日曜日の昼過ぎ
日曜日の昼。ゆっくりと眼を覚ます。金土を慌ただしく過ごした反動だ。
回るお寿司で夕食を食べた後、立花姉妹とは駅前で別れた。文ちゃんは弥生さんの家に1泊。弥生さんは今日から夜勤が始まると言っていた。今時間は仮眠中であろう。
今日はやることがない。というよりは夏休み中は労災扱いで休むように言われている。この一ヶ月は部屋にいる時間とリハビリだけだ。
学校よりパソコンを持ち帰っているので資料作りは出来る。月曜日に学校に電話して資料を飛ばしてもらおう。
今日は日曜日だ。寝よう。二度寝。再びベットにインした。
数時間たった頃、部屋のチャイムがなる。インターホンごしに誰かを確認する。頭をボリボリかいた伊藤だった。
「どうした?進路相談か。」
ドアを開け伊藤を招き入れる。
「ああ、コイツの進路相談。」
「キャッ。せ、先生。こんにちは」
伊藤の後ろにいた、川田が押し出され前に来た。
「川田の進路か。川田の家に家庭訪問いくか?」
「今日は違います。でも家庭訪問はいつかお願いします」
「じゃ。なんだ?」
その問いに川田はたじろぐ。伊藤は口笛をふく。この二人がわざわざ揃って我が家に来る理由?昨日も会っているじゃないか。昨日?昨日の件。
「まあ、外は、暑いだろ。中に入れ」
「おじゃしまーす」
「俺帰るわ」
「待って昴!」
川田は伊藤の腕をがっちり掴む。逃がさないつもりらしい。つまりは伊藤の進路か?
「伊藤、諦めろ。川田はお前のために骨を折ってここに来てるんだから」
「俺の為ねー」
伊藤は流し目で川田を見る。何か言いたそうだ。
「二人ともアイスコーヒーでいいか?」
「はい。それで」
アイスコーヒーを入れリビングに向かう。伊藤と川田はなにやら相談事をしていた。僕に相談する内容や順番でも決めていたか?相談されると言うことは信頼されていると言うことだ。教師冥利につきる。
「どうぞ。それで何の相談だ?」
「葵」
「あ、え。、えーと」
「面倒くせえ。昨日、花火で一緒にいた人は彼女?奥さん?」
「は?」
よくわからない質問が飛んで来た。なんというか、期待はずれ。僕のプライベートを探りに来たのか。
「いや、だから彼女なのか?奥さんなのか?娘なのかが気になって勉強出来ないんだと」
伊藤は僕のプライベートには興味無さそうだ。川田の代わりに聞いて来たようだ。
「彼女です。まだ妻ではありません。彼女の妹が冗談でパパと呼んでみただけ。わかったか?」
「だって」
伊藤は川田に言って聞かせる。本当に興味ないらしい。
「彼女ですか。その、結婚を予定していますか?」
川田がやっと重い口を開く。アレだよな。2年待って欲しいってヤツ。どう答えるのが正しいんだ?結婚は......
「未来のことはわかりません。結婚するかも知れないですし、別れるかも知れないです」
「そ、そうですか」
あやふやな解答をしてしまう。現状はどちらとも言い難い。僕にはどれも実感がない。
「首のかわ一枚残った感じ?葵は大変だな。俺、帰っていいか?」
「うん。昴ありがと」
「じゃ、先生失礼します」
「伊藤、お前本当に付き添いだけか。川田はまだ僕に用事があるのか?」
「はい。少し」
伊藤の見送りに玄関まで進む。
「先生、お願いです。葵を抱いてやってくれませんか?」
「アホ、出来るか」
「俺は先生と生徒の恋は否定しないですよ。何かあっても黙っていますから」
「否定しろ!先生が首になるぞ」
「ばれなきゃ、いいんですよ。ではお邪魔しました」
伊藤は川田を残し帰って行った。恐らく川田に気を使った物だろう。ちょっと待て。リビングに戻ったら裸の川田が立っていたりしないだろうな。まさかね。強硬手段に出るようだったら説教だな。押しきられて理性が飛んだらヤバいな。
恐る恐るリビングへ戻ると川田は普通に座って待っていた。
「で、川田の残りの用はなんだ?」
「か、確認です」
「確認?」
「はい。二年後と言いましたが、学校卒業したら問題ないですよね?」
「まぁ、倫理的には」
「卒業したら付き合って下さい」
彼女は必死に頭を下げる。
「ごめんな。川田のことはカワイイと思っているよ。だが今付き合っている人を裏切ることは出来ない」
僕の解答に驚きもせず。川田は笑顔だ。
「いいんです。私の一方的な片思いで。別れた際の保険で良いです。私の気持ちは変わりません」
「僕に都合良すぎだろ」
「惚れた女の弱みです」
女子高生らしからなぬ発言をする。川田、ゴメンな。弥生さんに会ってなければ、素直にその条件を飲んだかも。
「わかった。期待はするな。お前のは望み薄だから」
「はい。H無しでも積極的にアピールして行きます。まずは」
伊藤は立ち上がり僕に抱きついて来た。
「いや、川田。ダメだろ」
「ただ、抱きついているだけです。あの女の子がやっていることと一緒じゃないですか」
「いや。違うから」
「これくらいは我慢して下さい」
仕方なく川田に抱きつかれる。まあ、文ちゃんだと思えばなんとかなるか。そうだよな。川田だって子供なんだ。これくらいはスキンシップのうちと割り切ろう。
川田はしばらく抱きつくと満足したらしく離れてくれた。顔は赤い。自分の行動がだいぶ恥ずかしいらしい。
「ありがとございました」
「川田、僕じゃなく、お父さんにやってやれ。何でも言うこと聞いてくれるぞ」
「そんな父ではないです」
「昨日、模擬父親を体験したからわかるぞ。効果抜群だ」
「考えてみます。では失礼します」
川田はスッキリした様子で帰って行った。




