21、リリエルは女神らしい
私の出生に関わる十四年前のお話が終わったのは夜だった。私は王城の公爵家居住区のお部屋へ戻され、待っていたフリージアお母様が黙って抱きしめて下さった。
ボロボロ涙が溢れてくる。お兄様達の出生の秘密も驚いたけれど、私の出生の秘密も、乙女ゲームや小説どころではないほど色々な出来事や人が関わっていた。理解が追い付かない。頭が痛い。目も泣き腫らして腫れている。
私が七百年ジタバタしていた時、生みのお父様とお母様は命をかけて五つの国を救っていた。そして血の繋がるお兄様もいた。
結局のところ、人生って神様の配剤なのかな。人と人が愛し合って、また愛が生まれる。どんなに邪悪なものが立ちはだかっても、愛が生まれて浄化されていく。ふと、悟りかけたような気がした。
さらに夜遅くお父様がお戻りになって、お母様と三人で結界を張った中で話した。
「あの話をしたのは、ルベールとリリエルが従兄妹ではない事を明確にするため、それから、ルベール、アレクサンダー、シュベールの王位継承権をよく自覚してもらうため。最後にリリエルが光の女神である事を説明するためだった。」
「私が、女神、、、ルベール様と婚姻するのが望ましいのでしょうか。」
「そうだな。ルベールにもリリエルにも民を救う使命がある。リリエルをホワイティエで引き取ったのは、フリージアに託されたこともあるが、バサラとユーリアを失ったばかりのブラックウェルでリリエルを育てるのが難しいと判断したからだ。公爵家なら大概のことから守れる。つまらん縁談は全て拒否できるし、私の闇魔法の魔力量ならお前を守れる。しかしリリエルが成長するまで、光魔法を持っているかどうかわからなかった。ルベールが禁忌の妃考査をしたのも驚いたが、リリエルがユーリア以上の力があったことも驚いた。予想外のことが重なりそれで我々も皆困ってしまってな。」
「私もリリエルのあの聖伝輝という魔法が、雷魔法だと思っていたの。ブラックウェル家の雷魔法は人間業とは思えないような雷魔法なの。だから初めてリリエルの魔法を目の当たりにした時、ブラックウェルらしい凄い雷魔法だと思ったけれど、ユーリアの光魔法とは全然違ったのよ。」
(しつこいようだけど、あれは智天使ケルビム様の静電気です。)
お母様が苦笑しながら続ける。
「確かにユーリアとバサラ様の魔力を継いで、妖精王の加護があれば、光魔法の出し方も変わるわよね。でも魔力量は女神。ユーリアを凌ぐわ。」
「ウィンザー王国で、魔力量が多いのが、私とルベール。リリエルは私以上かもしれぬ。その次にサンダール魔法師団長。」
「お父様と同じで、魔法師団長様よりも多いのですか?」
お父様が頷いている。
「あの、妃考査の結果って絶対なのですか?」
「絶対だな。リリエルはルベールが嫌か?」
「それは、、うーん、好き嫌いで言うと好きです。でも最初からアレクお兄様に似ているなあと思っていたので、お兄様というか家族というか保護者枠というか、なのでちょっと戸惑ってはいます。。。私はブラックウェル家に戻されますか。」
「貴族籍がブラックウェル家に戻ることになっても、生活は変わらんだろう。公爵家預かりで王太子妃教育をする、という形をとることになるだろう。リリエルがブラックウェルで暮らしたいなら、もちろん帰ることは出来るぞ。」
「エルラールお兄様には、いつ会えますか。」
「エルラールは今、世界魔法大学校で名誉教授として在籍している。二十歳という若さだが全ての属性を持つ世界第一位の魔力を持つ大魔法師だ。国の枠を越えて世界規模レベルの魔法に携わっている。これまでも姿を変えて、よくリリエルの側にいたのでこの件も知っているだろう。雷神と異名を持ち雷が鳴ったところにエルラールがいると思えば良い。」
恐るべし、実のお兄様、雷神ってケルビム様みたいな雷なのかしら。
「あの、、びっくりしたのですが、フリージアお母様が古代魔法の聖女って。」
「古代魔法に関して絶大なる力があるらしい。」
「まあよくわからないのよ。あなたが生まれてからずっと調べているのだけど。未だに聖女の力を発揮した事はないわよ。」
お母様がまた苦笑なさる。
「急に色々な話が重なって疲れただろう。様々な面から調整しているので、決まるべきことが決まったら落ち着くはずだ。それまでは安全のためにも王城で過ごすことになる。それから私達はリリエルの父と母であることに変わりはないぞ。」
「はい、お父様、お母様、ありがとうございます。」
寝室に戻ってからグッタリした。ホワイティエの両親も凄いけど、ブラックウェルの両親もすごすぎる。乙女ゲーム全コンプリートみたいな達成感がありすぎて、自分の人生がどうなるのか、今はまだ茫然自失状態だわ。
とにかく、私はこの国の女神らしい。実感がない。今日はもう寝よう。
※ ※ ※
翌日、お父様はまた例の結界会議室へ、お母様は王宮図書館の禁書室へ調べ物をしに行かれた。
私は、ブラックウェル侯爵家の当主、魔法師団長であるサンダール叔父様が迎えに来てくださり、ブラックウェル侯爵家のお屋敷に連れて行ってもらえた。
バサラお父様とユーリアお母様のお部屋が昔のまま保存されていて、私はそこで私が生まれるまでの二人を感じる事ができた。
というのも、お母様のお部屋で、お母様が残して下さったベビー服を見て号泣してしまった。私がお腹の中にいる時に、色々な赤ちゃん用品にお母様が刺繍をしたりして準備して下さっていたのだ。
泣きじゃくりながら、よだれ掛けの刺繍を指でなぞる。小さな産着やお帽子、足カバー、お顔拭き、全てブラックウェルの紋章である雷と百合の花のデザインが刺繍されている。
お父様が用意して下さった魔石のペンダントもあった。魔石の中に紋章が透けて見える。握るととてつもない温かさを感じる魔石だった。
お父様の書いたメモ書きがあった。
《姫ならリリエル、息子なら、エルラールの弟ならリベラール、、、》
「お父様、、、おかあさま、、、、」
絶叫しオンオンエグエグと泣き続けた。会いたかったな。どうにも涙が止まらない。
「リリエル、リル、泣くな。。。」
優しい声で名を呼ばれそっと抱きしめられた、懐かしい感じ。
ミカエル、、さま?いや違う。
その腕の中で顔を上げると、直感でお兄様だとわかった。
「、、、エルラール、おにい、さま。」
「リル、やっと会えたな。」
あまりの号泣に駆けつけてくれたのが、エルラールお兄様だった。初めて会ったはずなのに私はお兄様を知っていた。
「あぁ、、あの、いつも、、そばに、、」
「そうだ、ほぼ、いつも側にいた。」
「、、、ななひゃくねん?」
お兄様が頷く。はっきり言ってぶっ倒れそうになったけど、お兄様の腕の中で踏ん張った。ここは踏ん張るところだ。人生リセットを起こしてもいけない。
いつも読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。




