家族とは?
見合い後、馴染みに呼び出され僕は居酒屋に来ていた。悪友と飲み会の最中である。
この男、何を思ったか、ファミリーでやって来た。悪友の名は大和。小中高と同じ学校に通った中である。こいつは30の時、同じく幼馴染みと結婚していた。妻は美咲。息子の長門君5歳。娘の渚ちゃん3歳。カワイイさかりだ。
でも、ちびっこ二人を居酒屋になんかに連れて来るなよ。
「で、どうだった?」
乾杯の音頭からすぐ大和から出てきた言葉だ。
「何がだよ」
当然のように僕はしらを切る。
「見合いに決まってるだろ」
そりゃそうだ。それが知りたくて呼び出したんだろ。
「どうも何も付き合うことにしたよ」
立花さんとの本当に決めたことは話さない。安心させるだけの決定事項のみ伝える。その話を聞き馴染み夫婦は目を丸くする。
「おめでとう。ついにエリート郁也君も年貢の納め時がきたね。」
「おめでと」
大和の嫁と息子に嬉しがられる。
つっか。これ、僕に妻と子供は良いぞの大和の作戦だな。ちょっと面白くないので、奥様をからかうことにする。
「美咲が僕と付き合っていればこうはならなかったんだがな。美咲、今さらだけどこんなのと別れて僕と結婚しないかい?」
「ママはぼくと結婚するの!」
美咲はポカーンとする。隣の大和は演技であわてて見せる。そこにカワイイ、ボディーガード。長門君にナンパを阻止された。長門君やるな。
「あははは。相変わらずだね。彼女が出来たんだからしっかりね」
美咲は楽しそうに笑う。君が大和を諦めれば君の隣には僕の可能性。違う未来もあったのだが。
「ママ。サーモンたべる」
「サーモンね。ちょっと待ってね」
美咲は僕と息子の応酬に苦笑する。話の意味のわからない娘の渚ちゃんはせっせと自分の食べたい物を要求する。美咲はすぐに娘の要求に答えていた。くそ、二人共カワイイぞ。
「もう、36だろ。そろそろ決めろや」
嫁をナンパされている夫より、ちゃかしがはいる。
「だから決めたって」
ビールを煽りながらそのちゃかしに対応。実際、立花さんと付き合うことはない。心の中で、このファミリーに謝る。
「がんばれよ。子供カワイイぞ」
「お前ら見てるとそう思う」
子供カワイイに対しては本当に同意だ。なんだこの生物。別の人種か?ってぐらいカワイイ。
「でもな、子供よりこいつといるのが最高に幸せなんだ」
「ちょ、ちょっと。今はダメ」
大和は美咲の肩を抱き自分の方へ引き寄せる。自分は幸せだぞとアピールする。まん中の渚ちゃんが潰れそうだ。
「そっち!のろけやがって」
「ぼくも真ん中はいる!」
長門君も参戦。夫婦二人の間に挟まる子供二人。絵に描いたような幸せ家族だ。
「美咲を手に入れた瞬間なんて最高に高揚した」
「もう」
この夫婦は僕の前でイチャイチャし始めた。強引に行く大和。美咲はイヤがって見えるが真に嫌がっているわけではない。
彼らは普通に僕の前でキスをする。そのままホテルへ行ってしまえ!叫びたくなるぐらいだ。
「ぼくもママとチューする」
「わたしもママとチューしゅる」
子供達の二人も美咲に絡みチューをせがむ。母親は拒ます、普通にチューを受け入れた。
「これが幸せって奴だ。郁也お前も頑張れ」
「へいへい。努力するよ」
このファミリーに圧倒的な幸せを見せつけられる。
僕だって知ってるよ。僕も初めてな彼女を手に入れた時は高揚した。彼女以外の事を考えられなくなった。
でも、僕らは別れるしかない運命だった。