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第1話

貧乏神あつかいの村田蔵五と、忌神の少女・楠本いね子。

ふたりは“無限炉”として神器府に拾われ、怪異退治の任務に放り込まれる。

しかし周囲はなぜか美少女だらけ。

しかも全員ちょっとおかしい。

振り回され、巻き込まれ、それでもなぜか敵は瞬殺。

ゆるくて強い、アホで爽快な和風ファンタジー。



ーーーーーー



江戸幕府が始まってから約100年。

戦乱の跡もなくなり、天下は一見、太平となっていた。

時々発生する妖鬼や怪異。それを鎮圧する豪傑。

悪事を行い汚名を残す忌神。

それらが繰り返される日々だった。


さて、長州の田舎町。

蘭学塾で書生をしていた村田蔵五はホームレスになったばかりだった。

ある日突然、蔵五と関わる男という男が不運に巻き込まれるようなった。

疫病神とあだ名をつけられ、仲間から逃げられる。


「疫病神が来た。逃げろ、いてっ!タンスの角で小指を打った」

「すいません…」


「蔵五だ!逃げろ、うわ、鳥の糞が頭にかかった」

「すいません…」


「どうしてくれるんだ蔵五、浮気して恋人に振られた」

「すいませ…いや、それは自業自得ですよ」


そうこうしているうちに、足の骨を折った塾頭に出ていってくれと懇願され、塾を追い出された。

流行り病で家族を失い、頼る親戚もいない。あてもなく町をトボトボ歩く。

ふと道端に、ガリガリと痩せて身なりの汚い少女が座っているのに気付く。

蔵五は隣に座り、話しかける。


「気を悪くしないで聞いてほしいんだけど、君は乞食だよね?」


少女は返事をしない。空をぼんやりと見上げている。


「俺も今日から乞食になったんだ。仲間の男に近付いたら不幸にさせてしまう貧乏神体質でさ。こんなんじゃ仕事なんて見つからないから、もはや乞食になるしか道がない。乞食のやり方を教えてくれないかな」


少女は何も答えない。代わりに少女のおなかがグーと鳴った。

蔵五は懐からおにぎりを取り出し、少女に見せる。


「食べる?」

「ゴクリ」


少女はおにぎりを見て喉をゴクリと鳴らす。

しかし、すぐに視線をそらしてまた宙を見つめる。口からよだれがだれていた。

少女が言う。


「私は乞食ではありません。だから施しは受けません」


蔵五は頭をかく。


「どう見ても乞食だけど」

「乞食ではありません。忌神の娘です。迫害されて生きる術を失い、ただこうやって道に座っています。乞食などせず、このまま野垂れ死ぬつもりです」

「忌神の娘?」

「そうです。私と話なんかしていたら、あなたも迫害されますよ」

「俺も疫病神って呼ばれてるから、気にしなくていいよ」

「気にします。目障りなので、どこかに行ってください」

「わかった」


蔵五は少女の手におにぎりをねじ込む。そして、走り出す。

少女が何かを叫んでいたが、振り返らず走り続けた。


しばらくして、来た道をコソコソと戻り物陰から少女を見る。

少女は泣きながらおにぎりをほおばっていた。

蔵五は満足して、今度こそ立ち去った。






寺の軒下で野宿をした蔵五は、翌朝また町に出る。

まだ多少の身銭はある。団子を2つ買い、少女の元に向かう。

昨日と同じ場所に少女はいた。

何も言わず、蔵五は横に座る。そして、団子を一本差し出す。少女は何も言わず受け取る。

2人で並んで食べ始める。

食べ終わると蔵五が言う。


「仕事を探してくるよ。女だけの職場とかないもんかな。君も一緒に探さない?」

「どうぞ私にはお構いなく」


その時、2人の目の前を1人の小柄な侍が通り過ぎた。2メートル程の長さがある異常な大刀を腰に2つぶら下げている。

何が楽しいのか、ニヤニヤと笑いながら辺りを見渡している。

蔵五がつぶやく。


「豪傑の大鳥様だな。あの大刀で二刀流をする膂力の持ち主だ」


言って、少女を見る。

恐ろしい目つきで大鳥を睨みつけていた。

蔵五はビクリとなって固まる。


「どうしたの?すごい怖い顔をしてるけど」

「仇です」

「え?大鳥様が?」

「はい」


蔵五は理解する。忌神退治も豪傑の仕事のうちだ。少女の親を退治したのが大鳥なのだ。


「う、ううう…」


やがて、少女が下を向いて嗚咽を漏らす。

蔵五は立ち上がりその場を去る。

しばらくして、団子を2本持ってまたやってくる。


「どうぞ」


少女は泣きながら団子を食べる。


「おいしい?」

「ちょっと塩っぱいです」

「それは鼻水と涙の味だと思うよ」

「そうですね。でもおいしいです」






その時、茶屋にて。

旅姿の三人の女が茶を飲んでいる。高貴な空気をまとった女、スラリとした武芸者風の女、そして小柄な少女。

3人とも美しい見た目だった。

武芸者風の女が、高貴な女に言う。


「姫様、この藩には、確か大鳥殿という豪傑がいたと思います」

「大鳥様?どんな人ですか?」

「確か、小柄ながら2本の大刀を使いこなす膂力の持ち主だったような」


小柄な少女が言う。


「雑魚ですね。そういう雑魚ほど豪傑であることを鼻にかけて威張りたがるんですよ」

「小鈴さん、憶測や偏見は駄目ですよ」

「はーい」


高貴な女がふと向こうを見る。乞食の少女と書生の少年がぼんやりと空を見ていた。


「姫様、何を見ておいでですか?」

「あの2人は何をみているのかな、と思いまして」

「空、ですかね」

「姫様はどうせ、乞食の子がかわいそうで気になってるんでしょ」


高貴な女性はそれに答えない。代わりに言う。


「旅は順調です。今日はこの町で一泊しましょう…おや」

「乞食の女の子が泣いていますね。姫様、心配なら声をかけてきたら?」

「まさか。事情も知らずしゃしゃり出たら、あの2人に失礼です」

「じゃあ、もう少しここで様子を見ましょうか」

「そうですね。そうしましょう」






空を見ながら蔵五が言う。


「俺の名前は村田蔵五。君の名前は?」

「…楠本いね子です」

「いね子ちゃん。ねえ、良かったら、話してよ」

「なにをですか?」

「忌神うんぬんの話。話したら気が楽になるかもしれないし」


いね子の目からまた涙がポロポロとあふれてきた。やがて、うつむく。

蔵五があわてる。


「ごめん。無理して話さなくていいよ。力になりたかっただけなんだ」

「…父」

「ちち?」

「はい、父親です。私の父が忌神でした」


少女はゆっくり話し始める。


「父は豪傑である事を隠して生きていました。生き物や植物から気力を受け取り、それを他者に施す力の持ち主でした。しかし、気力を奪う事が危険な行為なので、人にばれないように生きていました。その力によって迫害される事を恐れていたのです。父は平凡なひとりの農夫として、母と私を大切にして穏やかに生きていました」


蔵五は貧乏神扱いされている自分を思い出す。いね子の父親に共感を感じる。


「ある日、母が流行病で倒れました。村医者が来ましたが、手の打ちようがない、とのことでした。そして、父はうろたえて、母を助けるためにその気力を奪う力を使いました。自分の田畑から生命を奪いました。田畑は一夜にして枯れました。しかし、手遅れでした。母は亡くなりました。私は父と泣いていました。そして、枯れた田畑を見た村人が藩に連絡をして、あの大鳥がやってきました。大鳥はニヤニヤ笑って、父に外へ出ろと言いました。そして村人達が見る中、自分の武芸を人に見せて威張ろうとするかのように、父を…う、うう」


蔵五は黙って空を見あげている。気の済むまで泣かせてあげようと思ったのだ。

そこに、美しい三人組の女がやってきた。

武芸者風の女が言う。


「書生くん、そこの少女は大丈夫か」

「ええと、あなたがたは?」

「通りすがりの者だ。心配になってな」


小柄な少女が言う。


「書生くんが泣かせたの?」

「いえ、私ではないです」

「ふーん。それならいいけどね」


高貴な女性が言う。


「差し出がましいのですが、これを」


串団子を2本と、つつみ紙を蔵五に渡す。


「この少女の面倒を見てくださっているのでしょう?」

「まあ、はい」

「ありがとうございます。では、これにて失礼」


三人の女性は立ち去る。

やがて、泣き止んだいね子が言う。


「…何だったんですか?」

「よくわからない」


二人で団子を食べながらつつみ紙をあげる。小銭が入っていた。


「だから私は乞食じゃないのに」

「まあ、ありがたく貰っておこう。仕事が見つかるまでのお金の足しになる。ねえ、一緒に仕事を探そうよ。忌神の娘と貧乏神。助け合って生きていかないか?」

「…とてもありがたい提案なのですが、お断りします。私にはやるべき事がありまして」

「もしかして、仇討ち?」


いね子は否定しない。

蔵五は続ける。


「そんな痩せこけた身体で何ができるの。大鳥様に斬り捨てられておしまいだよ。残念だけど無理だ。やめておいたほうがいい」

「放っておいてください」

「そう言われると、何も言えなくなるけどさぁ」


そこに大鳥がやってくる。ニヤニヤと笑いながら歩いている。

ふといね子の存在に気付き、やってくる。

目の前までやってきた大鳥が言う。


「お前さぁ、忌神の娘だろ。俺が斬り捨てたあの時の。ここ数日、ずっと俺を見てやがるな。恨んでんのか?」


いね子は大鳥をにらみつける。気後れする様子もない。横で蔵五はオロオロする。


「おお、怖えな。俺も好きでやったわけじゃねえ。仕事なんだよ。だから恨むのはよせ」


そして懐から小銭を取り出し、いね子の目の前にばらまく。


「ほれ、恵んでやる」


いね子の全身が震える。怒りで肌が赤くなっていた。


「目障りだから、この町からすぐに出ていけよ」


大鳥が背を向けて歩き出す。

いね子が一つ深呼吸をして、言う。


「村田様、お世話になり、ありがとうございました」

「え?なに?」

「敵討ちをしてきます」

「だから、そんな小さな体で何ができるの」


いね子はにっこりと笑って言う。


「実は、父は忌神ではないのです。忌神は私なんです。父は私をかばったのです」

「…え?」

「大鳥を枯らしてきます。殺しはしません。痛い目に合わせて懲らしめるんです。その後、私は忌神として死にます」

「なに?どういうこと?」

「では、さようなら」


前作『収納スキルで終末世界を生き残る方法』から来てくださった方、ありがとうございます

今回初めての方も、拙作を見つけて頂きありがとうございます

毎日20時更新で、5月下旬完結予定です

微エロギャグありです

よろしくお願いします


完結済みで、ギャグゾンビ小説があります

よろしければそちらもご覧ください


収納スキルで終末世界を生き残る方法

元社畜の主人公に与えられたのは、

5キロまで物を出し入れできるだけの微妙スキル『亜空間ロッカー』。

この世界、どうもおかしい。

ゾンビはいるのに数が少ないし、

何かと設定が雑すぎる。

それはさておき、やることは決まっている。

ルールを把握し、裏を読んで、

このクソゲーをエンディングまで生き残る。

社畜が分析と実験で終末世界を攻略していく、

ギャグ多めのゾンビサバイバル。

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