃんと使えるし、剣の腕も保証できるわ」

クロードには何度も助けられてきた。魔法も安定してきたし、今後の訓練次第ではもっと強い魔法も使いこなせるようになるだろう。

「・・・ティアナさんの言葉を信じます」

信じるとは言ったものの、やはり不安は残っているのだろう。クロードと目を合わせないようにエルヴィンが談話室へと歩いていった。

「取って食いはしないのに」

その背中を呆れたように見つめながらクロードが呟くと、ティアナは苦笑するしかなかった。

「今のクロードの実力を見ていないから、噂の影響の方がまだ大きいのよ。これからわかってもらうしかないわね」

しばらくは城にいることになる。その間にクロードの存在を知った者たちがエルヴィンと同じ反応をするだろう。それでも今の彼を見て、少しずつ改善されてくれればいい。

「資料も集まったことだし、ここからは読む時間になるわ。クロードはどうする?」

本に目を通して参考になりそうなものを探していくことになる。専門用語もあるだろうし、魔方陣に関してクロードは素人だ。図書館から出ることはないので手持ち無沙汰になるだろう。

「時間があれば演習場に行く予定にしてある」

騎士団長のグロッグと話をしたことは聞いていた。城にいる間に時間があれば他の騎士との手合わせをすることになったそうだ。フォーンにいる間ほとんど相手がいなかったので、いい機会だろう。

談話室に籠ることになるので、護衛は必要ないと判断した。

「昼には一度顔を出す」

「うん、お願いね」

おそらく本を読み始めたら時間を忘れて没頭する気がしていた。途中で声をかけてもらえるのはありがたい。

昼に迎えに来る約束をして、ティアナは談話室へと1人で向かった。


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