100:混沌の主
『もう、分かっているね?』
自分は父の前で正座する
ここは、島で唯一の教会であり、父の職場、そしてこの国で最もクソみたいな場所だ
その昔、自分が幼い頃はまだ綺麗な教会で、創造の主を信仰する場所だった
だが今は見る影もない
創造の主の象徴である十字架は砕け、地に落ちている
本来あるべき場所には混沌の塊が置かれてあり、似合わない
祭壇も改造され過ぎていて、原型も無く、最近の建築と鬼の祭壇…
他の場所でも同じような建築はあるが、ここ程似合ってない場所は無いだろう
辺りは沢山蝋燭があり、二、三本まとまって置いてある
普段は火が灯っていないのだが、今は儀式の為、全てに火が灯っている
『はぁ、最期の日なのにもかかわらず、わざわざ面倒な事をしてまで、耐えきれるような馬鹿を探してたのか?』
『……』
『だんまりかよ。そこは何か盾突く所だろ!』
鋭い一撃が鳴り響く
それと同時に左頬に痛みが走った
『なんか言えよ。つまんねえじゃねえか』
これが父親の正体だ
普段は愛想を振りまき、優しさの権化のように振りまく
だが、裏では洗脳し信者を増やし、定期的に混沌様への生贄を生み出す
たとえそれが、一生の愛を誓った者だろうが、娘だろうが変わらない
『まぁ、最期に連れて来た悪あがきの奴が、いい信者になりそうな奴で助かったぜ。お陰で増やす努力をしなくても増やしてきてくれそうだからな』
父、いやこいつは笑う
笑い終えると、次は右頬に痛みが走った
『これで平等だな。はぁ、最期に一言だけ許してやるよ』
『…あんたは…本当に見る目がないね!混沌なんて大っ嫌いだ!!』
あの子に洗脳なんて無意味だった!
国王様にだって伝えられているはず!
自分の死は受け入れる
だが、お前は絶対に逃がさない!!
そして、こんな目に合わせた混沌を絶対に許さない!!!
『ふん。そこまで死にたくないのか。だが…』
その瞬間、四つの魔法陣から混沌の鎖が出て、自分の四肢を捕らえた
鎖はどんどん引っ張られていき、やがて自分は空中に縛られた
『そうか。それじゃあ、死ね!!!』
その声と同時に、私は目を瞑る
その瞬間、腹部にとてつもない痛みが走った
口から血が溢れてくる
四肢からも腹部からも混沌が流れ込み、力が無意識のうちに入る
そうして、意識を手放そうとしたその瞬間
辺りが光に包まれた
気付く点が二点あった
まず、貫かれたお腹の痛み
それが、まるでなかったかのように無くなった
だが、傷が無くなった訳ではない
ただ、物凄い速度で体が再生している事が分かる
そして次…
今、自分の四肢は拘束されていない
ただ、少し狭い球体の中に居た
エメラルドのようにきれいな色の球体
『なんだ!何が起きた!…混沌が打ち破られるなど、秩序以外!っは!』
秩序、それは世界中に存在している規律ある物
そして、あいつが最も憎んでいる力だった
それが、なんで自分のピンチに……
その瞬間、教会全体に轟音が響く
どうやら教会が揺れている様だった
やがて教会の扉が開く
真っ暗な室内に光が入ってきた
その瞬間蝋燭の火が急に消える
『はぁ……迎えの時間だ』
その声は朝聞いた少女の声だった
『お、あ、貴女は…!』
奴は直ぐに言葉を言葉をただした
彼女は足を踏み出し、扉がゆっくりと閉じる
扉が閉まった瞬間、足元、席、壁、至る所にある蝋燭の中で、彼女の付近だけ火が灯る
『そのクソの役にも立たない仮面を捨てな。生憎、会話は聞かせてもらっている』
『チッ…』
彼女の口調は荒い物になっていた
話が聞かれていたことか、口調か、中断されたことか…
はたまた、全てか
奴はイラついていた
『はぁ、お前は混沌様に忠誠を誓うと思っていたのにな…』
『混沌様って。あははは!』
彼女は笑う
その姿は今までの可愛らしく美しい彼女ではない
生き物の本能が狂気と判断する
心から恐怖したことは初めてだった
『な、何が!』
『じゃあ、私自ら質問してやろう。貴様、急にあった奴に、インチキ宗教を信仰しろって言われたら、そりゃな?』
『私の宗教をインチキだと!?』
いや、胡散臭くはある
そう思った瞬間、彼女が奴に向けて指をさす
『ダウト。貴様は今、‘‘私の‘‘宗教って言ったよな。つまりお前は混沌の為じゃない。私利私欲の為だけの馬鹿らしい飯事だ…』
『な、何を!俺は完璧な世界を!』
そう叫びそうになった瞬間、奴は急に黙った
『いやはや、信仰していると言わないほうが良かったかもな。信仰していると公言してしまえば、その命はそいつが握る。それは細かな体の事でも…』
彼女はそう言いながら歩く
すると、直ぐに奴が口を開き息を吐く
息は切れていた
『お前、私の宮に…』
『貴様の宮じゃない。私の信者だ。それがたとえ血のつながりがある家族だろうとな!』
彼女は、奴の顎を蹴り上げた
その体は吹き飛び、祭壇にめり込んだ
『せっかくの機会だ。私直々に教えてやろう』
彼女はそう前置きをしてから話し始めた
『結局、混沌の力で洗脳し続ければ何が起きる?それは、根絶だ。結局残るのは無……そこは秩序であふれた場だ、皮肉にな。洗脳を続けて行けば、やがて秩序が生まれる、誰一人歯向かおうとしない完璧な秩序がなそうなると、お前が求めてる混沌も、いずれは完璧な秩序へと置き換わる…』
奴が口を挟む前に彼女は続けた
『貴様は一つ勘違いをしている。混沌とは、誰かを狂わせ、秩序を亡ぼす物ではない。混沌とは一名一名の心だ…秩序とは一名一名の鎧だ…外では秩序を保ち社会を築きながらも、中では混沌を爆発させて笑い合って楽しむ。両方の均衡を保つ者、それが生き物の特権だ!
お前がやろうとした事、それは数千年前に人間達が捨てた物なんだよ!そして、秩序と混沌は均衡を保たなければならない…
だからよぉ……』
そう言うと彼女は両腕をそれぞれ横に伸ばす
そこに現れたのは鎌だった
片方は自分を守ってくれた緑、秩序の力、そしてもう片方は混沌の力で出来ている鎌だった
そして混沌で出来た鎌を奴に向けて、彼女が叫ぶ
『秩序と混沌の主は同じ者が務めるんだよ!!』
その瞬間、世界が歪んだ
次目を開くと、そこはぱっと見先ほどと何の変化もない教会だった
だが、直ぐに違和感がやってくる
そう、奴が居ないのだ
それを認識した瞬間、自分を守っていた秩序の球が割れる
落下の衝撃に備えるが、その衝撃はいつになってもやってこなかった
目を開くと、自分は浮いていた
そして、横には彼女、華寒がいた
『へ?』
『言ったでしょう?‘‘運命とは頼み通りにも、予想通りにもなりません‘‘とね…混沌の主は気分屋なのですよ』
彼女は笑顔でそう話す
さっきまで、見ず知らずの混沌様、混沌の主を恨んでいたけど…
自分の心は一瞬で奪われてしまった
時は流れ少し立ったぐらい
まだまだ昼時
自分は今、華寒の膝の上に頭を置いている
巷で言う膝枕という物だ
彼女曰く、秩序により一命を取り留めているとはいえ、大怪我ではあるから休ませるためらしい
た、ただ、その…
あの一瞬とか、昨日の事とか……
いろいろ考えてしまう
すると、彼女が話しかけてくる
『えっと、寝ないの?』
『そ、その…き、緊張してしまって……』
『え~~あんなに殺意を向けていたのに~~?』
…ぐうの音も出ない
自分のあいつとの会話を聞かれていたということは、自分のあの発言も聞かれていたという事
確かに感謝していたことは事実だが、生き物は自分勝手…
死ぬと思ったら、そこまで追いやった者の事を恨むのだと思い知った
だが、実際は恨んだ相手である彼女に助けられた
とりあえず、はぐらかしていろいろ聞こうとしたその瞬間
辺りは光に包まれた
どうもどうも
100話!!!
なんか101話とかで盛り上がってた方が面白いかなって思いましたが、流石に100話は気付きますよね
という訳で、全然続きます
だってここようやく大陸一つ渡ったところでしょ?
後は、島があって、海があって、島があって、もう一つ大陸があって………
まだまだ続きそうですね!
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました
今後も、‘‘できれば‘‘お付き合いください!
お相手は九月七日の私、葉都でした
ということで、ではでは~




