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残念な婚約者

 俺の婚約者、イオリア=クランは完璧だった。月の女神のごとき美貌と、たぐいまれなるプロポーション。特にあの立派な乳。

 イオリア=クランは完璧すぎるために婚約者の俺でもあのたわわな乳を揉むことはできなかった。俺は、完璧すぎる婚約者をあまり好きではなかった。人形のようだったから。


 15歳になったイオリアは、人が変わったようになった。うまく言えないが、失敗が増え、表情を出すようになった。途端可愛らしくなった。そして、隙だらけになった。たまにセクハラをしても気がつかないし、嫌がらない。俺だけならよいが、他人につけこまれないか非常に不安である。


 しかし、イオリアは可愛い。できるなら、抱きしめて恥ずかしがらせ…(自主規制)なんかをしたい。いや(自主規制)も捨てがたい。


 しかし、可愛らしくなった結果…悪い虫がウロチョロしている。王太子だけでも頭が痛いのに、他の貴族もイオリアによからぬ想いがある者がいる。


「あ、イオリア様だ。可愛いよな、顔は美人だけど」


「胸もでかいし…」


「イオリアの乳について触れたり語っていいのは俺だけだ!」


「「すいませんでしたぁぁ!!」」


 俺はこうして、日夜イオリア(と乳)の尊厳を守っている。イオリアの良さは乳だけではない。全部可愛い。



「アイザック様………ジャック…すき」


 恥じらいながらすきとか言うなんて押し倒されても文句は言えないぞけしからんもっとやれ。あああ可愛い可愛い可愛い。閉じ込めてしまいたいぐらい可愛い。


「…そうか」


 俺は表情がないと言われるが、イオリアだけは少し見分けがつくらしい。


「ふふ、照れてらっしゃるのね?」


 お前が可愛すぎるからだ、けしからんもっとやってください。好きな女に可愛らしくすきと言われて照れぬ男は頭がおかしいだろう。むしろイオリアが可愛すぎて辛い!


「…ああ」


「うふふ、嬉しい」


 涙目で睨むのも捨てがたいが、この幸せそうに微笑むイオリアが世界一可愛いと思う。間違いない。イオリアとイチャイチャしようとしたら、邪魔(王太子)が乱入してきた。つい追いかけ回してしまった。いつか仕留めてやろうと思う。


「すいません!俺が謝りますから!ゆるして、マジで!」


 今日も護衛騎士をボコボコにしつつ、王太子を追いかけ回す。お前に…いや、誰にも可愛いイオリアはやらん!!

 案外内面はおしゃべりなアイザック。イオリアと微妙にすれ違いつつ、仲良しだと思います。


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