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もやもや

 僕は考えごとをしていた。


 弥生さんの高校時代の彼氏。弥生さんの母親が別れさせた男。どこぞの不良か?


「過去の想像上の彼氏より、次失敗しないプロポーズです。絶対上手く行きますよ」


 元彼が実在することを大野さんは知らないのだ。


「次か。上手く行けば良いですけと」


 お茶を濁す。


「弥生先輩の彼氏って二次元なのでは?」


「わはは。ありそう」


 利き手にまわっている三浦さん、海野さんは楽しそうに雑談する。二次元彼氏なら、とても楽なんだか。


「弥生の彼氏は本よ。あと、映画なんかも好きね。今度やる奴また見に行くんじゃない?」


「今度やる映画?」


「ハリウッド映画の宇宙戦争の続編よ。なんであんなの好きなのか。私には理解出来ない。」


 ぼやく大野さん。


「僕も好きなんで今度誘ってみます」


 強制参加の看護師食事会は時間が来て終了となった。彼女は達に会話を合わせたが、後半はほぼは聞き流していた。どうしても元彼と弥生さんの関係が頭から離れなかった。


 例えばの話として、伊藤と川田が付き合ったとしたら母親は止めまい。あの二人は気心が知れて仲良しだからな。川田が変な男と付き合ったならそれなら別れさせる。そういうことかな?


 ダメ男に引っ掛かった弥生さん。なんか想像出来る。今、元彼が再会を求める理由?看護師は意外と稼いでいる。その紐になりに来た?あり得る。守らねば。そんな男に弥生さんを渡してたまるか!その前提だと弥生さんの職業バレしてる?


 悶々と想像を膨らませながら病院からの家路につく。


 我ながらアホじゃないかと思ってしまう。そもそも弥生さんがそいつを選べば僕は手出し出来ないじゃないか。真央さんの心配ごとはここにあるのか?


 スマホが鳴る。村山先生からのLINEだ。


『斉藤先生。今日は図書室に来られますか?』


 しばし返事を考えたが行かないと連絡する。それよりは真央さんに連絡を取って見よう。何か打開策があるかも知れない。


『今日は行きません。村山先生。川田先生。宜しくお願いします』


『了解しました(笑)』


 川田は伊藤に取っては間違いなく先生だ。村山先生に連絡後の真央さんに連絡を取って見る。


『斉藤です。すいません。プロポーズ失敗しました』


 おや?メール着信ではなく電話が来た。


「もしもし」


『何やってるんですか!』


 電話越しにもう剣幕の真央さんが出た。


「反論の余地がごさいません」


 もう。平謝りだ。


『何があったんですか?』


 事の成り行きを真央さんに説明する。すると、


『まず、場所を考えましょうよ。大事なプロポーズです。いくら好感度が高くても、変なことするとすぐマイナスになりますからね』


 意外にも落ち着いたコメントをもらった。場所ね。時間帯もまずかった。


「肝に銘じます」


『そこまで落ち込まなくても。けしかけた私も悪いですから。斉藤さんのやる気は感じました。失敗しないプロポーズを一緒に考えましょう』


「宜しくお願いします」


 このあと、真央さんと合流することになった。場所は弥生さんのマンションの近くのファミレス。


「さてと。次の作戦です。その前にヒアリングです」


「ヒアリング?」


「斉藤さんと姉との思い出の場所はどこですか?」


 弥生さんとの思い出の場所?どこだろう?


「そもそもお見合いなんで、思い出に残りそうな場所はないですよ」


「いえ。あるはずです!思い出して下さい。そこでプロポーズです!」


 今までの弥生さんとの思い出?思い出?


「怪我をして、入院。目が覚めた時に抱きつかれた」


「それです!斉藤さんの姉の思い出は病室にあります。そこでプロポーズです」


「今朝、病院前でプロポーズ失敗したけど」


「あぁ。そうでした。病院以外で思い出の場所は?」


 弥生さんあまり出掛けた記憶がほぼない。おうちデートばかりだ。その他?高級レストラン?ビーフシチューを食べた店?あとは......


「図書館?」


「地味」


 一言。真央さんは呟く。


「いや、弥生さんが図書館を指定で」


「あの読書オタクめ。昔、姉の本が邪魔で勝手に捨てようとしたらもう剣幕で怒られたことあります」

 

「そりゃ人の物勝手に捨てたら起こるでしょ」


「スマホ鳴ってますよ」


 真央さんは僕のスマホが鳴っているのに気づく。僕は内容を確認する。


「誰からです?」


「弥生さんです」


『おはようございます。今朝のことは特に怒ってませんよ。気にしないで下さい』


「何、書いてます?」


「今日の出来事は無かったことにしてくれるって」


「すぐ返信!」


「は、はい」


 返信するためスマホをいじる。僕が文章を作り終わる前にスマホがなった。


「あぁ。負けちゃった」


『プロポーズ自体は嬉しかったです。ちょっと、イタズラ心が芽生えました。そこで問題です!今度の休みの日にもう一度プロポーズして下さい。時間はお昼の12時。私と先生の大切な思い出の場所でお待ちしています』


 なんだ?この文章。


『ヒントは宇宙。思い出してくれることを期待します。思い出さなくても今まで通りお付き合いは続けますからあまり深く考えないで下さい』


『ではお仕事行ってきます』


 ど、どうすれば良い?


「手が止まっている。返信遅れてる!」


「待って真央さんこの文章どう思う?」


「何これ?ヒントは宇宙。思い出せ!斉藤!」


 年上呼び捨てだし。首閉めてるし。真央さん興奮しすぎ。

 弥生さんと宇宙?プラネタリウムなんか行ってもいないし。夜?月?星?なんだ宇宙って。


『お仕事頑張って。絶対弥生さん見つけるから、もうちょっとヒント』


わからん。


『先生も好きな物です。私は偶然も必然だと思ってます。待ってます』


 僕が好きな宇宙?なんだ?

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