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悪魔の樹(あくまのき)  作者: 一喜一楽
11/35

(1-08)製品発表会当日

◇製品発表会当日


 翌日、土曜日ちゃんと起きましたよ。花梨が、僕の上でジャンプして来てグエッっとなったので目が冷めました。あの起こし方はちょっと止めよう。五時半に起きるのは辛いです。母に起こされるよりはマシだけど。


 速攻で着替えて朝食を摂り。ダッシュでラジオ体操へ行って戻ったら、七時には泡吹さんが迎えに来てくれました。今日は父も母も一緒に行きます。久しぶりに青木さんに会うんだって。結局タクシーでは爆睡です。


 八時過ぎに会場へ到着。皆さんもすでに準備始めています。女性はTD社お揃いの制服でビシッってしています。今日の関係者は会場周辺のホテルに宿泊して準備万端のようです。僕もホテルで良かったんだけど。どう考えてもタクシーの方が高いよね。泡吹さんが言うにはそれは出来ませんとの事。うーんそうなのかなぁ。


 発表会の会場では、僕が来る前にすでにSキューブのリハーサルは済んだらしい。特に問題は無かったとの事で安心しました。桜さんは、花梨と胡桃に化粧をしている。僕が頼まれて追加で入れた機能を使って。


「花梨ちゃん」


「はい」


「目を閉じて」


 と言って目の周りに色をつけている。Sキューブに化粧するのは、この方が、見栄えが良くなって良いらしい。確かに化粧後のほうが綺麗になって健康的な顔色に見える。こんな発想は僕には無理だな流石ですよね。ステージ奥のスクリーンには、〝子供達に笑顔を届ける企業Toy Dreams〟が映し出されている。


 発表会は九時から予定している。最初は青木社長がちょっと話をして。その後、犬槇さんが説明するらしい。こういうのは、一番偉い人がやるもんだと思ってたけどTD社は違うらしい。


 父は発表会の後、青木さんと会うって言ってた。適当に帰るから、お前も適当に帰って来いって。まあ良いけどね、どうせまたタクシーだし。桜さんに泊めて下さいって頼んで見ようか。なんか良いかも。寝ている間にパフパフしちゃうかも。


 そろそろ、プレスの方。メディアの方が集まって来ている。カメラとかが一杯来てなんかイベントだなあって実感してきた。


『WEB広告どう思う? 今日になっても完全には判って無いんだが』


『なかなか期待させる作りだったけど、TD社のSキューブはなあ、まだまだじゃないかなと思ってるけど……』


 という会話が漏れ聞こえている。まあ、今迄の事が有るからね。でもこの方が驚きは大きい。驚きが大きければニュースも大げさになって期待出来るし、雑誌も今回は好評化するんじゃないかな。


 なんだかんだで、開始時間になった様です。青木社長が壇上に上がった。なんか渋いし迫力あるなぁ。


「皆さんお早うございます。青木です。本日は、Toy Dreams社、新製品発表会に集まって下さり大変感謝しています。今年の我が社のSキューブは、皆さん達の期待を……そうですね、どっちになるかは早速見て貰いましょう。では、開発本部の犬槇課長に説明を変わりたいと思います」


 犬槇さんが、出てきた。こっちもビシッって普段より格好良い。ネクタイもちゃんと首元まで締めている。いつもより二割増し渋い感じだ。


「Toy Dreams社製品開発本部の犬槇です。WEBをご覧になって既に内容を推測されているかと思いますが、先ずは見て貰いましょう」


 スポットライトが、花梨に充たる。リハーサルと同じで、ゆっくり歩いてから走りだし、バク宙の連続でステージに上がる。


「皆さんお早うございます。Toy Dreams社のSキューブの花梨です宜しくお願いします」


 花梨が自然な動きでお辞儀をして挨拶をした。見ていたプレス、メディアの人達が驚いている。


『喋ったぞ!』


『Sキューブなら喋る位はするだろう。大した事無いぞこの程度なら』


『だが登場の仕方だって凄かったじゃ無いか』


 そんな声が聞こえてる中、花梨がマイクを後ろの方へ歩いて行き置いて戻って来る。


 犬槇さんの視線の合図で音楽が流れ、花梨の演技が開始される。昨日の対策のお陰で特に回転不足も無く演技を終わり、マイクを回収して控え室に花梨が戻る。


『CC社の大会の杜樹選手の演技と同じだぞこれ』っていうのがざわめきの中に聞こえた。


「さて、ご覧になった様に今見せたのが、我が社の新製品のSキューブです。今、放映中の〝魔法少女 花梨&胡桃 パラレルワールド〟の衣装を着て演技させました。今回のSキューブの新機能に付いて説明します」


 スクリーンに、WEBに載っていた画像が表示される。最初に目の所に○が出てくる。


「演技が早くて判らなかったと思いますが、新機能の一つに瞬きする機能が搭載されています、この写真は、今の演技でのポーズを写しだしています。片目を閉じるウィンクも出来ます。中々可愛い表情でしょう。これだけでも他社を圧倒していると思いますよ。当社の一押しです」


 プレス、メディアの笑い声が聞こえる。


「次に、同じ画像ですが、口元を観て下さい。笑顔になっているのがお判り頂けると思いますが、新製品は表情を作ることが出来ます」


 犬槇さん説明が上手いなあ。どんだけこう言う場に立ってるんだ? 僕なんてクラスの前で発表するだけでも緊張するのに……(まばた)きの機能と合わせて確かに一押の機能だ。こんな表情を作れるSキューブは未だ無いからね。この機能だけでも購入者が出そうだな。


「いま、素晴らしい演技をご覧になった所ですが、この演技のプログラムを〝悪魔の樹〟ことデーモン・ツリー氏に作成して頂きました。我が社の製品の魅力を十二分に引き出す演技です。もう一つ観て頂きましょう」


 犬槇さんが、視線で指示をだすと、またスポットライトが点灯し、花梨が再度登場する。花梨がステージに上がったところで、「先程に続き花梨に登場して貰いました」次に胡桃にスポットライトが充てられ胡桃もステージに上がる。


「魔法少女 花梨&胡桃 パラレルワールドはダブルヒロインですから、胡桃にも登場して貰いました」


 ここで音楽が流れる。バッチリなタイミングだ。Sキューブの演技が始まる。今放映中のファーストシーズンのエンディングテーマだ。花梨と胡桃が、歌い始める。観客のどよめきが広がってくる。


『これ、歌ってるのか?』


『後ろに声優が控えているのかも……』


『口元みて見ろちゃんと動いているぞ』


 演技が終わって、観客にお辞儀をして最初の位置に二体が戻って行く。


「観て頂いた通り、今回の新製品は歌う事ができます。他社もスピーカーは搭載してるので、音楽やボイスを再生することは出来るでしょう、ですが当社の新製品は、口元を動作させることが出来ます。これによってちゃんと歌っているように見えます。皆さん気付きましたか? 歌う事は伴奏無しでも歌えますね。では伴奏が有ったらどうでしょう。人間は歌えます。Sキューブは? ご覧になったのが答えです。このSキューブは左右の耳の所に、聴覚センサ。まあマイクですな、を搭載しています」


『今年のTD社なんかすげーぞおい』


『まじで金掛けてる感じだな』


『漸くTD社が本気を出してきたのか』


「今歌って貰ったのは、今、放映中の魔法少女 花梨&胡桃 パラレルワールドのエンディングテーマです。幸いな事にこのアニメは非常に人気があり、当社も継続し、魔法少女 花梨&胡桃 パラレルワールドセカンドシーズンを一〇月から始める事にしました。既にエンディングテーマもレコーディング完了しています。皆様には、いち早くセカンドシーズンのテーマ曲を聞いて貰いましょう」


 曲が流れ初め、2体が近付いて最初にハイタッチをする。お辞儀をして歌い始める。途中で手を繋ぎまた離れて。歌い終わるとその場で、お辞儀をして。待機する。


「せっかく新曲を歌って貰ったのに拍手もしてくれないとは、彼女たちも悲しんでますよ」


 拍手が一斉に鳴った。花梨達が、何度も手を振りお辞儀をする。


「プレス、メディアの皆さん彼女たちに代わってお礼を言います。どうも有難う。皆さんの中にも、お気付きの方がいらっしゃる様ですね。こちらを御覧下さい」


 スクリーンに、ハイタッチしている画像が表示された。


「今の演技の最初の方で実演した物ですが、これを実行するには、視覚による物体、距離認識が必要です。これで三つ演技を観て頂いた訳だが、この演技に当社新製品の機能をすべて入れて実演しています」


『全部判ったか?』


『いや、なんか凄すぎていまいち』


「まあ、Sキューブについては以上なんですが、この演技全てを作成して頂いたデーモン・ツリー氏の事をお話しましょう。なかなか、お茶目な方で、氏は現在この花梨を目覚ましに使っているようです。前日の夜に、翌日何時におこして欲しいと命じると、その時間に花梨が起動して、氏を起こすそうです。なかなか目覚めないとかなり厳しい起こし方になる様ですが、今日もそれで目覚めた様ですね。デーモン・ツリー氏の好意で、この目覚ましプログラムは、販売開始後、フリーウェアで提供して頂けることとなっています」


『それって……』


「この発表会を、別会場のスクリーンで見ているプログラマーの方は既にお気付きでしょう。『お兄ちゃん』と喋らせて起こして貰うことも出来ますよ。まあ自宅でこっそりとして欲しい所ですが」


『できるのか、購入したくなってきたぞ』


 をい! あんたなに言っての良い大人でしょ! 危険な言葉が聞こえた。


「もう一つ、デーモン・ツリー氏の好意でフリーウェアとして公開して頂けるアプリが有ります。Sキューブの充電ですが、従来同様の非接触充電マットを同梱しております。デーモン・ツリー氏が充電が必要なタイミングが判り辛いので作ったと言われまして。充電が必要になると、『私眠くなっちゃったから寝る』と言って自律でマットに行き横になります。充電中に声を掛けても『未だ眠い』と応えるアプリを用意して下さりました。まあ従来から自動クリーナー(掃除機)等にある機能をSキューブに追加して下さったのですが、我々も少し盲点でしたね」


『なんか芸が細かいな。デーモン・ツリーって結構って言うか、かなり怪しい感じだな』


『いや、でも便利だろ、自分で充電しに行くんだから』


『眠くなったって言うのが萌えるな』


「さて、肝心な事を説明していませんでしたね。この新製品の発売は、魔法少女 花梨&胡桃 パラレルワールドセカンドシーズンに合わせて一〇月一日に販売開始します。初回出荷は、申し訳ありませんが一,〇〇〇体程度しか用意できていません。この後一〇時から別ホールの当社ブースで先行予約予約を受け付けます。先着順となりますのでお早めにお願いします。肝心のプライスですが。大変申し訳ありませんが、九九,八〇〇円とかなり高価となっております。ですがそれに見合った物に仕上がっています」


 スクリーンに、販売開始日と価格が表示されている。


「プリインストールですが、今観て頂いた、ファーストシーズンのエンディング、セカンドシーズンのエンディングの、単独、ペアでの動作が、花梨、胡桃それぞれインストールされて出荷される予定です。自宅で購入初日から彼女達の歌を聴く事が出来ますよ」


『スゲー、大サービスじゃないか…』


 別な画面に切り替わる。マルチSキューブエミュレーションと文字が表示されている。


「デーモン・ツリー氏も、この演技を簡単に作り上げた訳では有りません。丁度スクリーンに出ていますね」


 確かに嘘は言っていない。短時間だったけどね。言葉って不思議だよね。PCの画面が表示され、花梨、胡桃が連動して動作している様子が表示されている。


「この、マルチSキューブエミュレーション開発ツールによって、複数のSキューブを同時に動作させ開発しています。このツールは、他のメーカーでは未だ公開されていないか、まだ無いのかもしれません。当社はこのツールとデーモン・ツリー氏の開発能力でこの演技を公開する事が出来ました。氏には大変感謝しております。氏の事を、私達は悪魔クラス、デーモン級の開発者と呼んでおります。ウィザード級を遥かに超える開発者と言う意味で捉えて下さい。氏の演技には、簡易ですがAIが組み込まれました。この小型のアンドロイドにです。業務用の大型タイプでは、当たり前で珍しく無いですが、Sキューブの可能性が広がって来ています。他のメーカーも今後追従して来るでしょう。これを観た皆さんも〝Sキューブの可能性と未来〟が見え始めたと思います。当社も未だ公表出来ませんが〝Sキューブの可能性と未来〟を提案して行きます。それと〝悪魔の樹〟とデーモン・ツリーは既に商標登録して有りますので勝手に使わないように。以上で私からの説明を終わりにしたいと思います」


 犬槇さんが、壇上から帰ろうとしている。


「おっと、忘れてしまった」


 戻って来て、花梨と胡桃のいる演技ステージに降りる。


「彼女達を置いていく所だった」


「花梨ちゃん!」


「はい」


 声を掛けると花梨が振り向いて返事をする。


「胡桃ちゃん!」


「はい」


 胡桃も同様に。


「こっちおいで」


 犬槇さんの方へ花梨と胡桃がトコトコと駆け足で寄って行く。犬槇さんは、それを片手に一体ずつ抱えて。


「今観て貰ったのが、聴覚による位置認識です。それでは」


 ステージから裏の方へ戻って行った。また、青木さんが登場して来た。


「皆さん、今観て貰ったのが、当社Sキューブの新製品です。時間が無かったので製品の仕様は後ほどWEBで確認して頂きたい。一〇時には更新されますので。プレス、メディアの方達は希望があればこの後プレゼンルームで質疑応答の時間を確保してあるので、そちらに参加してください。競技大会も直ぐ始まるので、手短にお願いしますよ私も観戦したいのでね」


 また、TD社のスローガンが表示される。


「花梨ちゃん」


「はい」


「胡桃ちゃん」


「はい」


「こっちおいで」


 青木社長に呼ばれて花梨たちがステージに戻ってくる。


「当社は、Sキューブで、当社のスローガン、〝子供達に笑顔をとどける〟を今後も実行していきます。当社のSキューブ技術は他では使わないでしょう」


「花梨ちゃん」


「はい」


「胡桃ちゃん」


「はい」


「挨拶して」


 手を降ってお辞儀をする。


「「今日は観に来てくれて有難う御座います」」


 凄い拍手が起こった。青木さんが二体を抱えて裏に下がっていった。


「以上でToy Dreams社新製品発表会を終了します。この後プレゼンルームでの質疑応答の準備が整っております。出席する方は移動お願いします」


 司会のお姉さんが、最後を締めてくれた。なんか、犬槇さんカッケー、尊敬しますマジで。犬槇さん達がプレゼンルームに移動して僕もプレゼンの内容が聞ける部屋に移動して質疑応答の内容を聴講させて貰う。


 プレゼンルームでは、立柳本部長、油瀝青(あぶらちゃん)部長、犬槇開発課長、柊開発主任(桜さん)が前に座っている。花梨と胡桃は桜さんが抱えている。


 油瀝青部長なんで、そんなに汗かいてるの? 名は体を表してるみたいだ。おまけに油ちゃんってあんな文字だったのか。勉強になった。人生で何回書くか判らないけど記憶はしたよ。


 司会の進行で質疑応答が始まった。


「デーモン・ツリー氏について教えて頂きたいのですが」


 早速、参加者の手が上がり質問が出て来る。


「どう言った事を、お聞きしたいのですか?」


「彼または彼女の経歴とかですね」


「申し訳無いが、氏の許可を取っていないのでお応えできない」


 うん当然だよね、僕は許可して無いもん。犬槇さんその通りですよ。


「では、デーモン・ツリー氏への取材許可をお願いしたい」


「残念ながら、氏はメディアの取材を一切断る様であるので、こちらからは許可する事は出来ない」


『次の方』


「花梨ちゃん」


「はい」


 花梨が呼ばれた方を向く。


「胡桃ちゃん」


「はい」


 胡桃も同様だ。


「こっち来て」


「「……嫌!」」


 笑いが起こった。


「残念ながら貴方は好かれていない様ですね。諦めて下さい」


「残念ですね。パーソナルIDが関係してそうですね。購入すれば大丈夫ですかね?」


「どうでしょうね…その辺は答え難い質問です」


『次の方』


「デーモン・ツリー氏が全て今回のプログラムを作成したと仰ってましたが、どの位の期間で作成したんですか?」


「当社の製品開発スケジュールにも絡むのでお答え出来ないし、氏の能力を推測されるのでやはり答えられない」


「では、最初の体操演技は、CC社で発表された体操演技にかなり近いと思いますが。開発者はその方ですか?」


「確かに似ているのは事実である。これは、私にも判らない氏がその演技を参考にしたのかも知れないが、異なるSキューブで、同じ演技を作成するのは難しいと思っている」


 上手いこと言いますね。犬槇さん。


「先ほど、デーモン・ツリー氏の事を悪魔クラス、デーモン級と言っていましたが、それはどの位の事なんでしょうか?」


「私も、そこに居る柊も、ウィザード級の開発者、Sキューブ制御プログラム開発の熟練者だと思っている。だが、デーモン・ツリー氏は、私達を遥かに超える。まあSキューブに限って言えば、多分国内には氏の様な方は一〇人いないのでは無いかと思っている」


 そこまででは無いと思いますけどね。既に真弓もいるし。


「良く其のような方にプログラムを作成して頂く事が出来ましたね。どうやって知りあったんですか?」


「これは、私が知り合った訳では無いので、私も紹介されただけだ。非常に運が良かったと思っている。私個人としても、当社としても」


『競技大会の時間と成りましたので質疑応答を終わらせて頂きます。別途質問がある方は、WEBで質問するか、別途取材依頼を広報を通じてお願いします。以上で質疑応答の時間を終わります』


 なんとか終わったみたい。油ちゃん何しに来たの?


 今日の僕のお仕事(何もしてないけど)は終了。ちょっと予選を見て回ろうかな。後、各メーカーや、グッズメーカーのショップを見て回ろう。スタッフのネームプレートは外して置かないと変に思われちゃうよね。


 暫くしたら、犬槇さん達が僕の居る応接室に現れた。ソファーから立ち上がり挨拶した。


「犬槇さんお疲れ様です」


「樹くんも、ご苦労さま」


 犬槇さんも応えてくれる。


「まあ座ってくれて良いよ」


 立柳さんが着座を勧めてくれたので素直に座った。立柳さん、犬槇さんも僕の前に座った。


「樹くんのお陰で、近年に無い良い新製品発表会になったよ有難う」


「僕は、デモを作っただけです。あんなに凄いプレゼンになってるとは思いませんでした。プレス、メディアの皆さんも驚いていましたよ」


「それは、犬槇君の手柄だな、犬槇はこう言うのが得意だから、だから青木社長も犬槇に任せたんだ」


「特に一番最後の花梨達を呼んだ所は、凄いです最後の最後で驚きですもん」


「まあそれも、君のデモが有ったから出来たんだ。二一世紀のスピード・ジャブスさんを真似したんだよオリジナルじゃ無いから」


 急に部屋に置いて有った、犬槇さんの携帯が鳴った。


「泡吹どうした? なんか有ったか?」


「……マジか?」


「来ている開発の連中を全員駆り出せ、それで対応しろ」


 そう言って電話を切った。


「犬槇君、どうした?」


「泡吹からだったんですが、当社の販売ブースでSキューブの予約者が殺到してるそうです、一〇人では捌けないようで、開発部の連中を応援させるように伝えましたが……」


「なんだ歯切れが悪いな」


「多分、三,〇〇〇人位は並んでいるだろうと言ってました」


「不味いな、それは」


「ええ、不味いです。どの道今は何も出来ません週明けに大増産するように手配しましょう。ですが部品の調達が出来るか不明ですね」


「それはそうだが、このままだと店頭販売出来なくなるぞ。まあ週明けに皆で悩むか、ホントに嬉しい悲鳴だな。こんな経験が出来るとは思わなかった」


「えっと、大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫さ。樹くんはどうするこれから?」


「予選を少し観て、あとショップを観てから帰ろうと思います」


「そうか、泡吹は今日は無理だろう桜ちゃん、樹くんを頼めるか?」


「はい。お任せください」


「桜ちゃんも、私服に着替えてくれないか? 大丈夫だとは思うけど一応念の為にな、制服で樹くんと居るとデーモン・ツリーと疑われるかもしれないしな。ただ君も今日のプレゼンの席にいたのでね注意してくれ」


「判りました。樹くん暫く待ってて着替えて来るわ」


 ネームプレートを仕舞って、ゲストに替え桜さんが戻って来るのを待っていると犬槇さんが話してきた。


「あっそうだ、樹くん今日と明日の体操競技の後さっきのデモ演技を披露する事になった。既に競技会場には連絡してある。事後になって済まない」


「いえアレはもう、そちらで自由にして良いので構いませんよ」


「有難う。一般の人にも、君のプログラムの演技クオリティを観て貰いたくてね。それと出場者には、目標にもして貰いたいと思う」


「あのレベルなら直ぐ追いついて来ますよ。僕も次の、何かを考えないと追い抜かれそうですね」


「まあ明確な目標が有れば、レベルアップは早くなるからな。俺も君の次を期待してるよ」


「まあ頑張ります」


「デモ演技にはアルバイトに、Sキューブを持たせて行かせる。これで何とか勘違いしてくれると良いんだがね」


 よくそんな事考えつくな犬槇さんは。


「そうですね。まあバレたらバレたで仕方無いですが。バレない様に僕も心がけます」


「そうしてくれるとこちらも有り難い」


「それと、多分だが動画サイトにも今日のプレスからアップされるだろう、一応削除要請はするが、クォリティーの低い物をアップされるのも嫌なので、当社からもアップするけどな、カメラは何台も用意してあったから凄い物が出来上がると思うよ」


「お願いします」


 まあ商用利用はTD社だけだからね。


「あっそうだ、ちょっと予定変更して、自分の演技観てから帰ることにします。いつも間近で見てるんですけど観客視線で見たこと無かったんで」


「そうだな、そういう目で見ると、また違った演技とか閃くかも知れないな。良いと思うよ」


 桜さんが着替え終わって来たので、応接室を出て、イベント会場に向かった。先ずは、先ほど言ってたTD社のお店。


 TD社の大会は始めて来たけど、CC社よりも人が一杯で子供達が多い。Sキューブではシェア最下位だけど玩具ではNo.1だから、それに他の玩具関連のメーカも沢山出店してるから、ちょっとした玩具ショーって感じ。こっちの方がお祭りっぽくて良いな。


「うわーっ凄い人」


「まあ、子供の多いイベントですから、今迄はSキューブの競技よりも出店の方が盛り上がっていたわ。今年は(ようや)くSキューブのイベントになったって言う感じね。私達も嬉しいわ」


「何あの行列、何人並んでんだ? もしかしてさっきの泡吹さんのは、アレですか?」


「そうみたい。三,〇〇〇人は誇張だと思ってたけど、本当の様ね」


「えっと、僕は一人の方が都合良いと思うので、後でTD社のショップに顔出しますよ。その方が見に来たお客さんに見えるでしょ。流石に迷いませんから」


「まあそうですね。じゃあそうして下さい」


「了解です。じゃあ後で。桜さんもアレ手伝った方が良いんじゃ無いですか?」


「ええ、手伝ってきます」


 桜さんは、バッグから、スタッフのネームプレートを出して交換してTD社のブースに向かって行った。




よろしくお願いします。

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