暴走する聖女
お待たせしました、二週間ぶりの更新です。
それは、迸るような感情の奔流
彼らを視認し空を跳んだ私のはなった、光の奔流がその愚か者どもの身を焼いた時のあの感覚。
楽しい
嬉しい
燃えろ
爛れろ
そして、そう苦痛のうちに死んでいけ。
「あはっはははっはっははははHっはっははっはっはっはははっはっはっははっは」
笑い続ける私からはなたれるのは、白き光帯の鎌、一撃ごとに命を刈り取る裁きの光。
楽しい、ありがとうクロノ様、世界はこんなにも光があふれていたのですね。
もう、詠唱キーさえも必要なく私の感情のままに、魔力が形をとる
そして、中空に十色の魔法矢が展開されていく。
-「堕ちろ...」
まるで、なじんだ最初から私の心のなかにあったかのような、暖かい闇の包まれて私は
-【陰陽の全天録】<エレメンタルバスター>
を解き放った。
すでに、敵の中に生き残っているものが一人もいないことにも気づかずに。
まずい、これは流石にまずい。
【陰陽の全天録】<エレメンタルバスター>全属性を網羅した下級魔法を魔力が切れるまで撃ち続けるトリップ魔法を発動させたシズネを見て、彼女が正気ではないことに気がつく。
まさか、初めての殺人に浮かされて自我を一時的に喪失したか。
おれに、何か話しかけてきた少女にはアインハルトがすぐに守護に回っている。
周りの騎士どもはすでに腰を抜かして使い物にならなくなっている。
周りを見回して、戦える人間がかなり少ないことに気がついてまた絶望させられる。
「ラミアーーーー!」
「ああ、わかっている」
その返事は、思ったよりも近くから返ってきた。
「魔力の放出感覚と、殺人の快楽でトリップ状態になったんだろう、聖典騎士団でも同じような魔法使いがいたからな」
そう、簡潔に言い残して、ラミアは俺の横を駆け抜けていった。
俺もいったん鞘に戻していた「薄蓮」を抜き放つと刀身に魔力を流し込む。
俺の魔力に反応して紅く染まる「薄蓮」、まるで歓喜するようにその刀身を震わせて薄蓮はその姿を変えた---
それに気がついたのは、馬車から降りてきた少女がクロノに対して名乗りをあげたときだった。
クロノの後ろ、屍の達の上空で静かにたたずんで少女が、いきなり魔法を発動させた。
その瞳を見てすぐ気がつく、魔力干渉、簡単に言えばその膨大すぎる魔力が発散し切れずに外に飛び出そうとしている。
その感覚は熱に浮かされるような感覚に近く、己の意思を無視して暴走してしまう魔法使いも時々いると言う話だった。
そしてそれに気がついたときには、私はすでにかけていた、己の守るべき少女の前まで行くと己の属性魔法【天】<ガイオス>を発動させる。
「我が意思と共に 中天にて顕現せよ」<アイフェマー・シイシングル>
-【全天防護】<ストレマス・アイギス>
己の周り二十メートルを守るように、我が作り出せる最大の防護壁を展開させて衝撃にそなえる。
そして、それがきた。
かつての同僚と同じ状態。
そう判断するのに時間は要らなかった。
ただ、問題はあの魔法使いのように恒久的なモノなのか、一時的なモノなのかっと言ったところである。
まあ、それはあとで、判断すればいいものであるので。
今はただ駆ける、彼女を止めるために。
-【断章魔法】<フラグメント>【極光兵装】<ラグノウェポン>
皮肉なことに、かつて戦ったドラゴンより彼女の魔法量は多かった。
これは、楽しませてくれそうだね。
その事実に気がついて、私のこころのそこがうずきだす。
君は、どこまで私についてこれる、君はどこまで私と渡り合える、君は私を-
殺すことができますか?
そして、十色の魔法矢の雨が振る注ぐ中。
二人の聖女の哄笑が、戦場の中に響き渡った--
後方では、アインハルトが降り注ぐ魔法矢をすべて弾き飛ばしている。
幸いなことに、動けなくなっている騎士どもも一人もけが人は出ていないようだ。
前方では、【断章魔法】<フラグメント>【極光兵装】<ラグノウェポン>を発動させたラミアが次の魔法を発動させないようにシズネを接近戦で押さえ込んでいた。
しかし、その波のように放出され続けている魔力の波になかなか苦戦しているようだ。
まあ、シズネの意識がラミアに向いているようなので、俺もゆっくりと準備ができるしそれに問題は無いのだが。
と、俺の手の中で、その姿を刀から、花のように開いた放熱板と刀身の変わりに、細い砲身に姿を変えた「薄蓮」をゆっくりと構える。
-【断章魔法】<フラグメント>【血華兵装】<ブラドウェポン>
-発動
-「血は血に帰す」-<ブラド・ノア・ブラド>
-「華は天に 天を塵に 塵を無に すべてを灰燼に還せ」
【血冥詩】<ブラド・シア・カインド>
砲身から赤黒い光が、中天に放たれた-
血のなかに暖かい闇を髣髴とさせる、光の帯がシズネとラミアのすぐ横を撃ちぬいて行く。
外した、というわけではなく。
その光は、シズネの魔力のよどみ、その放出され続ける膨大な魔力のみを熱量にかえるように吸収して、そのまま空天に消えていく。
そして、二人の聖女は静かに大地に落ちた。
その二人が、地面にぶつかって怪我をしてしまわないようにと、落下地点に駆けつけた黒い魔王の腕のなかへ。
「たく、二人とも無理しやがる」
「おわったのか?」
二人の聖女を抱きとめて、静かに笑っていた魔王に、銀の麗人が駆け寄ってきた。
「ふむ、寝顔だけ見ればまだまだ子供じゃな」
「確かに」
そういって、笑い声を上げる二人の英雄を、
周りの、人間達は呆然とした表情で見つめていた、いま、目のあたりのしたありえないほうどの光景、その一つ一つが信じられるもので無く。
ただ、呆然と彼らを見守った。
へ、テンプレどおり、すぐに救った皇女様と国にいくと思ったって?
そんなもの、ひっくり返すためにあるのですよ。へ、?これもテンプレ?
といいわけで、シズネ暴走編でした。
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