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1話 父上が無敵になるまで
私の父上はムテキング
私の父上は無敵である。
そう気がついたのは、私が大人になってからだった。
父上の家系は、江戸時代から続く家柄で、きちんとした家系図も残っている。
祖父は公務員。父上もまた公務員。
四兄弟の長男である父上は、きっと人知れず大きなプレッシャーを背負っていたのだと思う。
それでも父上は、圧倒的だった。
「壱果が生まれる頃、口から血が出るほど勉強したんだ」
耳にタコができるほど、何度も聞かされた言葉。
冗談のようでいて、どこか本気だった。
血を吐くほど勉強した、無敵の男の娘。
それが、私「巳ノ星 壱果」だ。
父上の期待の上で育てられた私は、
気づけば、別の意味で「無敵」になっていた。
鋼のメンタル。
多少悩んだ時期もあったが、それすら乗り越えてしまった。
何があっても折れない、しなやかさ。
父上は、日本語、英語、中国語、そしてもう一つの言語を操るマルチリンガルだった。
私は純日本人。
それでも、父上がいればガイドなしで海外を歩けた。
小学生の頃には、生意気にも父上の経費でファーストクラスに乗り、ロサンゼルス経由で空を越えた。
それが、当たり前だった。
父上が「ムテキング」である世界では。
でも父上の特性は、とてつもないものだった。




