僕の宇宙
弥生さんと僕の好きな物。共通の思い出。宇宙?
なんたそれ?意味わからない。
「思い出せ。必ずある。姉さんにとって、とても大事なことなんだ!」
真央さんがカリカリしていた。さっきから性格変わっているよ。体育会系のノリだ。
「えーと。当日、真央さんが弥生さんを尾行して、行き先を連絡してくれれば解決するのでは?」
「その手があった!あ」
真央さんは勢い良く几を叩く。その結果、店中の注目を集める。見られ過ぎて恥ずかしくなったのか、おとなしくなった。
「なんか卑怯でイヤなんですけど」
真央さんは自分が冷静さを取り戻すため、ドリンクバーのジュースを飲む。
「弥生さんと僕の幸せのために協力宜しくお願いします」
「まあ、そういうことなら」
今後の方向が決まる。この店で目立ってしまっため、プロポーズ会議はお開きにした。真央さんは満足した様だし良しとしよう。彼女は元気良く帰って行った。今度、彼女の専攻を聞いて見よう。保健体育?
真央さんの圧力に負け咄嗟に尾行と言ってしまったが、やはり僕は弥生さんと僕の共通の思い出を見つけなければなるまい。
夜?あーーーHな思い出しか浮かばない。H以外。H以外。うーん。花火?あれは文ちゃんセットだったし。そもそも花火大会なんて直近ではない。
ネズミーランドなら夜上げてる?でも、それは僕と弥生さんの思い出にはない。
答えが出ぬまま就寝。そのまま朝を迎えた。
僕は悩んでいたが弥生さんはなんとも思っていないらしく、朝の定例LINEが入って来る。ヒントかと思うと、
『おはようございます。疲れたー。何してましたか?大ちゃん絡んで来るんですけど。先生何かしました?お休みなさい』
など通常会話だった。ちなみに大ちゃんとは大野さんのことだった。強制拉致され尋問にあったと返信しておいた。
プロポーズの場所が特定出来ないことを考えても仕方ない。今はやるべきことをやろう。伊藤の状況確認に学校へ向かう。今日は出禁の職員室へ出勤。主任と真っ向勝負。
「斉藤君。何度言えばわかる?君は労災休み。来ちゃダメなの」
諦め顔の主任。事務仕事だから仕方ないが、そろそろ見なかったことにして普通に職員室入れてくれないかな。
「主任に重要要件が出来たので報告へ参りました」
「はぁ。談話室行きますよ」
露骨にイヤな顔をされた。面倒ごと持って来るな!ってとこだな。すいません。今回も面倒です。
「村山先生。君も来て下さい」
「は、はい」
僕は村山先生も談話室へ来るよう促す。彼女は突然の話に浮き足だつ。
「で、話はなんだね。村山先生までセットなんて」
談話室に着くなり主任に報告について問われた。
「伊藤昴の進路を大学入試にしました」
「伊藤。伊藤。伊藤。昴君ね。この成績だと大学は難しいぞ」
主任は持って来た資料を確認する。
「はい。難しいです。そこで本人の希望を叶えるべく個人補習をすることにしました」
「おい。おい。また無茶な。教える人間もいない」
そこまで口にしてから主任の目線は僕から村山先生に移る
「そうか。村山先生を使うのか。村山先生良いのですか?ご自分の時間が削られますよ」
「大丈夫です。教師として経験を積ませて下さい」
「まあ、先生がやりたいなら止めません。話は以上かな?」
「はい」
「わかった。じゃ。斉藤先生。帰るように」
「はぁ」
主任は頑固に僕には仕事をさせたくないらしい。仕方なく図書室に逃げることにした。僕らは談話室を後にする。主任は職員室へ戻り、僕と村山先生は図書室へ移動した。
「伊藤はどんな感じですか?」
「はい。美香。恨んでやるって騒いでます」
村山先生。楽しそうだな。別れる心配が無くなったから心に余裕があるのか?お預けは我慢出来るのかな?
「ダメですよ。伊藤に美香と呼ばせては」
「気をつけます。でも三人の時は使わせてください」
「仕方ないですね。でも行動は慎重に。では模試のプリントみせて下さい」
「こちらです」
伊藤のセンター模試のプリントを預かる。テストの結果に驚く。ほぼ当たってない。赤ペンの村山先生による説明文ばかりだ。
「斉藤先生の言われるように中学の基礎を忘れちゃっているようです。昨日の川田さんのキレッぷりは凄かったですよ」
だんだん、伊藤が可哀想になってきた。頑張れ。
「くそ、葵のバカ力め」
今日も川田に引き連れる伊藤。もうネタだよね。
「今日は教科書丸写しです。どうぞ」
村山先生は中学生の教科書を移動に手渡す。
「これをどうする?」
「ひたすら書け」
三者三様楽しそうだ。そっちは任せて僕は自分のことをする。内申書を作らなきゃ。パソコンを取り出した。暫くはペンを走らせる音とキーボード叩く音しか聞こえなくなる。
静寂。資料を作りながも弥生さんのことを考えていた。本好きな彼女。やっぱり一番の思い出は図書館なのでは?
ふいに三人を見る。真剣に課題に取り組んでいた。その中に弥生さんの姿があった。驚き勢い良く立ち上がる。
「先生どうしました?」
川田に声をかけらる。
「あぁ。なんでもない」
「?」
「俺も飽きた!」
伊藤が便乗。どうやら僕は勉強の邪魔をしたらしい。
「そうね。休憩しようか」
「はーい」
村山先生の言葉に三人はペンを休めた。川田が飴やチョコを皆に差し入れてくれた。
「先生やっぱり変ですよ?疲れてます?」
僕のところにも飴とチョコが回ってくる。
「本当、なんでもない」
何でもなくはない。今日、初めて川田と弥生さんが重なって見えた。




