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狂おしいほどに君を愛している  作者: 音無砂月
第Ⅳ章 オルガの願い

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60.神王は考える

side.神王


人間とは愚かな生き物だ。

学ぶことを知らない。いつだって繰り返す。

自ら絶望を生む。

足元を見れば焼けただれた野原、崩れた建物、腐臭を漂わせる死体が散乱していた。

ああ、汚らわしい。

泣き続ける子供がいた。

それを人は悲劇と呼ぶ。戦争がもたらした悲劇だと。

自分たちが行ったことなのではないか?こうなることは分かっていたはずだ。それでも実行したのではないか。それなのに、それを悲劇と嘆くのか?

理解に苦しむ。

これだけの不幸をまき散らしておきながら更に悲劇を生む戦争へ身を投じる。

愚かで哀れな生き物だ。

「オルガ、なぜ人間如きに肩入れする」

地獄のような運命の中に身を落としてもオルガは愚かな人間の小娘を愛し続けた。

「ただの愚かな人間の小娘であろう。小娘はお前のことなんぞ覚えていないぞ」

「それでも構わない」とオルガは言った。

「愛に見返りは求めない。ただ彼女を愛し続けたいだけだ。たとえこの先どのような未来が待ち受けようとも彼女と出会えたことを、彼女と愛し合えたことを後悔することはない」

そう言ってオルガは笑った。

あの小娘は小賢しいことにオルガの心を完全に手に入れ、篭絡させたのだ。

オルガの力が欲しかっただけだ。

何度そう言ってもオルガは「それでもいい」と言う。しかも「役に立てて嬉しい」のだと。

どうしてそこまであの小娘に拘る?

有象無象いる中の一人ではないか。



『彼が何物であるから愛したわけではありません。彼が彼であるから愛したのです』



あの小娘もオルガと似たようなことを言う。

おまけにオルガの心臓を返しても良いと。無用の長物だと。ただの人に戻ることを恐れないのか。

人間とは傲慢で強欲で恥知らずな愚かな生き物であろう。

なのになぜ、他が為にそこまでする?

どうしてお前たちはそこまで思いやれるのだ?

あれ程の地獄を繰り返し味わわせたのに。なぜ揺るがない。

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