29、ブーレ湖の決戦 前編
昨日の投稿が遅れ申し訳ありませんでした。こちらは本日24日投稿予定分です。
ここはブーレ湖。
湖畔には白亜の神殿が建っている。
そこに私は殿下と共に立っていた。
そしてブーレ湖の湖底神殿は、湖の中央に浮かぶように姿を現していた。
私は生まれてから以降、ブーレ湖を訪れたことはなかった。
実の両親のことを知ったのはほんの数年前だったから。
「ブーレ神殿ってこんなに綺麗だったのですね」
真っ白な神殿は水に浮かび、湖畔の神殿よりも大きく幻想的で厳かで清々しい清浄さを纏っている。
しかし湖面は魔力のあるものが見れば少しづつ瘴気が湖底からうっすらと現れる気配がある。
「いや、リルが生まれた時は湖底の神殿遺跡だったのだ。
リルの父上のバサラ殿と母上のユーリア殿がここで亡くなられた。
現国王陛下がお二人を偲んで、湖畔にブーレ神殿の復興を望まれ、
チャロアイド教授が昔の文献を見て再現の指揮をとってくださったのだ」
「まあ、お祖父様が」
「湖畔の神殿はまだ新しいが、今回のゲート騒ぎで湖底の遺跡となっていた神殿が浮かび上がってくるとは驚きだ。
神殿が二つになったが、湖の中の方が妖精王がいるシェルブーレの古くからの神殿だ」
私の育てのフリージアお母様のお父様であるチャロアイド侯爵は、
血のつながりがないとはいえ、長年祖父と孫として可愛がってもらってきたので今も私にとってはお祖父様同様。
「リル、準備は良いか」
「はい、ルベール様」
ウィンザー世界の辺境エリアで、アンデッドが蛆虫のようにわいて人里に向かってきている、と各地から報告が相次ぐ中、
討伐隊の準備が整い、全世界で討伐が開始されようとしていた。
討伐の最たる中心は、旧シェルブーレ国のブーレ湖神殿。
ここにはルベール様ことエドワード王太子殿下と私を中心としたエルラール討伐隊。
私のいる場所には、必ずルシファーか堕天使アジズが来るとみて大天使ミカエル軍も空高く控えている。
数多の辺境で地獄ゲートが開くところは、天界のウリエル軍が迎え討つ。
アンデッドと人間が混ざっているところには、堕天使アジズやその部下の堕天使達が指揮をとるとみて、
大天使バサラ軍が天高く待機、世界魔法大学から派遣された魔力の強いエルラールお兄様と教え子たちも集まっている。
※ ※ ※
「リル、神殿に入るぞ」
「はい。ルベール様」
湖中央に浮かぶように建つブーレ神殿に私たちは足を踏み入れる。
神殿の中は透き通るような光の結界で満ちていた。
しかも神殿の天井は高くたかく、さらに高く見えない。
きっと天まで届いているだろう。
神殿の床も湖水で満たされており、深く深くさらに深く、澄みきっている。
このさらに深い場所に地獄ゲートの亀裂が過去にあったと言われているが、信じられないほど美しく神々しい場所だった。
神殿の祭壇前には妖精王がいた。
「ルベール、リリエル、久しい」
「妖精王様」
私たちは跪き礼を尽くす。
「二人とも無事に成長して何よりである。
十五年前はバサラとユーリアに救ってもらい、此度はルベールとリリエルが来てくれたことに感謝している」
「これまで妖精王様が守ってくださっていたこの世界、
今日は天界の神と、このウィンザー世界の魔力を持つ者全てで、
戦い守る所存です」
神殿の深い場所から、ドーンドーンと不吉な音が聞こえ、神殿の外にはバッサバッサと翼が擦れるような騒音がし硫黄の匂いが漂ってきた。
「あの音は?」
「湖水深くから聞こえるのは地獄ゲートを開こうとするルシファーだ。
だが今のルシファーには神殿地下にゲートを開ける力はない。
外の音はガーゴイルのような翼を持つ悪魔軍だ。
これも天軍の力で退けられるはず。
ルベール、リリエル、どうかこの世界の善良なる命を守ってほしい」
「妖精王様、力の全てを尽くして守ります」
「頼んだぞ」
「「はいっ」」
ルベール様と私は向かいあって頷き合った。
「リル、必ず共に生きて戻ろう、決してリルを敵に渡さない」
「ルベール様、一緒に生きられるように世界を守りましょう」
「行くぞっ」
ルベール様が、神殿の底深くから音がする方へ向かって、闇魔法で結界を張る。
ルベール様の闇魔法は魔物を呼び寄せる部分もあるけれど、魔物に対して動きをシャットアウトして動けなくする効果もあった。
私が神殿の床に跪いて祈り始めると、天井を抜けた高い高い空から一筋の光が差し込んでくる。
ダイヤモンドのように輝くキラキラとした光が舞い降りるように神殿と私を包むと、そのキラキラは神殿を中心にしてウィンザー国へ、周辺国へと広がっていく。
「神よ、この世界に生きる全ての善良なる命をお守りください。
これらの命を奪おうとする邪悪なものを祓いたまえ。
どうか生きる権利を与えてくださいますように。
わたくしの全ての光を心を捧げお願いいたします」
私の紡ぐ祈りは世界を清浄に導こうとしていく。
舞い降りるキラキラも広がるキラキラも途切れることなく、
邪悪なものを避けて、人を、生き物を、妖精や草花を慈悲の光で包んでいく。
その光は止まることなく溢れ広がり続けていくのだった。
読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。




