41、家族の幸せ
「ちちゅゆえ、ひゃひゃゆえ、ごちげんよ。」
「ごちげんよ!」
エドワード国王の周りで小さな王子達が走り回って魔法を放っている。
「ははっ、エルラールもバサラも頑張っているな、えらいぞ。」
「ひゃい、ぎゃんばってまちゅ。ひかりまひょう、ヒェイ!」
王子が光魔法を放つと、土だけの地面に草木が生い茂って花が咲き木には実がなってゆく。
「エルラールの光魔法は凄いパワーだな。」
「ぼくもぼくも、やみまひょう、ヒェイッ!ちちふえ、みちぇ。」
もう一人の王子が闇魔法を放つと、地面から土が隆起し小さな塔が現れ先端から水が噴き出していく。
エドワード国王は笑みを濃くする。
「バサラの闇魔法も凄いな。今の見たか?リル。」
「あなた、褒めてばかりはいけません。この二人は毎日、王城のお庭で魔法を放ちまわっているので、庭師が困っているのです。陛下からも何とか言ってください。」
「まだそこまでパワーが出ているわけではないだろう?」
「エルラールは今朝、私の薔薇庭園で光魔法を使い、全ての薔薇を巨大化させてしまったのです。薔薇一輪の花が人より大きくなってしまって薔薇の棘が短剣のようになり、恐怖の薔薇園になってしまいました。それにバサラも先ほど王子の森で、噴水に向けて闇魔法を放ち水の妖精が一瞬でたくさん増えてしまって、森の至る所から水が噴き出して森は湖になっておりますよ。」
「そこまでやらかしているのか。私の幼少期もよく似たものだったが。魔法教育担当のシュベールは何をしている。」
「一緒になって創造魔法を作り出すので示しがつかないのです。」
「、、、そうか、、ハハハハッ、わんぱくで良い。王子教育も厳しいのだからせめて魔法は伸び伸びと伸ばしてやりたい。」
「陛下は子供達に甘いのですから。」
王妃リリエルは苦笑しつつも優しい笑みを浮かべていた。
三年前に王太子妃リリエルは双子の男子を出産した。これまでウィンザー王国で双子は命を二分するとして忌み嫌われていた。極秘事項ではあるがエドワード自身が双子だったこと、二人とも立派に育って、弟アレクサンダーはホワイティエ公爵として今は王家を支えていることもあり、エドワードは迷わず双子の息子をを王子として育てることにした。長男はエルラール、次男はバサラと名付けた。
過去のブーレ湖での地獄ゲートの天をも巻き込む災害時、ブラックウェル家のバサラとエルラールが命を賭してウィンザーを守ったからだ。
王太子夫妻に王子二人が生まれたことで、二年前に前国王夫妻は退位しエドワードは国王にリリエルは王妃となった。
そして昨年、国王夫妻に王女が生まれた。王女の名はユーリア。リリエルの実母の名前をもらうことになった。
第一王子エルラールは光魔法を、第二王子バサラは闇魔法を両親から受け継いだ。そしてまだ一歳の第一王女ユーリアは光魔法を受け継いでいた。
幸せな国王一家はウィンザー王国の幸福の象徴だった。
王族だけが幸せなだけではいけないと、エドワードは国の経済を安定させ、国民の幸せを第一に考えた。結婚も出産も奨励され補助金政策も打ち出された。また親を失った子供達への政策はリリエルが貴族の夫人達を巻き込んで手厚く保護をした。誰もが教育を受けることができ、将来のための職業訓練も多岐にわたって子供達の未来を約束するものとなった。
エドワードが国王の時代、賢王と賢妃の黄金治世と言われ国は更に栄えた。
※ ※ ※
リリエルはブーレ湖のほとりに佇み、手で湖面を撫でている。
「ケルビム様、いかがお過ごしですか。ルベール様が旅立たれて三年がすぎました。エルラールの国王ぶりも安心して見ていられます。」
リリエルは湖に向かって話しかける。
三年前、国王エドワード・ルベール・ウィンザーは五十五歳でその生涯を閉じた。ウィンザー世界では長生きだった。王太子エルラールが二十五歳の時に王位を譲り、エドワードは退位して本当の兄弟、アレキサンダーとシュベールと三人で魔法の研究に没頭した。地獄ゲートや瘴気やアンデッドの研究など、ウィンザー世界の未来を守るための研究だった。
リリエルは女神の立場で光魔法の研究をした。ウィンザー王国では光魔法をもつ女児が多く生まれていた。光魔法と古代魔法で国を守る方法を体系化し癒しの能力を研ぎ澄ます光魔法学校を設立し後進の育成にあたった。
今のエルラール国王と結婚した王妃も光魔法をもつ者で、リリエルの跡を継いで王妃の仕事の傍ら光魔法学校で教鞭をとっている。
「ケルビム様、ウィンザーは安全で幸福な国になりました。ケルビム様が地獄ゲートを守ってくださっている間に、国民が自力で国を守れるように、魔法の研究も私達頑張ったのですよ。ルベール様と共にしっかりと生きることができました。結婚し子供が生まれ、子を育て、王妃の役目も努力し続けました。良いことばかりだけ、とは言い切れないけれど、苦しい時も悲しい時も嬉しい時も元気な時も、共に励ましあって愛情も信頼も全部ありました。でも一人で抱えるべきこともあったし、私らしく生きられたと思います。ケルビム様が守ってくださったこの三十八年幸せでしたよ。本当に幸せでした。」
リリエルの頬を涙がつたう。
「ケルビム様。ありがとうございました。会いに行きますといって、一度も会いにいけなかった。王妃になると湖に入ることさえ止められるのですね。」
湖にポトリとリリエルの涙が落ちる、とそこからオーロラ色の波紋が広がって湖面が黄金色に変わっていった。
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