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呪術恋愛戦線 山奥に隠れていた陰キャ呪術師の俺が都会から来た陰陽師美少女に狙われる異能バトルラブコメ  作者: 杉林重工
一章 合儀肺助の受難

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7/51

準備万端告白開始、のはずなんですが様子がおかしいな

 放課後、肺助が顔を出したのは、いわゆる校舎裏に面し、伝説の木が見下ろせる位置にある資料室だった。様々な教材が仕舞われており、ふと振り返った肺助は、土偶のレプリカの目が合った。


 部屋に入ることは誰にでもできるが、清められていないこの空間から、清浄な校舎裏を見下ろすことはできない。或いは、見ても気にすることができないだろう――その境界を認識できる人間以外は。


「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ」


 その隅で、合儀肺助は摩利支天と縁のある手印を結び、複数回真言を唱え、


「合儀肺助の姿を禁じる」と禁歌を行った。


 そうして、彼は姿を隠し、主役たちが木の下に揃うことを待った。手印は破らず組んだまま。


 故に、手印の形上、何となく人差し指や中指の感覚がなくなってきたころ、漸く主役の一人、真壁動太が現れた――勿論、一人の女子生徒を連れて。


(あれが、阿賀谷戸命香先輩)


 なるほど、と肺助は思った。


 身長は肺助に近く、女子としては高め。背中まで届く長い黒髪に、白い肌。華やかさはないのに、どこか目が離せない雰囲気があった。大きく澄んだ青黒い瞳は、動太の奇妙な歩き方を興味深そうに追う。


 対して、顔の輪郭は柔らかく幼い。身長や立ち姿は大人びているのに、顔立ちはまだ少女らしさを残している。


 そこから視線を下ろすと、そんな彼女の容態とはややミスマッチに見えるほど、制服の襟元や胸元がかなり膨らんでいることに気づく。


(あ、なるほどな……)


 わかってしまえば、確かにこれは一目惚れもやむなし、という大きさ。スカートから覗く白い太ももと言い、ボリュームがあるが決して太っているという印象は与えない健康的な印象。


 しかして、これだけ目立つ要素がありながら、所作や佇まいは影のように控えめで、地味に感じる。だが、一度注視してその魅力に気付いてしまえば、あっという間に相手を緊張に飲み込む、そんな不思議な存在だった。


(あれに告白するなんて、確かにバックレても仕方ないかもしれない……とにかく、あとは頑張ってくれ、『相棒』!)


 しかして、伝説の木の下、二つの影はなかなか動かない、言葉も発しない。だが、ふといたずらに一陣の風が吹き、阿賀谷戸命香の髪がふわりと広がった、その時!


「阿賀谷戸先輩、おれと、付き合ってください!」


(言った!)


 動太のその言葉に、肺助はついつい窓枠から身を乗り出した。


(頼む、うまくいってくれ!)


 そして、祈るように肺助は目をきつく閉じた。


「……それについてなのですが」


(ん?)


 告白の返答にしては奇妙な言葉。肺助はすぐに眼を開け、これから起こる出来事を視界に収めた。


 木の下で、肩を上げて緊張を隠せぬ真壁動太と、顎に手を添え、んー、と声を漏らして言葉を探す阿賀谷戸命香。


(……一体、何が始まるんだ?)


 肺助ただ一人が、この場でゆっくり唾を飲んだ。



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