クリスマスイブ
クリスマスイブの日、暇つぶしにした妄想です。
性的な意味を含む描写があります
シーンというより、読み切りになります。
彼は今朝三足の靴を迷って選んできた。
その靴紐が緩いなと気にしているが、なんとなく電車の中で結び直すのは気にしすぎに思えた。
よくわからない恥じを懸念しながら、男の子は偶々隣に座った女学生の事を意識して靴紐の結び直しを忍んでいる。
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女学生は制服を着ているが、学校は午前中に終わっていた。
そのあと彼女は先週から付き合っている男とあった。
その男は歳が八つ上の新卒の社会人であった。
昼飯は友達と駄弁って食べていないため、何処かへ軽く食べにゆきたいと彼女は想っていたが、彼はすでに昼飯を食べた様子でぶらりと散策しつつホテルへ向かってしまう。
彼女はお腹が空いていたが、キスをした。
そして、来週には別れるかなと考えた。
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その男は土日や年末年始は仕事が休みであった。
大学時代のバイト先で仲良くなった二つ下の後輩の女の子と遊ぶとき、時折付いてきていた女の子と最近付き合い始めている。
その子は高校生であった。
本当はバイト先の女の子と年末を過ごす予定だったが、その子に彼氏が出来たので何気なくデートに誘ったのだ。
それから何度かデートをした。
男に趣味はこれといってなかったためお金には余裕があった。
趣味半ばに女学生に気持ちのいい思いをさせていたら、案外雰囲気が良かったので告白した。
男も女学生もクリスマスが口実となって気軽に付き合い始めた。
しかしあまり気の合う相手ではない。
男はシャワーをあびながら来月には別れるかなと思った。
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バイト先の後輩は男と以前付き合っていた。友人として淡白なデートやお泊りをする分には良かったが、気になる人が出来たので幾分関係が煩わしくなった。
気になる人とは付き合っていなかったが、男には彼氏が出来たと言った。
暇をしている後輩の子に彼の気はそれているし後輩もまんざらでないようだ。
結局、彼氏もおらず年末年始は退屈だったので相手の居ない友人と集まってお酒を飲んだ。
好きな人の話になると、このグループでは一番マシな関係の子が私と同じ人を好きだといった。
以前その子には恋愛相談をしていたはずだが、真っ先に彼女はこの場でそれを言い切った。
この場で私の出る幕がないなぁと思ったが、絶対ものにしようと決めた。
どうせさして仲良くないグループだし、私は再来年には憧れの県外へ就活しにゆくのだ。
とりあえずお酒と負けん気の勢いで「まえ子には相談してたはずなんだけど、あたしもその人気になってるよ」という旨の事をいった。
先程からテレビを見ながら、歯をしきりに舌でいじっていた友人Aと、度々携帯をいじっていた友人Bの空気が無関心なものから好奇なものに変わった。
──ああもうどうにでもなれ。
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隣の女学生を気にしていた男の子はその子と同じ中学校に通っていた。
久しぶりに会ったので話しかけるのを迷ったが話しかけることにした。
中学校の頃までは彼女と仲が良かったが、高校になるまで親が携帯の所持を許さなかったため連絡先を知ることが出来無かった。
男の子は素直に彼女を素敵だなと思った。
彼は恋をする間も無いほど部活に明け暮れていたが、久しぶりに彼女を見て、やはり好きだと思う。
クリスマスイブの夕方に一人で帰る彼女を見て、彼は女学生に彼氏がいないかもしれない、これはきっと好機だ! と思った。
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はやる気持ちはわかるが、真実は時として残酷である。
彼女は先程初めての情事を終えたあと、空腹の苛立ちと性格の不一致もあいまり彼氏と喧嘩してきたばかりである。
今なお下腹部の痛みを覚えている彼女だが、男の子にとって知る由もない。
彼女がメッセージアプリの通知を無視してたのは幸いだったかどうか……。
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少なくとも男の子は逸る気持ちで一杯だった。
好機だ好機だと胸中で騒いでいたし、明日はクリスマスだ。
他愛ない話を女学生としつつ、彼は明日誘うか否かと葛藤していた。
同じ中学校であったが彼女とは最寄り駅が一つ違う事が会話の中でわかった。
ええいままよ! 好機だ! と唱えながら彼は彼女を誘った。
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女学生の顔は一瞬曇った。
彼のことが嫌いなわけではなく、淡白な気持ちなれど彼女には付き合っている男が一応いるからだ。
嫌いというより詰まり、打算による表情の硬直であった。
しかし、ああ彼は私の事好きなのかもしれないなと思い、その事はなんとなく嬉しい気がしてしまった。
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後で連絡するねと女学生に言われ、男の子は連絡先を交換した。
かような会話のあと連絡先の交換をしたということは、どちらかといえば期待しうる展開であったが男の子の目には彼女の表情の強張りが焼き付いていた。
心臓は早鐘を打っていた。降りる駅の違う事が大変な救いに思われた。
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女学生はメッセージアプリを開いた。
喧嘩に対して男から安っぽい謝罪の通知が何件か来ていた。心配だなんだとつらつら書かれたあと、最後の方はあんまり送るのもなんだといって連絡は途絶えていた。
試しに彼のツイッターを開くと、彼は早々と友人の集まりへ転がり込んでカラオケを楽しんでいるようだ。
何かに使う気もなかったがなんとなく、彼のツイッターをスクリーンショットして、別れるとだけ返信してブロックした。
ああ、下腹部の痛みが生々しくて無性に腹立たしい。
──きっとノーカウントだから、今度が初めてってことでいいよね?
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そのあと、女学生に誘われた学生の男の子が歓喜をするのだが、彼には彼女の今年を知る由もない。
2018年頃に殴り書いた物。(時々過去作をぶっこむので作品の並びが時間順というわけではない。手直しも多いからね……)
それから少し手直しはしたはずですが、おそらく時間軸などテキトーです。
気が向いたら整理します。