洞窟2
シズク視点です。
「……ここ私の隠れ家よ」
「シズク、迷惑をかける。受け入れてくれて、感謝」
「……リン、あなただけなら歓迎よ」
「シズク、コウと一緒でないと私はいや」
シズクは静かに吐息をはいた。
こんな羨ましい事態がロストで起きるとは。
この先の全てが見えているわけではない。
好きだの何だのやってるのはアホだと思う。
それでも信じれる誰かがいるというのは、どの世界でも変わらない必要な事だと、シズクは思う。
「……で、あんた達はいつまでそうしてるつもり?」
コウとシンは延々と組手? を続けている。
空間移動と衝撃吸収は最高の組み合わせなのだとほざいて、永遠とやっているのだ。
シズクの言葉に気づく素ぶりすら見せず、熱は高まるばかり。
これはこれで何だか仲間外れにされてる気がして、少しむくれてしまう。
リンは可愛いなぁ……と、シズクを優しく見守っていたりする。
「……はぁ、とんだやからと会ってしまったわね」
シズクは目が遠くなる。
本当にとんでもないやつなのだ、コウは。
コウが消えた後、静かにお湯を沸かし、風呂に入っていたシズク。
突然、空間移動で現れたと思ったら、ガソリンやお湯があるかときた。
あまりの事態に口をぱくつかせ何も言えないでいると、礼はあとでとか抜かして、ガサゴソと荒らして持ち去っていった。
憤然としたまま寝床についたら、またしても突然、現れて。
挙句の果てに家がないから泊めてくれときた。
あまりの厚かましさにキレようとしたシズクに、すすっとリンが頭を下げた。
「私がお話を聞きます」
そう静かに語るリンは、とてもキレイな瞳でキラキラとシズクを貫いてくるのだ。
シズクはとてつもなくお人好しであった。
ましてやこんな美女を困らせるなんて考えたくもなかった。
「案内人の話を聞けるのは、礼と言えるかしらね」
そう言ったシズクは今もなお呆れながらも、決して追い出さずにみんなを泊めている。
案内人と話した事はコウとの馴れ初め程度、謂わゆる恋バナだった。
シズクの能力は物質召喚。
ありとあらゆる完成品を呼び出す事が出来る。
完成品であれば、兵器から日用品そして古今東西を問わない。
その能力が明かされる事はなかったが、思う存分にこき使われる事になるのだった。




