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姉妹

 家庭訪問が終わり、ぽっかりと時間が空いた。弥生さんは今日も仕事。日勤の最終日だ。明日は休み。病院なら一緒にランチ取れるかな?丁度、今は昼時。こないだの弥生さんはお昼過ぎてからのランチだったな。連絡してみるか。


『お昼は何時からですか?一緒に食べませんか?』


『すいません。今日はお昼なしです。身動き取れません』


 まだ怒ってる?優柔不断なのは僕だけど、謝る時間くれないかな?このLINEに強引な思いを返信するのも怖いな。単純に忙しそうにも見える。どちらでも今日の弥生さんはNG。諦めよう。

 看護師って激務と聞くからな。今まで無理してた可能性もある。休ませてあげた方が良いか。


『ごめん。頑張って』


 当たり障りなく、これなら問題なかろう。昼飯どうしよう。


 時間はある。ふらっと弥生が住んでいた街へ行ってしまった。未練だらだら(たらたら)で自分でも情けない。時間があった。あったから、僕の知らない彼女の生活が気になった。まるっきりストーカーだ。

 結婚前提で付き合っている彼がいるんだったか。会わないでと頼まれている。偶然会う分には問題ないはずだ。


 決して彼女の家に近づく訳ではない。せいぜい最寄り駅周辺。なんとなくの散策だ。

 彼女が通ったであろう。高校を外より見る。5ヶ月しか通っていない。彼女にとって思い出が出来たであろうか?


 大学?僕は弥生の進路を聞けずにいた。伊藤と同じようにフリーター?いや。あの母親がそれを許すとは思えない。

 この街に進学するような場所がない。つまり、高校卒業と共に何処かへ行った?弥生はこの街に元々住んでいない。足跡も何もないような気がしてきた。


 駅に戻り軽く昼食を取る。完全なる無駄足だった。


「郁也さーん」


 駅のホームで声をかけられた。聞き覚えのある声だった。振り向くと小学生と若い女性が立っていた。


「文ちゃん」


 弥生さんの妹、文ちゃん。隣には黒髪の清楚な女性が立つ。弥生さんが言っていた。真ん中の子の妹かな?彼女は僕のことを警戒し文ちゃんを隠した。


「け、警察呼びますよ」


「警察?待って自己紹介する。僕の名前は斉藤郁也。弥生さんとお付き合いしている者です」


「お姉ちゃんの彼氏!ごめんなさい。妹の真央です」


 自己紹介をすると平謝りして来た。無理もない。こんな見ず知らずのおっさんが小学生と知り合いなんて無理がある。文ちゃんは真央さんより解放されていた。


「郁也さん。なんでここにいるの?」


「あ、なんとなく」


 理由が元カノの足跡探しなんて言えない。しかも偶然会えたらとか思いっていたし。


「私達、お洋服買いに行くの!一緒に来る?」


「文、失礼だよ。すいません」


 駅のホームからすると方向は同じようだ。時間はある付き合うか。


「文ちゃんの服か僕も見たいかな」


「じゃあ行こう!」


「わかった」


 僕と文ちゃんは意気投合。がっちりと握手を交わす。真央さんはボーゼンと僕らを見ていた。


「文、ダメですよ。斉藤さんに迷惑がかかります」


「あっれ~。真央姉、お姉ちゃんの彼氏の品定めしてやるとか、言ってなかったっけ?」


「言ってない!」


 姉妹の会話は見てる側からするとほのぼのする。やってる本人達は真剣なんだろうけど。文ちゃんが家族の中心で、暖かい家庭が見えるようだ。末の妹が無茶苦茶カワイイのだ。


 三人で電車に乗り込む。僕と真央さんの間に文ちゃんが座る。


「文、大人しく座っているから、どうぞ。真央姉質問タイム」


「ふ、文」


 真央さんは文ちゃんを見、そのあとで僕を見直した。一度呼吸を整えた。


「姉のこと......いえ」


 言葉が止まる。首を振りもう一度呼吸を整えた。


「えー。斉藤さんって高校の教師ですよね?どちらにお勤めですか?」


「旭丘です」


「!」


 なんだ?真央さん。驚いて固まったぞ?


「私、教育学部の4年生なんです。9月に旭丘で教育実習の予定です」


「そうですか。頑張ってください。教員採用試験はどうですか?」


 弥生さんの妹が、うち来るの?なんかやり辛いかな。教員採用試験はまだ終わっていないはずた。


「二次に向けて勉強中です。今日は息抜きで、文にねだられて洋服を見ることになったんです」


「大変ですね」


 ついつい、文ちゃんを見て呟いてしまった。


「郁也さん、真央姉ヒドイ。文がわがまましてるように聞こえるじゃん」


 僕の視線に文ちゃんが反応した。


「文ちゃん、ごめんね」


「文、機嫌直して」


 二人で文ちゃんに謝る。文ちゃんは多少わがままでも許される。立花家のアイドルだ。


「旭丘ってどんな学校ですか?」


真央さんの学校の質問は続く。


「普通ですね」


「普通じゃないですよ。県内で一二位を争う進学校ですよ。その上、暴漢からも生徒を守る先生がいる学校って凄くないですか。是非お逢いしてみたいです。どんな先生ですか?」


 僕のことだな。聞いていて恥ずかしい。そこそこ有名なニュースになっていたか。


「凄くはなく、情けないけど僕のことかな?」


「生徒を体を張って守った先生って斉藤さんなんですか!」


 真央さんは興奮して立ち上がっていた。


「真央姉落ち着いて」


「あ」


 真央さんは文ちゃんに注意され、回りを見てる静かに座った。


「入院先で弥生さんにもお世話になりました」


「お姉ちゃんの病院に入院したの!」


 再び立ち上がる真央さん。この子、沸点が低い?


「真央姉」


「あ」


 真央さんはその後、下を向きしゃべることがなかった。穴があったら入りたい、とはこのことだろう。あんまり沸点が低いと教師には向かないのだが。教師はポーカーフェイスが基本だ。


 電車に揺られ着いた場所は僕の家の最寄り駅だ。つまり、洋服を買う場所は僕の住むショッピングモール?小学生の着る服?あそこブランドしかないよ。高いよ。


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