11、光の粒になって
ここは?光の中かしら?
とてもふわふわして、心地よい感触の中にいるようなお花の良い香りがする。まるでお花畑の真ん中にいるみたい。
私、光に吸収されて、光の一粒になったのね。
最後は、ミカエル様とも話せなかった。
でも天界の光に漂うのなら、きっといつかミカエル様のお側を漂うこともあるのかも。
そおっと目を、光の粒に目があるのかどうかわからないけれど、目を開けたい気分なのであけてみる。
えっ?
ここは、どこ?
周りを見てみると、高い天蓋がある寝台に横たわっていた。それにこんなお部屋も寝台も初めて見る。ケルビム様は即刻光に吸収されるとおっしゃってらしたし、夢?光の粒も夢を見るのかしら。
それにお花畑みたいに良い香りがして、お花が咲き乱れている、ように見える。
身動きしてみたり顔をさわってみたり、手も足もあるし目も鼻も耳も口もあった。光の粒とは思えない。
いやもしかしたら、光の粒も人型なの?
「リリエルお嬢様、お目覚めになられたのですね。」
天蓋の極上の薄いカーテンから、聞き慣れた声と顔が見えた。
「エバ?」
「ああ、お嬢様、ご無事でよかったです。旦那様とお医者様を呼んでまいります。」
これは、光の粒でもリセットでもない、生きてる、何で?
※ ※ ※
それからは、大騒ぎだった。
エバがお父様とお医者様を連れて戻ってきた。
お医者様は王族専属の侍医だった。
このお部屋は、王城にあるホワイティエ公爵家の専用居住区だったらしい。お父様が元王族だから、城の中は奥に行くほどお父様のお知り合いだらけみたいで、公爵家にいるより物事が早く進むらしい。
体調は問題ないとのことで、その後魔法師団長様が魔力の回復具合を確かめにいらした。
要するにルベール様を助けるため持ちうるすべての魔力を使って、結界内に生じた魔物全てを殲滅し結界も解いて魔力切れで倒れたらしい。その後丸三日眠っていたらしいが、すでに魔力は全回復と言われた。
お父様のほっとした顔を見て、とりあえず私もほっとした。
「お父様、ルベール魔法副師団長様はご無事なのですか。」
「ご無事だ。体調も回復されている。あの後から急にご多忙になりリリエルを見舞う時間がとれず、詫びにと一時間おきに花が届いている。子女のお茶会の後には会えるだろう。」
あ、そうなのね、それでお部屋がお花畑化しているのだわ。遠い目をしていたら、お父様が一言おっしゃった。
「これで、明日の王妃様主催の子女茶会に参加できるな。安堵した。」
え?病み上がりなんですけど、私三日も寝込んでたのですが、
お茶会行かなきゃいけないの?
「お父様、私、寝込んでいたので体調が、、、」
「心配ない、魔力が全回復しているということは体調も万全のはず。魔法師団長が太鼓判を押しているし、父から見ても万全の顔色だ。」
「い、いやいや、急には無理です。準備だって。」
「お嬢様。奥様のご采配で、準備は全て整っておりますわ、ほら。」
エバが指差す方を見たら、あの薄紫のふわふわが、完全なる美となって、部屋の隅のトルソーに飾られていた。
「リリエル、おまえの魔法についてだが、明日のお茶会が終わった後に、私も含めて魔法師団長から説明があるので、聞きたいことはその時に聞くと良い。」
「お父様から聞くだけではいけないのですか。」
そこで、人払いがされ、お父様と二人になった。
「リリエル、今から話す内容は他言してはならない。よいか。」
「わかりましたわ、お父様。」
「光魔法を持つ者は古来から聖女と呼ばれる。その中でも魔力量が格段に多い聖女は女神と言われ、女神だけはその存在を秘匿されてきたのだ。その歴史は知っているだろ。」
「はい、魔法の歴史で学びました。もしかして、私、光魔法を持っていたのですか。」
「おそらく、、なので、聖女の扱いについて、陛下や魔法師団長と色々話さねばならん。」
「なら、お茶会なしで、聖女の説明会だけでも良いのでは?」
「リリエル、公爵家令嬢として、義務は果たしなさい。」
どさくさに紛れてお茶会をパスできたら、と思ったけれど、即却下だった、お父様はやっぱり厳しい。
「、、、かしこまりました。」
でもちょっと待って、私が聖女?色々と盛りだくさんすぎない?。
人生リセットは回避できたけど、急に運命がごちゃ混ぜに回り始めたような気がする。
※ ※ ※
翌朝、お母様が公爵家の腕利きの侍女達を引き連れ王城の公爵家居住区に乗り込んでらした。お母様監修により、湯浴みから始まって、あれこれあれこれ、レベルの高い侍女達に磨きに磨き上げられ、私はベルプリの特別スチルでも見た事がないほど美しい令嬢に仕立てられ、お母様に引率され、王妃様の子女茶会に向かったのだった。
自分史上、こんなに綺麗な令嬢は見たことがないくらい、圧倒的な美少女に仕上がっていた。ちょっぴり嬉しかった。
読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。