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悪魔の樹(あくまのき)  作者: 一喜一楽
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(1-19)ミソクラス

◇ミソクラス


 火曜日。今日は、TD社大会向けの演技を見直すつもりでいる。昨日修正した演技に対して、先ずは、最初の大技の後方伸身二回宙返りを、後方伸身三回宙返りに、二回目の大技の後方伸身宙返り二回半捻りを、後方伸身宙返り三回半捻りに、さらに最後の大技、後方伸身宙返り三回半捻りを四回半に変更する。

この時点では、全く回転不足でダメなので、ここからが本番。


 可動部を全部見直して、微調整を随時追加して、演技を見てさらに微調整を繰り返してを延々を続けて行く。これだけを行うだけで、既に夜になっていた。昼食も取らずに作業して居たので、お腹が空いてきた。今食べると、母が帰って来てから作ってくれる料理が食べれなくなるので我慢する。


 後、もう一歩という所まで来ている。四回半捻りは完成したが、伸身三回宙返りが未だ出来ていない。今のままだと片足を四分の一歩前に出さないと着地出来ない感じだ。剣が無ければ大丈夫なんだが意外に剣のダメージが大きい。


 集中しすぎて気付いて居なかったメールを見ると、桜さんと、泡吹さんからメールが来ていた。桜さんのは昼位に着信している。ヤバイ無視してしまった。泡吹さんのメールはつい先程。


 桜さんのメール内容は、ちょっとお怒り、呆れ、賞賛が入っていた。それと、TD社の大会頑張ってねって。取り敢えず、ごめんなさいと返信しておいた。でも、昨年はもっとタイトなスケジュールだったような……違いますね、今年の方がマージンが無い状態か。


 泡吹さんのメールは、期待していた内容だった。他社のSキューブでフィギュア出場しても良いとの事。


 泡吹さんのメールには、『使用Sキューブは未だ未定ですが出場しますので、ワイルドカードをお願いします。出来ればギリギリまで出場登録を遅らせて下さい』と返信しておいた。土壇場になって花梨が使えないと判断する可能性が有るのと、妖精さんには未だPO社のフィギュアに出場するのを知られたく無いのが理由だ。


 メールを送った後、作業を続ける。どうにも後少しが上手くいかない……気分を換える為、フィギュアの方を考え始める。別なことをすれば何か閃くかもしれないしね。


 先ずはPO社のSキューブを動作させて見る。動作させて判ったのは、ローラーブレードを装着すると、バランス機能が切り替わるようだ、


 ローラーブレード装着時のバランス機能はもの凄い優秀だ。これを作ったPO社の技術者は凄いと思った。絶対に転ばないでは無いが、結構回避する。モーターを併用してバランスを取るようにしている。転ばないのは逆に面白く無くなるので、この絶妙な制御は見事だろう。


 もう一つ気付いた事は、競技の映像を観ていて気になって居た所が判ってきた。何かと言うと、スラロームとフィギュアは、PO社のバランス機能をONにしているようだ。人間の競技映像と較べて、もう少しSキューブの競技はスピードが出ていても良い感じがしていた為、気になっていた所だ。


 妖精さんも、ONにして競技している様だ。他の人と違ってOFFでも殆どふらつきの無い問題無い演技のような感じだが……OFFに出来ない訳では無い筈なので、自作するのが非常に難しいのだろう。

僕は、花梨で出場する予定なので、これを作らないといけない。だが、此処に勝機が有ると思えて来た。自分で作ってスピードを上げればジャンプもステップもレベルが上げられる筈だ。


 少しバランス機能を作りこもうと始めて見たが、さっぱり判らない。自分が、ローラーブレードで転ぶ感覚が判らないからだ。これは舐めていた。このままじゃ普通のスケーティングすら出来ない。


 仕方無いので、財務省に頼み込む事にした。一応購入するつもりの物はネットでチェックしておいた。父と母が帰って来て、一緒に夕食を食べてる時に、素直に、ローラーブレードが欲しいのでお金くださいって。


 ちゃんと理由を説明したら、納得してくれてお金を出してくれた。その日のうちに、注文をして明日午前中に到着予定。さすがアメージング・ゾーンの通販は優秀だ。


 TD社の大会向けは、PO社の事を考えているうちに閃いたので修正は終わらせておいた。

ついでに、花梨用に、重さ、ローラーの滑り具合、足首周りの稼働範囲を定義したローラーブレードのデータを、PO社のデータから抽出して作成しておいた。予定では、これにバランス機能を追加するつもり。


 今日は、ここ迄で時間切れタイムアウト。



 水曜日。呼んでないけど、真弓がこれから行くねって朝一〇時に電話してきた。うーん邪魔されるのかな? 邪魔されたら追い返そう。あんまり構ってる余裕が無い。


 真弓が一〇分もしない内に来て、いきなりどうなったって聞いてきた。仕方無いので昨日仕上げたTD社の大会向けの演技をエミュレーターで観せてあげた。


「凄いね」


 って言ってくれたが、心のなかでは『それだけかい?』って思っていた。まあ良いけどさ……。


「これで勝てるの?」


 に対しては、負けないと思うけど勝てないかもねって。自分では、このSキューブの限界まで動かしたつもりなので、これでダメなら諦めもつくかな。


 真弓には、注文した僕用のローラーブレードが届いたら公園に行くってからって言って、午前中は、花梨にローラーブレードを装着して、妖精さんの演技を見ながら演技のプログラム作成をしていた。


 真弓風に言わせるとギュッとしていた。真弓が横からちょっかい掛けて来るので進捗は悪いが、真弓の遊びの方が無茶苦茶上手い。まったく、なんなんだ真弓は適当が完璧なのは納得いかないぞ。PCでのグリグリはまだこの後。


 午前中に宅急便が、届いたので、午後から公園に行く事に、今日も真弓がお昼を作ってくれた。僕も手伝いましたよ。


 なんてメニューになるのかな? 真弓特製ミートナポリタン? って感じ。たまネギ、人参、ピーマン、ウインナー(スライスして細かく)、青菜、(これがポイントみたい)マッシュルームを炒めて、用意したミートソース半分とパスタを軽く絡めて炒めた上に。残りのミートソースを掛けるもの。


 午後になって、公園に行こうとしたら、真弓が花梨ちゃんも連れて行こうと言ってきた。


 重いから嫌だと断ったんだけど、私がローラーブレード持つからと言って来た。ドヤ顔されてもそっちの方が軽いじゃん。


 女の子に重いの持たせる訳にはいかないので渋々花梨も持って行く事に。持つのが面倒なのでメットと肘、膝のサポーターを真弓に無理やり着けさせた。花梨を動かすのにノートPCも持つ必要が有るのでそれも持って公園に行った。


 公園での目的は、転ぶ事。ローラーブレードで遊ぶ事では無い。真弓は絶対勘違いしている筈。


 公園に着いて、真弓から、ローラーブレード、ヘルメット、肘、膝のサポーターを奪い取り自分に着ける。真弓が奪われ無いように必死に抵抗したが、ちゃんと後で貸してあげると言ってなだめた。持って来たトレーナーを腰に巻いてお尻を保護する。まあ気休め程度だけど。


 早速、ローラーブレードで転んで見る。かなり、お尻が痛い。想像以上にローラーが滑ってバランスを崩す感じだ。


 横で、「下手くそ!」って言って真弓が笑ってやがる。わざと転んでるんだっちゅうの。判れ! 真弓は花梨をギュっとしてPCでグリグリしながら、僕の転んでるのを見てはゲラゲラ笑っている。


 片足でバランスを崩す様に滑って見て、同じように転んで見る。意外と、前方向は倒れにくい個人差なのかもしれない。真弓が笑って煩いので普通に滑って見せる。(ちょっとドヤ顔)運動神経は真弓程では無いが十分人並みには有る方だ。多分ね。普通に滑る分には困らない。


 流石にいきなりバックで滑るとか、スラロームの選手の様につま先だけとか、片足上げたままとかは無理だけど。


 真弓がウズウズしてるのが判って来たので真弓の所に戻って、ベンチに座って、真弓にローラーブレードの道具一式を外して渡そうとしたら。真弓が、「見てみて!」って言って来たので見てやると、ローラーブレードを装着した花梨を動かして僕に見せて来た。


 真弓ちゃん、僕凹むから。なんでそんなに簡単に動かせちゃう訳?


 真弓が、ローラブレードを付けて滑り始めた。少しサイズが違うけど気にしなくて良いだろう、実際滑って遊んでいるし。真弓が遊びで作った花梨のプログラムを見ていると、バランス機能が入っていない。ん、ん、ん? 真弓何やったんだ?


 真弓が、ローラーブレードで滑りながら僕に声をかけてくる。


「樹くん、見てみて! 凄いでしょう」


 君はなにもん何だい? なんで、バックで滑れるの?


「はぁ、凄いね真弓ちゃん」


 トーンが下がった感じで返事をした。


「何それ、もっと驚いてよ」


 十分驚いてるよ、君の才能にね、ため息が出るくらい。


「じゃあこれは?」


そう言って、片足で、つま先で滑って観せてきた。更に、スラロームの様な動きも見せてくる。思わず絶句してしまった。僕の方に寄ってきて、「どうしたの?」って聞いてきた。


「真弓ちゃん、スケートした事あるの?」


「無いよ」


 ああ、そうですか、君は〝なんとかと天才は神に等しい〟ってことわざ通り神に等しいレベルですよ。悪魔クラス超えて神話級ですよ。今度ミソクラスと呼んでイジメてあげよう。でも、真弓の事だから〝じゃあ樹くんは醤油クラスね〟とか言いそうだ。ラーメンと勘違いしそうだな。


「樹くん、さっき何でワザと転んでたの?」


「花梨に、ローラーブレード付けた時のバランス機能を入れようと思ってね、どんな風にバランス崩すか判んなかったから転んで見たんだ」


「なんで、そんな事するの? 転ばないプログラムにすれば要らないよ」


 へっ? なんですと、もう一回お願いします。


「な、なんて言ったの真弓ちゃん」


 そう言ってる所で、真弓が滑っていった。


「ほら、こんな感じ。見て!」


 真弓が、誰でも出来るよって感じで、いきなりシングルアクセルして見せて戻って来た。ちょっと着地がふらついたけど。


「初めてだったから、少し失敗しちゃったからバランス取っちゃったけど、ちゃんと着地すれば別にバランス機能なんて要らないよ。人間じゃ無いんだしSキューブなんだから、そういう制御にすれば良いんだよ」


 真弓が凄い事を言って来た。でも良く考えればその通り何だけど、では何でPO社の大会の出場選手は、バランス機能をOFFにしないんだ?


 違うな、そっちは考えても答えは出ない。推測でしか無いだろう。真弓がダンスで最初苦労してた時にバランス機能をOFFにするのを教えたのは僕だ。


 僕は何でバランス機能がフィギュアで必要だと思ったんだ?


 真弓は、PO社の競技でバランス機能がONになっている事を全く知らない筈だし、真弓ならそんなの無しでプログラムを作り上げてしまうだろう、現に真弓が遊びで作った、花梨がローラーブレードで滑るのを見たばかりだ。


 この前の大会での会話も影響してるのか、転んだらSキューブのボディが痛む。殆どの選手が、全身を包んだ衣装で出場している。大会の動画を見ると、全員がバランス機能をONで出場している。


 だから僕は、花梨にもバランス機能を搭載しないといけないと判断したのか。バカだな。だけど真弓のお陰で気づいた。こんな複雑な機能は、大会に出るだけなら不要だ。その方が簡単だし良い演技が出来る筈だ。実際の演技のプログラム開発の難易度は上がるけどね。


「真弓ちゃん、有難う良く判ったよ。そうだね転ばない制御にすれば良いね」


「でしょ、その方が簡単だよ多分」


 いやそれは無いと思うよ、僕は凡人だからね。でも、やることは見えてきた。


「真弓ちゃん、そのローラーブレード持って帰っても良いよ、当分使わないから」


「うーん、良いや樹くんが持ってるって言えば、買って貰えると思うから。今度のPO社の大会でお店が有るならそこで買っても良いし」


 それ、結構高いよ、CC社の最新と殆ど同じ値段だからね。簡単に買って貰えないと思うよ。と思ったけど真弓も昨年、商用利用の件でお金貰ってるんだよな。まあ僕と同じで親が管理してると思うけど。


「じゃあ、真弓ちゃんが買ったらローラーブレードで遊ぼうか? どこか探せばハーフパイプとかスラロームとか出来る所有ると思うし」


「うん。じゃあ大会終わってからね」


 時間は早いけど、目的は果たした。PO社の大会のプログラムも何とか出来る気がしてきた。ちょっと無駄足感も有るけど、真弓が遊びに来てくれて非常に助かった。さすがはミソクラスだ。


 真弓が未だ遊び足りなさそうなので、付き合ってローラーブレードで夕方まで遊んだ。僕も真弓程じゃ無いけどバックで滑れるようになったし、真弓はスピン迄出来るようになってた。


 散々遊んで、真弓に手伝って貰って家まで荷物を運んで貰い真弓を送ってから、フィギュアの演技に取り掛かった。


 全く新規で演技を構成するのは諦めて、昨年の妖精さんの演技構成をパクる事にした。ただし、最終的に間に入る要素は全てグレードアップだ。


 スピードが半端無く上げられるので、かなり見応えの有る演技になるはず。まだ転ぶのは無視してとにかく全体流れを作り上げるのを優先した。金曜日には、TD社の場所が借りれるので、そこで調整しようと思う。



よろしくお願いします。

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