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ロスト  作者: 林 晄史
始まり
10/25

洞窟2

シズク視点です。

「……ここ私の隠れ家よ」


「シズク、迷惑をかける。受け入れてくれて、感謝」


「……リン、あなただけなら歓迎よ」


「シズク、コウと一緒でないと私はいや」


 シズクは静かに吐息をはいた。

こんな羨ましい事態がロストで起きるとは。


 この先の全てが見えているわけではない。

好きだの何だのやってるのはアホだと思う。


 それでも信じれる誰かがいるというのは、どの世界でも変わらない必要な事だと、シズクは思う。


「……で、あんた達はいつまでそうしてるつもり?」


 コウとシンは延々と組手? を続けている。

空間移動と衝撃吸収は最高の組み合わせなのだとほざいて、永遠とやっているのだ。


 シズクの言葉に気づく素ぶりすら見せず、熱は高まるばかり。

これはこれで何だか仲間外れにされてる気がして、少しむくれてしまう。


 リンは可愛いなぁ……と、シズクを優しく見守っていたりする。


「……はぁ、とんだやからと会ってしまったわね」


 シズクは目が遠くなる。

本当にとんでもないやつなのだ、コウは。


 コウが消えた後、静かにお湯を沸かし、風呂に入っていたシズク。

突然、空間移動で現れたと思ったら、ガソリンやお湯があるかときた。


 あまりの事態に口をぱくつかせ何も言えないでいると、礼はあとでとか抜かして、ガサゴソと荒らして持ち去っていった。


 憤然としたまま寝床についたら、またしても突然、現れて。

挙句の果てに家がないから泊めてくれときた。


 あまりの厚かましさにキレようとしたシズクに、すすっとリンが頭を下げた。


「私がお話を聞きます」


 そう静かに語るリンは、とてもキレイな瞳でキラキラとシズクを貫いてくるのだ。

シズクはとてつもなくお人好しであった。


 ましてやこんな美女を困らせるなんて考えたくもなかった。


「案内人の話を聞けるのは、礼と言えるかしらね」


 そう言ったシズクは今もなお呆れながらも、決して追い出さずにみんなを泊めている。

案内人と話した事はコウとの馴れ初め程度、謂わゆる恋バナだった。


 シズクの能力は物質召喚。

ありとあらゆる完成品を呼び出す事が出来る。


 完成品であれば、兵器から日用品そして古今東西を問わない。


 その能力が明かされる事はなかったが、思う存分にこき使われる事になるのだった。

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