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35、恋におちた天使

銀の間で熾天使セラフィムの雷が轟いた。


「馬鹿もの!!!」


「熟考した上での結論です。」


「許さん!」


「許されなくても実行します!」


「だから許さん、そんなことをする前にお前の魂を抜いてやる!」


「セラフィム殿、私にできることをしたいのです。主に直談判するまで。」


※ ※ ※


黄金の間で神がつぶやいた。

「ザフキエル、天界全体が揺れてないか。セラフィムか?」


「セラフィム殿とケルビム殿ですな。」


「何があった?生命の樹もざわついているぞ。」


座天使ザフキエルは生命の樹の担当。セラフィムの次の上位天使でケルビムとは同位の同僚だ。座天使は光の車を使い神の移動を担当する役目もある。


「それが、、、主よ、、、、」


「ザフキエル、お前が口ごもるとは珍しい。セラフィムの怒鳴り声など慣れているだろうが。」


「実は、先ほど生命の樹の前で、ケルビムが、、、、」


ザフキエルの説明で神が笑い声をあげる。


「は?ふぉふぉっふぉふぉっふぁふぁっ、なんと、あの理性と知性の塊のケルビムが?知恵の実を食べても全く男女の機微に我関せずだったケルビムが?」


「そのようです。」


「ザフキエル、銀の間にいこう。」


「えっ?呼んで参りましょうか。」


「いやたまにはお前の光の車に乗るのもよかろう。」


「はっ、では。」


光の車に乗って銀の間に向かう神はまだ笑っていた。



※ ※ ※


銀の間ではセラフィムとケルビムが雷鳴を轟かせすったもんだの大喧嘩になっていた。


「いい加減にやめんか、セラフィム、ケルビム、天界の床が燃え落ちてしまうぞ。」神が笑いながら言う。


「「うるさいっ、こっちはそれどころではないっ」」


「セラフィム殿、ケルビム殿、主がお越しだ!控えられよ!」


「「へ?」」


二人は主の姿を見、すぐさま跪いた。


「喧嘩するほど仲がよいと言うが、天の床が抜けるほど何を揉めているのだ。まるで獣の喧嘩ではないか。今は緊急時で時を止めている最中だぞ。」


「主よ、、、ケルビムが馬鹿な真似を、どうかお聞きください。」


「いや、時は急ぎます、主よ、先に私の話を。。」


「わかったわかった、だが天位に従って先にセラフィムの報告を聞く、ケルビムはその後にじっくりと聞こう。先ほどから生命の樹がざわついているのも関係あるのであろう。ザフキエルは生命の樹を見てきなさい。」


「では移動なさるときはお呼びください。」ザフキエルは飛び立った。


※ ※


「ではセラフィムよ。」


「はっ、主よ、ケルビムは時を止めた後の対処について、ルベールを生かすと突然言い出して。」


「うむ、ルベールを生かすのは構わぬが、ではゲートを塞ぐために代わりが必要であるがそれはどうなるのだ。」


「主よ、ケルビムがルベールの身代わりになると。智天使の役目を返上しゲートの結界柱になると言うのです。」


「ケルビムの自己犠牲か、それはそれで良いことだ。」


「っ、主よ!!!人間と天使は役割が違います。それにケルビムは智天使です。」


「そうだな、役割は違うが、生きている世界が違うだけで優劣はつけられぬ。強いて言えば天使の慈悲の方が深く大きい。だがその天使でさえ堕ちて地獄に行ってしまうわけだから一概には言えぬだろう。それに智天使の自己犠牲を規則では禁じておらぬ。」


「うっ、、主はケルビムを死なせたいのですか?」


「失いたくはないが、ケルビムの言い分もあるだろう。それは後で聞くとして、セラフィムはケルビムを失いたくないのだな?」


「当たり前ではありませんか。ケルビムは数十億年に一度だけ現れる光から生まれた上位天使になるための光。私の後継としても十分な能力がある。だから主が生命の実を与えられたのではないのですか?」


「そうだ。それはセラフィムが理解しているようにケルビムも理解しておろう。セラフィムの考えは理解した。で、次はケルビムの話だ、ケルビムよ、話しなさい。」


「はっ、私は白百合の乙女の光と魂を生まれた時から見守ってきました。管理監督不行き届きであったことは反省はしておりますが、間違った指導をしたつもりはございません。リルは、リリエルはやっと気づいたのです、大切な者を守るためにどう生きるのかを。リル、、リリエルはルベールを愛しています。ですからこれからの人生を愛するものと共に歩ませてやりたいのです。リル、いえリリエルの魂が成長したのならば、それを応援してやりたいのです。」


「リリエルの人生をリセットして、やり直しさせれば良いのではないか。」


「それでは駄目なのです。今の状況の続きで生きさせてやりたい。」


「ほう、でその代わりにケルビムそなたが消えゆくと。いや消えるわけではないな。ルベールの場合は今は仮死状態だが、完全にゲートが特殊鉱物になり封印された後ルベールの魂はそこから放たれ天界に戻ってくる。そして新しい人生が与えられる。だがおまえは永遠の命を持つゆえにそのままの意識でウィンザーのゲートを永遠に守り続ける鉱物に姿形だけを変えることになるが、まさか知らないことはないな。」


「わかっております。覚悟はできております。」


「ケルビム。おまえがゲートの封印になればウィンザーの世界は特別に永遠に存続する。だがリリエルとルベールは今生の人生が終われば、ルベールは次の人生へ転生し、リリエルは天界にもどって天使になる。その後もお前はウィンザーのゲートの塊として生き続けるわけだ。」


「、、、、理解しております。」


「ケルビム、それは自己犠牲ではなくて永遠の苦痛を伴う罰のように聞こえるのだが。」


「リル、いえリリエルの幸せを。」


「ケルビム、それは《愛》だな。」


「はい、もちろん、全ての命に慈悲の心を。」


「ケルビムよ、ケルビム、それは慈悲の愛ではなくて、リリエルへの愛だ。」


「は?そんなはずはありません。確かにエルラールとしての兄妹愛はあると思いますが。」


「ケルビムよ、それは男女の愛だ。ルベールの自己犠牲は民草の命の中にリリエルへの愛があった。だがケルビム、そなたの愛はリリエルの幸せの一択だ。それはリリエルを愛しているからだ。だから天界に三人しかおらぬ上位天使の一つの天職を手放してもそなたは白百合の願いを叶えてやりたいのであろう、永遠の苦痛と引き換えに、な。」


「私が、リリエルを?男女の愛?まさか。」


「セラフィムもザフキエルも気がついている。というか生命の樹も気がついているぞ、それでざわついている。」


「まさか、そんな、、」

ケルビムは神の前で、ただただ立ち尽くしていた。

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