44、本当の転生
今日で一旦終了いたします。
完結後も、多くの方々が読んでくださって、ありがとうございます!
神は告げる。
「ではケルビムとリリエルを、人間界に転生させることにする。
それで良いな。転生の条件を聞いてから辞めるのはなしだぞ」
「「はい」」
ケルビムとリリエルは頷いた。
「では条件を伝える。
人間界に転生する他の魂と同じように、まずは転生してどのように生きるか抱負を決めること。
二人を同じ世界に転生させるがどちらが先に転生するかは教えない。
それから一番大事なことだが、これまでの記憶は全て封印するので、互いが出会ったとしてもすぐにはわからないはずだ。
ここまで良いか」
「あの、記憶は永遠に消えてしまうのでしょうか」
「消去ではなくて封印だ。
同じ魂の片割れと出会った場合、過去世を思い出す者もいるので、お前たちが思い出す可能性まで封印するつもりはない。
稀に過去世を覚えて生まれる魂もあってな。
転生で生まれる瞬間に天界でのことは一旦忘れるのだが、
ずっと覚えている者がいるのだ。宗教者の生まれ変わり、というのを聞いたことはないか」
「あ、、そういえば地球では偉大な僧が亡くなった後、数年後にその生まれ変わりの子供が見つかる、と聞いたことがあります」
「そうだ。だから記憶を封印しても、全て抹消することはない。
多くの者は人生の最中には思い出さず天界へ戻ってきた時に思い出している。皆と同様の待遇だ」
「わかりました」
「では次はペナルティだ。もし転生先で出会えない、出会っても結婚に至らなかった場合は、天界に戻っても二人の魂を一つにすることはしない。
また天界で二人が遭遇することもないので、そのつもりでいなさい」
「えっ?では結婚できなかったら、二度と会えないのですか」
「そうなるな。今ここで一つになる、又は、共に天界で天職につくかの選択肢を断ったのだから、そのくらい当たり前だと思わぬか。生命の樹を通って人間界に生まれ出る魂たちは、みなそうやって生きて行くのだ。
条件はみな同じだ。良いかの?」
リリエルはケルビムを見上げる。
「ケルビム様、私は必ずケルビム様を探します。だからケルビム様も私を見つけてくださいね」
ケルビムはリリエルを翼で抱きしめた。
「リリエル、大丈夫だ。私達はきっと出会って、共に生きることができる。そう信じている」
「さて、では、そろそろ行きなさい。熾天使セラフィムが魂の間にいる。ケルビム、そなたの翼は天界で預かる」
神がパチンと指を鳴らすと、ケルビムの背中から翼が外れ、神の手元に飛んでいった。
「ええっ、翼って外れるのですか?」リリエルが仰天している。
「天使の翼は神から授かるものだ。私の翼は智天使の翼だった、人間になるのだからお返しせなばな」
リリエルが泣き出す。
「ケルビム様、ケルビム様が天使じゃなくなるなんて。後戻りできないのですよ」
「わかっていて主に願ったのだから後悔はしない。翼があっても無くても私の魂に変わりはない。リル、安心しなさい。きっと出会えるから」
「はい」
「では、主の温情に感謝し、行ってまいります」
「良い人生を歩め」
ケルビムとリリエルは《魂の間》に向かった。
※ ※ ※
魂の間では熾天使セラフィムが待っていた。
「ケルビムもリリエルもどうしても人間界でやり直しをしたい、というのだな」
「はい。我儘を申しますが、お許しください」
「わかった、もう何も言わぬ、お前たちが決めたことだ。
隣室にザフキエルがいるので、ケルビムは次世界での抱負を決めて転生の準備をせよ。
わたしはリリエルの抱負を聞いて転生させる。
少し時間を与えるので別れの挨拶をせよ」
「ケルビム様、必ず見つけますね。一緒に生きるために」
「リル、私も必ず見つける。二人で魂を一つにして人生の中で愛を紡いで行こう。私の半身よ。では」
ケルビムは隣室へ去った。
その瞬間、リリエルは言いようのない寂しさを覚えた。
「リリエル、大丈夫か?」
「いえ、大丈夫だと思っていたのですが、急に寂しくなってしまって」
「魂の半身とはそういうものだ。
天界で共に過ごすのが一番良い方法だったのだが、ケルビムは地球での人生が途中で終わってしまったお前に、真の人生のやり直しをさせてやりたいと思ったのだろう。相変わらずあれは愛情が深い」
「ケルビム様の愛情ですか?」
「言うつもりはなかったが、ケルビムは魂の欠片のお前を殊の外、大切にしていたからな。
人としての幸せを経験させたいのだろう。
さて、リリエルは次の人生どのように生きたい」
「、、、人の心の痛みを癒せる人になりたいです」
「綺麗事ではすまないぞ。わざわざそんな苦しい道を選ばずとも」
「はい、ウィンザーでは王妃として民を守る女神として多くを経験しましたが、次は人の前に立たなくても、そっと心を癒せる人になりたいのです。ケルビム様の魂の一部として恥じない生き方をしたいと思っています」
「わかった。では、人の心に寄り添える力を持って生まれると良い。どんな世界かどんな名前になるのか、生まれて物心ついてから知ることになるだろう。しっかりと生きなさい」
「はい」
「では生命の樹の庭へ送るので、そこから出発すると良い」
「セラフィム様、色々とありがとうございました」
「うむ、息災でな。健闘を祈る」
「はい。精一杯、生きてまいります」
リリエルの心はケルビムと離れた寂しさを抱えつつ、未来の新しい人生への期待と覚悟で胸がいっぱいになった。
(きっとケルビム様と出会って、恋をして、愛が芽生えて、一緒に健やかなる時も、病める時も、喜びも悲しみも共に生きたい。きっとそうなる)
リリエルは生命の樹の庭へ移動し、自らの《生命の実》の中に入った。そして実から枝を通り生命の樹の幹を通って、新しい人生へと送り出された。
新しい世界でケルビムの魂と出会うのは、また別のお話。
皆様、ずっと読んでくださってありがとうございました。
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第二部は完結、第三部を連載中です。




