6.魔法と銃、両立できるの?
主人公が銃を作成して俺TUEEE!
なろう界隈ではよくある光景だ。
魔法という概念がある世界でも銃は猛威を振るう。
銃というのは恐ろしい武器だ。
遠距離からの攻撃を可能とし、ヤワな装備なら楽勝で貫通する。
特訓も弓ほど難しくなく、持てばどんなヒョロガリでもいっちょまえの兵士になる。
この恐るべき兵器の開発によって戦争による死傷率の増加以外にも、貴族という特権階級の衰退や民主主義の台頭など世界状況を大きく変えていった。
ところで魔法の世界で銃は威力を発揮できるのだろうか。
銃と魔法の決定的な違い。
それは魔法は使える人が限られているケースが高く、後天的に魔術師になることは基本的にないという点だ。
だが銃は生産さえできれば誰でも銃士になれる。
これが銃のアドバンテージだ。
逆に魔法はあらゆる状況に適応することが可能だ。
火をつける、念力を使ってものを浮かせる、果てには心すら惑わし操る。
では銃は魔法の代わりになり得るのだろうか?
答えは否。
もちろん魔法が呪文を唱えれば即発動するタイプなのか否かでも違うかもしれないが評価は変わらない。
そもそも魔法の利用価値と銃の価値は全く異なる所に置かれているからだ。
魔法は工作兵的な要素を伴っている。
堀を作り出したり壁を作り出したり、現代戦以上に発展的な防衛戦を繰り広げられるだろう。
むしろこの手の魔法は銃と相性がいい。
あまり魔法で補助を行いながら銃撃戦を繰り広げるというタイプは見かけないのが不思議なくらいだ。
そうなるとむしろ銃の開発が今までどうして行われてこなかったのか?
そこでやはりネックになるのが火薬の存在だろう。
火薬は錬金術の研究中に偶然生まれた産物だ。
魔法の概念のある世界で火薬が生まれる土壌となるとやはりそれなりに科学の発展が必要になる。
そして大抵は異世界の科学は遅れているのだ。
だから主人公が火薬の概念を持ち込むというアイデア自体は間違っていない。
もしも銃のような存在が異世界で存在するとするならば、近代以上の時代の話か、火薬の代わりに魔法が使われていることだろう。
では魔法世界で銃器が誕生したらどうなるのだろうか。
まず弓矢の衰退が考えられる。
弓は銃と違い、訓練に時間がかかりすぎる。
手軽で強力な殺傷能力を持つ銃は弓を過去のものにするだろう。
魔法に関しても大きく変化していくだろう。
一人に対する攻撃魔法よりも陣地全体を対象とするような、大規模な魔法や補助魔法が中心になるだろう。
特に弾丸から身を守るための魔法や土木作業を応援する魔法、ないしは妨害する魔法が発展していくだろう。
さらには銃器と魔法が合わさったようなアーティファクトなんかも開発されるかもしれない。
異世界で科学と魔法のハイブリットなんてロマンのある話だ。
そう考えると現代知識で俺TUEEE作品のあるべき姿とは現代世界のアイデアを異世界にどう落としこむか。
どうやって実現してそれをうまく利用するかがカギとなってくるのかもしれない。
ただ、めちゃくちゃ強いレールガンをどこでもポケットから放り出して振り回すよりも、AK-47をモデルにしたドワーフたちが作り上げた魔法のライフルを軍隊にもたせた方がなんだか特別感があるではないか。