33、セラフィムの叱責
リリエルが床を叩いた。
「セラフィムさま、あなたは何を仰っているのですか?そんなことをしたらルベール様は死んでしまいます。」
セラフィムに向かって拳を上げかけたリリエルをアレクサンダーは制する。
「リル、セラフィム殿の仰ることもよくわかる。一人一人の命はもちろん大切だがルベールは王族だ。私も王族の教育を共に受けてきたからわかるのだ。王族には王族としての生き方がある。」
「お兄様、人の命の上に成り立つ幸せなど、、、」
「リル、お前だって民草を守る義務はわかっているだろう。もし民の命全てかルベールの命、どちらか選ばなくてならなくなったら、お前は全ての民の命を切り捨てられるのか。」
「っ、それは、、、アレク兄様、それならわたくしの命を、、」
「リルはまだそんな甘いことを言っているのか、ルベールは一国の王太子、今のお前は侯爵令嬢、よくて王太子婚約者だ。ルベールを守るために私は物心ついてから盾になる覚悟を持って生きてきた。だが今回はルベールの力があるからこそ民草を救うことができるという事がわからないのか。命の大切さは皆平等だ。だが立場は違う、今のお前の命では代わりになれない。そしてお前の立場は生きて民草を守ることだ、もし私が王太子だったとしても自分を差し出す。ルベールは間違ってはいない。私がルベールの身代わりになれるならとっくになっている。」
「アレクサンダーはわかっておるようだな。してケルビム、最初からルベールはそれを承知でゲートに向かったのであろう?ルベールに説明はしたのだろうな。」
「はっ、ルベールには全ての状況と対処を説明しております。民を救うためリリエルを救うために自らでゲートを封じ込め、万が一の時はアレクサンダーに任せると。」
「ケルビムさま、私を騙したのですか?ルベールさまを生贄にするなんて。」
「リリエル、理解してほしい、生贄ではなく自己犠牲だ。」
「そんな自己犠牲なんてあり得ません。天は卑怯です。」
その時セラフィムの翼が二枚動いて風を起こした。目も開けていられないような風だった。
「ほほう、リリエル、ルベールの自己犠牲は天界の卑怯が原因だと?」
「だってそうではないですか、生きて帰ると、、、約束したのです。」
「リリエルよ、欲を言えばルベールの犠牲がないに越したことはない、だがルベールの自己犠牲が救うものはウィンザー世界と天界と地獄の秩序だ。まさに神の代わりに奇跡をおこす自己犠牲。リリエルも自己犠牲をよくしていたのではないか?おまえの自己犠牲はどれだけ多くを救ったのであろうか。」
「っ、、、、そんな、、そんな、、、」
「神の慈悲の上に、そなたはどれだけの数の人生をやり直したのだ。ルベールはそなたを愛し、王太子としてそなたを含めたウィンザー世界全てを救おうとゲートを埋めた。それは神が卑怯ということなのか。」
「、、、、そんな、、、、わた、し、、は。」
「おまえが努力をしてきたことは知っている。しかしルベールの魂は一回目の人生で真に愛するものを救おうとした。逆にリリエルの度重なるやり直しを見て、アジズたちは神の寵愛がすぎると嫉妬と憎しみに堕ちて反乱を起こした。彼らはすでにどこにも存在しない。煤さえ残らず抹消されたのだ。リリエルの人生リセットはおまえが望んだことでないこともわかっているが、リリエル、よく考えるのだ。」
「ですから私が身代わりに、、」
「おまえは馬鹿なのか。おまえは身代わりになれん。何度も言われているだろう。ルベールの愛に対し失礼でないか。」
「、、、ぁ、、ぁぁ、、、。」
リリエルは何も言えず崩れ落ちた。
「ケルビム、おまえもこれまでの長い時間、何をしていのだ。私の筆頭後継ともあろうおまえが、いくら主の慈悲とはいえこの白百合をこの程度にしか育てられないとは、おまえの失態だぞ。」
「セラフィム殿、申し訳ございません。」
「あとはケルビムおまえが考えろ。私ならサダーンを再度地獄の奥深くに閉じ込めるためにウィンザーを抹消する。ウィンザーの魂全てを新しい世界へ移しリリエルは光の粒に。実際にもう時間切れなのだ。他にも戦争が起きて滅亡が近い世界が何百と山積みだ、ケルビムの担当は八百八十八世界、それらもなんとかしたまえ。答えが出たら報告に来るのだ。それまで時は止めておく。主は私が説得する。下がってよい。」
セラフィムの六枚の翼が周りの空気を圧巻するように一瞬だけ羽ばたいた。天界の空気が更に高潔な清浄をまとい凛と研ぎ澄まされた。
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