5、リセット回避に初成功
「リリエルはどのドレスがいいのかしら?お母様はこの赤が好きよ。」
(おかあさま、ちょっと、いや、かなり派手です。過去世で私を騙し塔から突き落とした男爵令嬢が着ていたような毒毒しい色。だから赤は苦手です。)
「あのお母様、もう少し淡い色が好きです。」
「そうなの?じゃこのオレンジと金のドレスはどうかしら?」
(これのどこが淡い色なの、お母様は華やかな方だからお似合いになるお色だけれど、私には似合わないの。)
私の容姿は、華やかなお母様似ではなく、前王妃つまりお祖母様譲りと言われていた。透き通る銀色の真っ直ぐなさらさらな髪に、王家の女性系統である薄紫いわゆる淡いスミレ色。お父様はもう少し濃い紫の瞳だけど、とにかく銀髪スミレ色の瞳に、オレンジは合わない。
地球の前世では、ゲームの登場人物の色合わせのためにカラーコーディネーターの資格も取得していたから、自身の見目を考えても寒色系だ。
「リリエル、あなたは公爵家の姫として、目立たなくてはなりません。王太子殿下は従兄弟とは言え、結婚相手となる可能性も高いのですから。」
(お母様、無茶を言わないでください。会ったことないからどんな方か知らないし、あまりに近い従兄弟でお兄様のご友人である王太子殿下と結婚なんて無理。)
この時私は、七百年ボケをしていたのだと思う。今の王太子というキャラクターをベルプリ内に設定したのは、まさに私だったのだから知らないはずがなかった。はっきり言って度重なる人生リセットで、地球での人生やゲーム内容がほとんど胡散霧散しつつあった。
「じゃあリリエル、格調高いこれにしましょう。」
金地に黒糸で薔薇の花が全体に刺繍され、首周りと袖には黒のレースがこれでもかとキンキラキンでヒラヒラ。
どこかで見た事が、、、この嫌な感じは、、あ、そうだ、思い出した!主人公はそのドレスを着ない設定だった。それを着るのは脇役の悪役令嬢と決まっていた。もちろんその脇役が断罪され破滅するパターン。
(そのドレス、ぜったいダメ。誰が、ではなくてそのドレスを着た人が悪役令嬢になってしまうのよ。嫌、と言わなくては、ベルプリでこのドレスを来た娘は死ぬ運命。リセットまっしぐらのドレスなのよ。だから嫌だと言わなくては。)
お母様が侍女に「これをリリエルに着せて、髪飾りを決めましょう」と指示を出している。侍女達がド派手な殺人ドレスを持って私に近寄ってくる。お母様にむかって嫌と言えるのか。
「お母様、それは、、、、、デス。」
その時だった。
頭の中でケルビム様の声が響き、すごい地響きがし、同時に全身を頭からつま先まで、静電気という名の雷が瞬時に駆け抜けた。
《リリエル、それを着たらリセットだ。》
「つ、痛っ、、う、、う、、。」
ケルビム様がチャンスをくださったのだ。
あまりの痛さに悶絶し意識が飛びそうになるが、膝をつき床に手をつきながらも必死でこらえた。
(ケルビム様っ、ありがとうございます。こんな時期に死ぬ気はありません。ちゃんと拒否しますから。もう少し待ってください。)
お母様と侍女達の慌てる声がする。
「お嬢様っ、いかがされましたか?」
「リリエルっ、大丈夫?」
私は、金色のド派手ドレスを掴んで決死の思いで立ち上がり、お母様に淑女らしく優雅に微笑んでお願いした。
「お、お母様、わたくし、このドレスではなくて、あちらのドレスを、薄紫のシフォンのふわふわ生地に銀糸でスミレの刺繍の縁取り、腰のリボンが銀色の、あのドレスを着ていきたいのです。」
「、、わ、わ、わかったわ、リリ、エ、ル。」
そう言って何故かお母様がその場でお倒れになった。
わたしの横で専属侍女のエバも倒れている。
試着をしていた私のドレス室は侍女達の叫び声で更に大騒ぎになり、一分もしない間に護衛と家令と侍女頭が飛び込んで来た。
それに遅れ数秒後、嫡男のアレクサンダーお兄様、次男のシュベールお兄様と、更にもう一人が剣を片手に私の部屋に飛び込んで来た。その後にも色々と人がいたような気がするけど。
「何があった!」
アレクサンダーお兄様が場を取りまとめる。お兄様と一瞬目があった、すぐに目をそらされたけど。
「奥様がお倒れに、お嬢様が、お嬢様が、、」
侍女達が口々に叫んでいる。
「賊ではないのだな?不審者はここにいないな?」
「はい、奥様とリリエルお嬢様と私達侍女だけです。」
「わかった。マーサ達は母上をお部屋に、チェイスは医師を呼んで来い。護衛は念の為に屋敷の内外を捜索、不審者は捕らえよ。」
アレクサンダーお兄様が家令のチェイス、侍女頭のマーサ、護衛の騎士達に指示を出している。
「お嬢様、血が、、」




