俺は能力者
考えられない思考のまま、あれよあれよと時が過ぎた
人と話してはいるのだが、まるで自分はそこにはいない気持ちで、辛かった
大事な人を亡くした喪失感は大きい
弟の、蒼山圭介に自宅で事の経緯を話した
「そうか…親父はそんなやつと戦ってたんだな」
「こんなこと、間違ってる!!」
「兄貴…」
「親父が仮に、誰よりも1番強い力を持っていたとしても、それが争う理由だなんて…」
圭介は俺の顔をじっと見る
「戦うのか? そんな得体の知れないやつと」
「……俺は…親父の、仇を取れるのは、俺しかいない 親父のことを分かっているのは、俺たちしかいない」
<挿絵>
「そう、だよな」
俺はソファから立ち上がった
「俺は行くよ 能力者になって戦うんだ」
「その長い髪型も、能力のせいか?」
「あ? ああ めんどくさいから、ポニーテールにしてるんだ」
「一人で抱え込まないでくれ なにかあれば、知らせてくれ」
「ありがとう それじゃ」
俺はでかいリュックを背負って、家を出ると――
「智嬉!??」
「1人にさせないよ 俺も行く」
「って、学校は!?」
「先生が、親友を1人にするな、ってさ 父さんが死んでから大分、抱え込んでたって先生言ってたぞ」
周りには大分バレバレだったらしい
「……俺は、戦いに行くんだよ 能力者として」
「俺もだよ」
「どうして!? 」
「俺の親父も、能力者なのさ けど、お前の父さんをあまり好いてなくてな 喧嘩ばかりしていたらしい」
親父…なんか周りに迷惑かけてんな…
真相を確かめるべく、やはりここは能力者になって戦うしかない
どんな悲しい争いになっても、腹を括らなくては
俺は、決心して能力者施設へ向かった
「兄貴…頑張って…」
圭介も、後から能力者になるらしい
能力者施設に初めて足を踏み入れる
「司令官!」
「おお、良く来たな 智嬉くん…無理なお願いを、済まなかった」
「いいえ、滝と一緒なら、俺は戦えます」
「智嬉…」
「…こんな俺たちみたいな人達を、何人も見てきたんですか」
智嬉が重々しく口を開く
「ああ、みてきた…今にも死にそうな奴もいれば、行き場をなくした奴…色々さ」
「……」
「貴明…滝の父さんは、そもそも、どういう理由で能力者になったかは知らないがな」
「えっ知らないんです?」
「ああ 彼は弱音すらも私に話さなかった 弱音を吐いたのは、死ぬ間際のことさ 君と初めて出会った寸前にな」
親父…一体、どんな思いで能力者になったんだ
親父もきっと、最初の頃は自分がそんなに強い戦士だとは思っていなかっただろうに
親父…親父…
「親父に会って、確かめたかった どうして能力者になったのか」
「滝…」
『なら会わせてやるよ 地獄でな!!』
「誰だ!?」
天井から声が聞こえた 嫌な予感がする
『"幻影呪縛"!!』
バリバリ!!!
「うわああ!!」
「司令官!!」
俺はなにが起きたか全く分からなかった
目の前で、司令官が敵の罠に引っかかり悶えている
『思い出せるだろう…?シルヴァ…なあ…?』
「や、やめろ…この子達の前で私の昔の名を…呼ぶな…」
「姿を現せ!!」
「滝!敵に…集中するんだ!」
息も絶え絶えに話す司令官
敵の姿は見えない
こんな時、どうすれば
声がするほうを耳で意識させる
「見えた!!」
俺は腕にしていた青いブレスレットを投げた
「そこだ!!」
『いてっ!!』
姿が見えた
「カルテー二…」
カルテー二がゆっくり起き上がる
「くくっ…よく分かったなあ…」
「この子らに手出しはさせない!」
「黙れシルヴァ お前にそう言う権利はないだろう?」
カルテー二の手から静電気のような弾く音がした
「ぐあっ」
「司令官!!」
「ちょっとした電磁波よ、心配はいらない」
カルテー二はニヤリと笑う
「く、くそ…」
「俺に、武器があれば…」
「滝、これを使え!!」
1本の俺の身長より長い棒を投げられた
「よし!!」
「さあガキ…1発喰らえ!」
俺にオーラが放った
「な、なんだ!?」
「司令官を傷つけるやつは、許さない!!」
俺はカルテー二を倒そうと、必死でなぎはらう
長柄の武器、というと高校の剣道部での記憶しかないのだが、それでも必死で……
「うぉあああー!!」
「滝…」
「……」
「喰らえーー!!"天華乱舞"!!」
前回初めて出した技を再び放った
「その技は…貴明、の…」
カルテー二は再び消えた
「俺は…能力者になったんですね…親父と同じ道を…」
俺は司令官の体を支えながら、ボソリと呟いた
「君たちなら、きっと勝てる、あいつに」




