26、堕ちた天使と地獄のゲート,ケルビム視点
ある日のこと、
私はエルラールとして、リリエルの住むウィンザー世界の世界魔法大学から、魔物討伐の緊急招集があり、
大天使になったバサラを連れて人間界に十数秒ほど降りていた。
ウィンザー周辺国で魔物の発生が増えていると聞いていたが魔物ではなかった。
瘴気の発生場所の地下から悪魔の使いである醜いアンデッドが蛆虫のように湧いて出てきていた。
闇の魔物は動物種の変形したものが多い。
見た目が似ていても地獄から出てくる悪魔と魔物は異なる。
私の雷神パワーでなくても、大天使バサラの雷ですべて封じ込めることができた。
流石にバサラは倒し方も熟知している。
戦闘系のミカエルとペアにしたらさぞ強力になるだろう。
しかし、この状況はおかしい。
天界にすぐ戻り確認せねば。
天界に戻ると、下界に降りていた大天使ミカエルと大天使ウリエルも帰還しており、熾天使セラフィム殿から呼び出しがあった。
神の最側近であるセラフィム殿からの呼び出しは滅多にない。
急いで黄金の間に参上すると、主とセラフィム殿が難しい表情をしていた。
二人が揃っていることにも驚く。
「セラフィム様、参りました。何か緊急ごとでも」
「ケルビム、ウィンザー世界での異変はどのレベルだった」
「はっ、いつもの魔物討伐ではなく、瘴気の地下に亀裂が生じ地獄のアンデッドが蛆虫のように這い出していました。
すべてバサラが殲滅し、亀裂は私が閉じて結界をはりましたが、地獄から出てはならないアンデッドが何故?」
「実は、地獄界との連絡役をしていたアジズが堕ちた」
天界で堕ちる、とは天使が自らの意思で、悪に堕ちて堕天使になることだ。
「まさか、アジズが何故?」
「白百合の園で生まれた光は天使になる。が、そこからはみ出したものまでを主が特別扱いしていると」
「リリエルのことでしょうか」
「うむ。天使にもなれない小さな光を特別扱いをしたと嫉妬した。
自分たちは醜い悪魔と関わって闘っているのに、小さな光が特別待遇は許せないと」
「嫉妬?まずそれが間違っております。
さらに主は、小さきものに慈悲を与え、飛ばされた小さき光自身も生きる努力はしています」
「もちろんそうだ。天界では主のご采配はすべての慈悲に通じるものだ。
嫉妬や妬みや怒りは必要ない。
それに地獄担当は、主から力量が認められたからこその役目だ。
ただ、悪魔と関わっていると堕ちるものも出てくる」
「では地獄の亀裂はアジズが?」
「アジズは二十人の部下を連れて堕ちた」
「セラフィム、ケルビム、堕ちた者たちはもう天界には戻れぬ。
ルシファーの手先になるだろう。
だがどの人間界にも悪影響を与えさせてはならぬ。
人間界に現れた堕天使と悪魔たちはすべて殲滅せよ」
「「はっ!」」
※ ※ ※
セラフィム殿の執務室について行くと、執務室前でミカエルとウリエルが待っていた。
「ミカエル、ウリエルも入るが良い」
セラフィム殿の執務室には、通常は上位天使しか入れないが、今日はよほど特別なのだろう。
ミカエルとウリエルは、セラフィム殿の前では跪いたままだ。
顔を上げたくても眩すぎて見られない、とも言うが。
「ケルビムがウィンザー世界へ降りている間に、ミカエルとウリエルにアジズの調査をさせていた。報告せよウリエル」
「はっ、アジズはルシファーへの忠誠の印に白百合の乙女を差し出すと言っているようです。
アジズが嫉妬したリリエルへの復讐かと」
「やはりな、で、リリエルを攫う算段でウィンザーにアンデッドの大軍を送り込んでいるということか。でミカエルの方はどうだった」
「はっ、ブーレ湖の妖精王に会って参りました。
旧ロマイエの極悪非道な悪の化身は、十五年前にバサラとユーリアの力を合わせすべて殲滅したと言うことですが、
もしかすると、殲滅前に地獄へ戻ったアンデッドがいる可能性があるのではないかと。
残党が地獄に戻れば憎悪と復讐を募らせているはず。
そうなるとリリエルが生贄に、、、」
「しかしあの時、全てを、、、いや、ブーレ湖から流れる水路か?」
「水路の地下深くに地獄の亀裂の跡があったようです。
今は閉じられていますし、妖精王の結界は機能しています」
「セラフィム様、リリエルは」
「ケルビム、わかっている。
たまたま今回ターゲットにされたのがリリエルだったのはわかっている。
それにウィンザー世界で無事に人生を全うしたら、リリエルは天使になる予定は今も変わらぬ。
人間界の愛を知る乙女にアジズが嫉妬し、ルシファーが欲しがるのはあまりにも単純で短絡的な話だ。
天界の威信にかけてリリエルを守らねばならぬ。
ミカエルは対ルシファー軍を率いよ。
ウリエルはアンデッドがわく地獄ゲートの亀裂に対処、堕天使アジズ達の討伐はバサラに軍を任せよ」
「「はっ!」」
ミカエルとウリエルが下がる。
「さて、ケルビム、本来ならば智天使の立場のおまえを天界から出すわけにはいかぬが、主がおまえをリリエルの担当になさった上、人間界の兄エルラールという立場まで与えておられる。どうしたい」
「リリエルを護りたく」
「わかった。好きにするが良い。
ケルビムの姿でもエルラールの姿でも力は同じだろう。
ただし地獄そのものへの介入は固く禁じる。
堕天使やアンデッドの殲滅については、地獄ゲートから人間界へ入ってきたものまでとする。
それと、人生のリセットが可能なのはリリエルだけだ。
他の人間が命を落とした場合は、通常の四回転生規定に基づくゆえ、勝手に人間を生き返らせるのは禁止。
良いか、天界規範を破れば、上位天使でも天界罰則対象となる。
主を悲しませることのないように」
「主の御心のままに」
読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。




