15話 「先輩とお姫様とランチタイムと」
近況報告も落ち着いたところで、俺達はランチを頼むことにした。エンジュはカルボナーラ、先輩はオムライス。俺とはと言うと、密かに楽しみにしていたイチゴのパンケーキを頼んだ。
「随分と可愛らしいメニューを頼んだわね。ヨシのことだから、てっきりハンバーグでも頼むかと思っていたわ」
「別にいいだろっ。男だってパンケーキ食べたいんだよ。それに、ハンバーグは家でも作れるし。……馬鹿にしてる訳じゃないけど」
「へぇ、そういうものなのね」
「あぁ、そういうものなんだっ」
エンジュと痴話喧嘩じみたことをしていると、待望のメニュー達が運ばれてきた。どのメニューも一同目を輝かせるほど美味しそうで、俺と先輩に至っては女子のようにスマホで写真撮りに興じていた。
「エンジュ、お前も撮ってやるよ」
「いいわ。私、写真写りが悪いもの」
「たまにはいいだろ、お姫様」
「むぅ……分かったわ。けど後悔しないことね」
スマホでエンジュの写真を撮る。しばらくしてアプリのアルバムを見ると、そこにはぶれたエンジュの笑顔が写っていた。
「ほらね。だから言ったじゃない」
「何でなんだ? 手ブレはしなかったはずなのに」
「吸血鬼は鏡に映らないという俗説があってね。写真も例外じゃなかったみたいなんだ。しかし驚いたよ。令和の時代を持ってしても、スマホという最高峰の文明機器があっても映らないだなんて。これは世紀の大発見かもしれないね」
「ちなみに私は最後の生き残りだから貴重よ。本当はヨシにお金を請求したいところだけど、契約者のよしみで見逃してあげるわ」
「なんだい? 契約者って」
「げっ」
「あら」
「そ、それはですね、先輩」
もう後にも引けなくなった。変に誤魔化すとあらぬ方向へ誤解されそうだし、俺はエンジュとの関係を全て打ち明けることにした。
「へぇ、そうだったんだ。これで合点が行ったよ。面白いね、君達の関係性。おれもそういうファンタジーな出会いをしたかったな」
「あのですね、先輩。確かに傍から聞いたらファンタジーそのものですけど、俺にとってはたまったもんじゃないですよ。いつもより多くご飯を作らないといけないし、連絡だってすぐにできる訳じゃない。何かあった時だって、交通網に恵まれてないから家まで着くのが大変なんですよ」
「後半は愚痴だったけれど……。それは嬉しい悩みなんじゃないかな。君は今まで実質一人暮らしみたいなものだったろう。心の奥底にあった寂しさも埋められるし、一緒にいるだけで安らぐ心があるだろうから」
「それはっ、そうかもしれませんが……」
確固として認めたくない。認めたら負けな気がするからだ。おい、エンジュがニヤニヤしてるのバレてるからなっ。
「……多分、無意識のうちにそう思っているのかもしれないです。幼い頃から留守番とか多かったし……それに、必然的に料理も覚えることになった。俺は、それを誰かに埋めて欲しかったんだ」
一瞬、しんみりとした空気になる。俺がシリアスじみたことを言ってしまったせいだ。
「……って、湿っぽくさせちゃってごめんなさい。こんな話はなしにして、ご飯食べちゃいましょう。せっかくのごちそうが冷めちゃいます」
「そうだね。頂いてしまおう」
「私もお腹すいてたの。堅苦しい話はやめて、楽しいランチタイムとしましょう」
俺を含め三人とも律儀にいただきますを口にして、一口目を口に運んだ。




