43、帰天
ここは天界の生命の樹がある庭。
生命の樹の根元にケルビムとリリエルの姿が現れ、ケルビムの背には翼が戻った。
熾天使セラフィムが二人を迎えるために待っていた。
「ようやく戻ってきたな。ケルビム、リリエル。」
「セラフィム殿。不在中のご配慮ありがとうございました。」
「ケルビム、ご苦労であった。とはいえケルビムの人間界で結界となっていた三十八年は長かったであろうが、天界から見た不在時間は半日程度だったからそこまで大変ではなかった。しかし其方たちにとっては長い人生であったろう。リリエルもしっかりと生きたな。」
「セラフィム様。初めて途中で死なない人生を歩むことができました。ご加護をたくさんありがとうございました。」
「気にするでない。私のミスでもあったからな。ルベールの魂はすでに次の新しい人生へ転生したぞ。次は医師になって人を救いたいと言っておった。」
「ルベール様は、もう新しい人生を始められたのですね。良かったです。」
「で、ケルビムとリリエル、やっと天界に戻ってきたのだが、今後どうするか主が相談したいとお待ちである。黄金の間へ行くと良い。」
熾天使セラフィムに促されて智天使ケルビムとリリエルは主の執務室《黄金の間》へと向かった。
※ ※ ※
「良く戻った、ケルビム、リリエル。人間界での役目大義であったぞ。」
「主よ、良い経験をさせていただき感謝いたします。」
「天界で多忙だったケルビムが、ただただ人間界と地獄界の境目で結界柱の役目を三十八年もし続けたのだから、それはそれで大変であったろう。」
「何もせずに蓋の役目だけをするわけでしたから、、しかしながら人間界の感情や地獄界の憎悪など、様々な魂の流れを感じることができましたので、天界では直接経験できることではなかったので勉強になりました。」
「ケルビムらしい意見だけな。」
神は満足そうに頷いて笑った。
「ところでリリエルはどうだった。初めて人生を寿命まで全うした感想はどうじゃ。」
「はい神様、多くの人との繋がりの中で一つ一つ歳をとり、家族が増え、その家族が成人し夫を天へと見送り、その間に我が天命に向かって努力し続ける大変さと幸せを噛み締めることができました。今回、リリエルとしての身が寿命になったことで結界柱としてケルビム様と入れ替われて良かったと思っています。ありがとうございました。」
「うむ、色々と魂として学んだようだな。で、やっと天界の光としてケルビムと白百合が揃ったわけだが、どうする?」
「どうするとは?」
「そなたたちはもとは一つの巨大な光の魂であったので、一つに戻るということだ。」
リリエルが息をのむ。
「か、神様、一つに戻るとは、、、もしかして私はケルビム様に吸収されるのですか?」
「吸収というよりは溶け合って一つになる、ケルビムから欠片として落ちたのがリリエルなので元の一つに戻るのが良いのかと。ただすでにそれぞれの魂として存在しておるので、そなたたち二人の希望を聞いてやりたいとも思っておる。まあ言ってみれば、そなたたちは分身のような存在なので一つでも二つでもあまり変わらんとも思うのじゃが。」
「確かにそう言われたら、私自身がケルビム様化しているようにも思います。十六歳の時にケルビム様の魂の片割れとわかってから、自分というものがそれまでの私とかなり変わってしまったようでして、無理をしてそうなったわけではないのですが、ケルビム様の一部分だと思うと色々と理解しやすくなったり、ちょっと賢くなったのではないかと思うほどでした。」
「確かに、この三十八年、結界の底からウィンザーを見ていて感じたのだが、王太子妃になり王妃になったお前は、馬鹿をやらかさなくなったな。」
「でしょう?」
リリエルは胸をはる。
「そこで胸をはる問題ではないだろう、それまでが酷すぎたのだから。」
「むうっ!ケルビム様ひどいです。私頑張ったのですよ。」
「わかったわかった。主の御前だ、タメ口はやめなさい。」
「良い良い。二人とも語らうのは久しぶりであろう。帰天してすぐに呼び出したからのう。あまり時間がないので呼び出したのだ。一つに戻って智天使を続けるか、それぞれの魂で分けたままならリリエルの天命を決めなくてはならぬ。人事のことなのであまり時間をかけられぬのだ。」
「主よ、これは私の思いなのですが、二人を同じ世界へ転生させていただけないかと。」
「え?ケルビム様どういう意味ですか。」リリエルが驚いた。
「ここでする仕事は天使の仕事だ。私は智天使の仕事を引き続きするとして、リルは光天使になるだろう。主とセラフィム殿が考えておられるとすれば私の補佐か、人間界へ出向いて守護天使になるだろう。それをすれば今後ずっとその役目を賜ることになる。今だから主に直にお願いできるのだが、私はリリエルとこれまで歩めなかった人生を全うしたいと思っている。」
「ケルビム様と結婚して人間として生きる、ということですか。」
「そうだ。リルはルベールとの人生を全うしたが、転生して人生がわかっていて全うしたことだ。普通の人間は出生の瞬間、本当の転生の意味を忘れてしまうものがほとんどだ。天命を知らず輪廻転生というものを信じているくらいの話だ。人として生まれ人としてしっかりと生きてみたいと思わないか。私は同じ魂だった君ときっと出会えると信じている。」
「。。。。ケルビム様。」
「ケルビムの言い分は理解した。つまり智天使に戻らずに、人間としてリリエルと同じ人間界で生きたいということだな。」
「主よ、その通りです。」
「リリエルはどうだ。」
「確かに、、、四度ともケルビム様と出会っていたのに途中で死んでしまいました。もしやり直せるなら。。」
「本当にそれで良いか。特別に人間界に転生させるわけだから、条件はつけるぞ。」
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