その想いに囲まれて
こういう状態を針のむしろというのだろうか。
愛人時代に住んでいた部屋の寝台回りに勢揃いする王子達。
アシュリーは苦虫を噛み潰したような顔で腕を組み、ウィリアムは楽しそうに窓辺に凭れ、レオンは近くの椅子で優雅に座っている。
サラが邸に寝間着を取りに戻っていたらしく、現状に呆れながらもガウンを掛けてくれた。
おかげで顔から火の出る思いをそれ以上せずにすんだのは助かった。ただ、寝間着を着替えられないままの上半身を起こした状態なのだが。
――どうして貴方達はここにいるの? まさか三人で看病ではないでしょう。少し痛むくらいで、本当に大丈夫なのよ。お願いだから囲まないでよ、まるで重病人になったようで動けなくなるわ。
レオン一人、それだけでも羞恥心で一杯だったというのに、ウィリアムとアシュリーが報告を終えて顔を出した時の空気は酷かった。
――私は何も知らないわ、巻き込まれたのよ。
アシュリーはウィリアムの魂胆に気がつき、すっかり呆れていた。
そんな女だったのかとまるで責めるような雰囲気さえ漂う。彼の悪巧みだとわかっていても。
だからウィリアムを睨んだのに、平気な顔で言うのだ。
「シャロンを放っておくと、また問題を起こしそうだからね。しっかり縛りつけておかないと」
「ここでなくてもいいでしょう」
「あぁ、僕との愛を刻んだ場所だから思い出すのだね」
「違うわよ!」
「僕は王太子だよ、言葉には気をつけてね」
「よく言うわ……」
――もうアシュリーがレオン様がだなんて無垢な事は言わないわ。皆、知っているもの。
「シャロット、俺もここに君を置くのは反対だ。誰が好き好んで自分の妻をわざわざ……」
内心この状況に怒っているようだ。それはそうだろう、拒否できる立場にないのだから。
――私だって同じ。ウィルの企みに嵌められたようなものだもの。
「そう思うなら連れ帰ってよ」
シャロットのその言葉を受けて、アシュリーが彼女を覆っている上掛けを剥ぎ掛けた。
「シャロンを連れ帰るならそれでも構わないよ。ただし、レオンには看病を続けさせるのは承知だよね」
「ウィル、レオン様に迷惑だわ」
「僕は怒ってるのだよ、シャロン。責任はアシュリーにないと言うが、そうではないはずだ」
ウィリアムはアシュリーが女を同行させた事を言っているのだ。
それがどういう女なのか彼らは把握しておらず、アシュリーも二人が愛人関係だとは言わない。
女が王宮に滅多に顔を見せる事はなく、彼が誰とも関わらせようとしないのはもっと深い何か理由があるのだろうとわかっていても。
「お前は女の元に行く為にシャロンを一人にしたのではないか?」
「その通りだ、俺はシャロットを放ったらかした。陛下の命を受けて一応の責務は果たしのだから、他で楽しむのもいいだろうと思った」
ウィリアムの厳しい声音とアシュリーの悪態が響く。
「シャロン、少なくとも怪我が治るまではここにいてもらうよ。いいね?」
「そうは言っても、レオン様にだって他に抱えた執務がおありのはずよ。私の為にそんな事は……」
「俺は構いませんよ、シャロット」
まるでウィリアムに飼われた猫のようだ、二人とも。
と、そこへ空気を変えるような柔らかい声が部屋の入口前から届く。
「あら、全員揃って看病とは贅沢ね」
王子を産んでからのグレースは更に磨かれた気品と美貌で溢れんばかり。それは同じ女性のシャロットから見ても思わず見惚れてしまうほどに。
王子王女の世話は乳母がするからといっても、やはり可愛い盛りの子供達。最近は顔を会わす機会が減って残念に思っていたので、このタイミングは意外でもある。
「シャロット様、具合はいかが?」
「大丈夫です。皆、大袈裟なのですわ」
「ウィリアムがアシュリーから高熱の貴方を奪って連れて来たと聞いたわよ?」
――居たたまれない。恋愛小説の展開的には関係者勢揃いといったところね。
「それにしても貴方のその様子はとても、なんと言ったら」
グレースは怒りも呆れもせず、ただただ可笑しくて笑えるといった顔だ。ウィリアムまでがそうなのだから反応に困ってしまう。
アシュリーはため息を吐くしかないようだが。




