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20、驚愕の事実 リリエル編

お読みいただきありがとうございます。誤字脱字、見つけ次第訂正しています。

ブーレ湖のほとり。

瘴気が濃く湖底から魔物が出て水路にどんどん流れ込んでいく。


チャロアイド教授とフリージア、サンダールは見届けと緊急時の魔法が必要になった時のために湖畔で見守っている。


湖底に沈む古代遺跡、シェルブーレの神殿を中心にして湖底に古代の魔法陣がうっすらと金色に光ってゆるりと回転しているのが瘴気越しに見える。完全に起動すると湖上に出現し更に空高く舞い上がる魔法陣だ。


チャロアイド教授が新たにつくったのは、次の五個の古代式魔法陣。

一つの魔法陣起動に一人が必要だ。


一つめ、魔物の発生を一時的に止める魔法陣。

二つめ、ウィンザー国から妖精王への恭順を表す魔法陣。

三つめ、ロマイエの残党の排除に対する同意の魔法陣。

四つめ、旧ロマイエ領および周辺五国の善良な民の命乞い。

五つめ、妖精王とウィンザー女神ユーリアとの対話を願う魔法陣。


一番目に魔法陣を描くのは、バサラとユーリアの六歳の息子エルラール。両親から膨大な魔力を受け継ぐ。バサラとユーリアに手を繋がれていたが、手を離すと腕を宙に上げる。

無詠唱で空中にサラサラと指を走らせるだけで古代魔法の術式が蘇る。最後にパチンと指を鳴らすと湖面に紫色に輝く魔法陣が浮かび上がって、瘴気も魔物も一瞬に消えて湖の透明度があがった。


ここで、アルフレッド、バサラ、ヘンリーが湖の神殿を中心に三角形で囲むように湖に入る。


二番目の魔法陣は王太子アルフレッドだ。

ウィンザー国から妖精王への恭順を表す魔法陣を描くアルフレッドは湖の中で膝をつく。詠唱しながら湖面に魔法陣を描いていく。ウィンザー王家に代々伝わる《王太子の森の湧水》を入れた瓶の蓋を取り、水を湖に流し込むと、煌めく青の魔法陣が湖面に光った。


三番目、ロマイエの残党の排除に対する同意の魔法陣はバサラだ。湖水を空に向かって巻き上げながら雷魔法を発動させ魔法陣を描く。魔法陣はビリビリと金色の雷電を走らせながら空中に光り輝く。


四番目の魔法陣は、旧ロマイエ領を含む周辺五国の善良な民の命乞いだ。ヘンリーは全身を湖に沈め、一気に闇魔法を放った。湖の底から上空までブラックダイヤモンドのような煌めきで覆われたドームが現れ、ドーム上に黒金の魔法陣が浮かび上がった。


湖底の古代の魔法陣がゆっくりと逆に回転し始める。

最後の魔法陣は、光魔法を持つウィンザーの女神ユーリアそのもの。妖精王と対話を願い、湖の中央へ歩みつつ湖中に沈んでいく。


ユーリアの姿が湖に消えた瞬間、全ての魔法陣が同調するように回り出した。


※ ※ ※


湖底の神殿では、妖精王が姿を現していた。

「そなたがウィンザーの女神ユーリアか。」


「妖精王様、お目見えくださりありがとうございます。」


「お前達の思いは理解した。私が眠っている間にロマイエを倒したウィンザーには礼を言う。この四百四十四年で起きたこともわかった。だが、古代の我の魔法陣を止めるにはまだ妖力が足りぬのだ。」


「妖精王様、私の魔力では足りませんか。」


「ユーリア、そなた死ぬ気でここに来たのか。」


「はい。私はすでに充分な幸せをいただきました。五国の民が一人でも多く救われるのならば。」


「しかし、そなたには夫も子もおるのだぞ。」


「充分に愛し愛されました。ですので。。。」


「あいわかった。全ての願いを叶えよう。そして我に力を与えてくれることに感謝し、ブーレ湖は未来永劫、清浄湖とする。」


「ありがたき幸せ。感謝と全ての光を捧げます。」


※ ※ ※


地上では魔法陣の回るスピードがあがった。湖底から金色の魔法陣が迫り上がってくる。


エルラールが湖に向かって走り出した。

「母上、母上、行かないでっ!」


近くにいたフリージアがエルラールを追う。

「エルラール、行ってはダメ。お母様との約束でしょう。エルラール待って。」


それをバサラが追いかける。

「エルラール、フリージア殿、行くな、行ってはならん。」


エルラールとフリージア、バサラが湖に飲み込まれていく。他の者は動けない。



※ ※ ※


湖底の神殿では、ユーリアが赤子を抱いていた。


「母上っ、行かないで。」


「エルラール、あなたは岸に戻らなきゃ。」


エルラールがユーリアにしがみつく。

続いてフリージア、バサラまでが湖底に流れてくる。


「ユーリアすまない、エルラールが湖に入ってしまって、、、ユーリア、その腕に抱いている子は私の、、」


「バサラ、そうです。女の子ですよ。妖精王様のご加護をいただいて、今、生まれたのです。」


バサラがユーリアと赤子を抱きしめる。


妖精王が見つめる。


「そなたらの思いはわかっているが、全ての願いを叶えるためには、われの妖力が足りないのだ。生贄にしたいわけではないが、魔力を足してもらわねば、すべての民は守れぬ。何としてもロマイエの残党は全て葬らねばならん。あれは闇より出でし邪悪なものが人型をとっているだけで、放置すれば元の木阿弥になってしまう。また国が荒れるぞ。」


「妖精王よ。私とユーリアで足りるだろうか。我が子達とフリージア殿を戻していただけるか。」


「バサラとユーリアの魔力があれば、全てを叶えられる。しかと約束した。この子らと古代魔法の聖女は無事に返そう。すでに魔法陣は全てが起動している。別れに時間はあまり取れぬ。」


「エルラール、今ここで生まれたこの子はおまえの妹だ。妹を頼む。父と母はこの国だけでなく、周りの国々も守りたいのだ。お前達が安心して暮らせる未来のために。」


「父上、母上、行っては嫌です。」


「エルラール、魔法を持つ者の使命は何だった。」


「多くの人を救うこと、、です。」


「お前には多くの魔法を教えてある。お前は大魔法師だ。国だけでなく世界を救える者でいなさい。そして妹を守ること。約束できるか。」


エルラールが泣きじゃくる。

「、、父上、、、わかりました。」


バサラがユーリアと赤子をもう一度抱きしめる。


「この子の名はリリエル、女の子だったらリリエルと決めていた。」


ユーリアがフリージアに、赤子を手渡す。


「フリージア、今までありがとう。この子をリリエルをあなたに託します。」


「ユーリア、私の命をかけて、リリエルを守り愛しむわ。」


フリージアがリリエルを受け取る。

そしてユーリアが力一杯エルラールを抱きしめる。


「エルラール、お母様はこれからもずっとあなたを愛しているわ。リリエルをお願いね。」


「母上。大好きです。妹を守ります。」


そしてバサラがエルラールを抱きしめ、首にかかった大きなペンダントをはずし、エルラールの首にかけた。

「エルラール、我が息子、いつもお前と共に、愛している。」


全ての魔法陣が光の速度で周り、眩いほどの強い光が溢れ、世界が強烈な光に包まれたあと、抜けるような青空が広がった。

この日、どこの国の者も、太陽が燃えた、空から隕石が落ちてきた、巨大な雷が落ちた、一瞬闇に包まれた、色々と言われたが、何が起きたのか知るものは一握りだった。


ブーレ湖のほとりから、帰還したのは次の者。


王太子アルフレッド。チャロアイド教授。

サンダール・ブラックウェル、その息子エルラール・ブラックウェル。

ホワイティエ公爵夫妻ヘンリーとフリージア、遠征中に生まれたリリエル・オウ・ホワイティエ。


と魔法師団の極秘報告書には記されている。


読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。

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